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レモネード【小説】最終回

「で、マネージャーさん? 宮古島出身人気モデルさんはまだこないの?」
「もう予定より十五分すぎてるねー」
朝日楼にふたりの女性。るねと美里だ。時間をやたら気にしている。
「あ、もうタバコないや」
「ラッキーストライクね?」
「うん、ありがと美里」
 るねは写真家としてデビューし、自費出版本を出すために、大正ロマン残る朝日楼をまるまる借りて撮影するために、ある人物を待っているのだった。
「ったく青二才がよー」
「悪かったね青二才で」
 そこには背のすらっと伸び、顔立ちがよりはっきりした大人になったアシュレイが立っていた。
「~~あんたね」
「おれも感動的な再会を待ち望んでたけど、悪口言われたらなー」
「遅刻するあんたが悪いんでしょ!」
怒って立ちあがったるねは、縁石に足をかけて転びかけた。アシュレイが胸で受け止める。CKBの匂いがする。レモングラスの香りはしなかったが、潮の香りは消えていた。
「ただいま、るね」
「――おかえり、アシュレイ」
 だれにだってある故郷。沖縄の狭い離島に似つかわしくない、美しいひとは、青いガラス玉のような、――この島の海のような色をしていた。
 ラッキーストライクとレモネードを持って朝日楼へ美里が帰ってくるまで、ふたりは抱きしめ合っていた。ここにくるまでの時間を確かめるように。
 レモネードには、もうシロップは入っていなかった。

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