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ゲーム配信とゲームの盛り上がりについて改めて考えてみる

YoutubeやTwitchでのゲーム実況の視聴者数がそのゲームの盛り上がりを表している、という前提で話す人をちらほら見かけると少しモヤモヤするので、ちょっと整理。

ゲーム実況者がゲームを盛り上げる時代

最近、新しくゲームが発売される時、ゲーム実況者に案件として有償でゲームをプレイしているところを配信してもらう、という手法が多く見られます。ZETAの関さんが案件のやり取りの情報をうっかり漏らし、あるゲームを数時間配信する案件でX00万円という多額の報酬をもらっていることが明らかになり、話題になりました(夢があり素晴らしい)。
一部のブランド力があるタイトルの続編(ex.ポケモン)などの例外を除き、新しくゲームを発売する時に、プロモーションとしてゲーム実況者にプレイしてもらうことはもう一般的なのかと思います。

ゲーム実況者が配信したら、そのゲームは売れるのか(TheModelを活用して考えてみる)

ゲームの運営会社が求めているものは何か。それは売上です。
分解していくと、購入者、プレイヤー人口(新規/継続/離脱)、課金額などとKPI目標が定められていると思います。
「ゲーム実況者による配信」はどういう役割があるのでしょうか。
企業の業務プロセスを表現するものとしては色々ありますが、最近私がSaaS企業に転職したこともあり、SaaS企業のバイブルとなるThe Modelを例えとして出してみます。
SasS企業は、買ってもらう、は始まりにすぎず、継続利用してもらうことで売上を上げていく、というビジネスモデルになっています(Netflixをイメージすると分かりやすいかもです)。

(写真:ITmedia NEWS)
  • マーケティング・・・見込み顧客(リード)の獲得

  • インサイドセールス・・・リードの購買意欲をさらに高めて、営業にパス

  • 営業・・・顧客と商談をして契約を獲得

  • カスタマーサクセス・・・既存顧客のサービス利用サポート、アップセルおよびクロスセルを促す

「ゲーム実況者による配信」はマーケティング手法の一つに過ぎないです。テレビCMを流すこと、Web広告を出稿すること、オフライン広告を設置すること、メールやSNSで顧客に一斉にお知らせすること、サンプル提供(β版)して口コミを広げるなどなど、様々なマーケティング方法はあり、そのうちの一つがゲーム実況者による配信という位置づけになると思います。
最近は無料のゲームも増え、ハード(PC、PS4、Switchなど)さえ手元にあれば、受注(ゲームを始める)のハードルは下がっていると言えますが、無料のゲームはSaaSのビジネスモデルと同じで、継続利用し続けることで売上(課金)を上げていきます

SaaSの売上の考え方では、
①新規獲得を増やすこと
②利用者にたくさん利用してもらうこと
③解約率を下げること
の大きく3つに分けて考えます。
「ゲーム実況者による配信」は①の要素が大きい、と思います。
っというのもあるゲームをやっている人がそのゲームをやらなくなる理由を考えると分かると思います。
あるゲームをやらなくなる理由は、
①環境の変化(進学、就職、転勤、バイト、勉強、同棲、出産など)によってそもそもゲームができなくなる
②そのゲームに飽きた。より面白いゲームが他に出てきた
③一緒にゲームする友達が他のゲームを一緒にやろうと言ってきた
などなどが分かりやすい理由かと思います。
特定の配信者の熱狂的なファンで、その配信者がやらなくなったらやらなくなる人もいるかと思いますが、プレイヤーあたりの配信が好きな人の割合や上記の理由と比べたら圧倒的に少数派です。
つまり、「ゲーム実況者による配信」はあるゲームを始めるきっかけになることに対しては一定の効果があるかもしれないけれど、そのゲームを続けるかどうかは「自分自身がそのゲームを面白いと思えるか」が一番重要です。
上記のプロセスを見て分かる通り、マーケティング活動で集客される顧客の中には質の悪いリードも含まれます。新規でサービスを立ち上げた時にアフィリエイトのようにお金を配り集客したら、サービスを継続利用しない顧客が増える(ゴミ客が増える)ことはよくある話です。
ゲーム実況者による案件による配信は日々行われていると思いますが、そこからヒットしたゲームはどのくらいあったでしょうか。面白くないゲームは流行らない、当たり前だけど悲しい現実だと思います(他人事ではないので私も日々プロダクトの価値をいかに上げるか苦心しています😢)。
この記事は「ゲーム配信とゲームの盛り上がり」をテーマにしているので、プレイヤーのアクティブ数に関する話は別記事にしようと思っています。

ちょっとだけApexの話を・・・

Apexはリリース時にUUUMの配信者や元DTNの方々を中心に配信が行われ、その後VtuberがこぞってApexを配信したり、CRカップなどのコミュニティ大会で配信者が好んでプレイしていました。しかし、リリースから3年が経ち昔からやっていた人が飽きてないというのは無理がある状況で、有名配信者の人たちはApexをあまりやらずに、コミュニティ大会の前だけプレイする、というイメージかと思います。
「有名配信者がプレイしていないから、オワコンだ」は論理が飛躍していて「プレイヤーのアクティブ数は過去よりも大きく減っているから、オワコンだ」が正しい論理かと思います(アクティブ数が減っているかはSteamChartActivePlayerで確かめると良いと思います)。

よく比較されるApexとValorantの視聴時間に関する情報を抜粋してみます。

配信技研より作成

ここから読み取れるのは、
ApexはValorantと比較すると「配信の平均同時接続数が少ないけど、総配信時間(人数×時間)が長いため、視聴時間が多い」ことが分かります。
2022/1および2022/5の平均同時接続数がApexとValorantが近しい値になっているのは、その月にCRカップがあり人気配信者がApexの配信をしたから、ということも上記の見解を裏付けています。
Apexは有名配信者がこぞって配信するコンテンツではとっくにない、のです。しかし零細配信者がプレイし続けるコンテンツにはなっています(それは一般プレイヤーに近い人が配信しているとも言えます)。

SteamChartより作成

SteamChartを見てみると有名配信者がプレイしていないにも関わらず、3年目にして2年目よりもプレイヤー数が多いとデータから読み取れます。
この記事は「ゲーム配信とゲームの盛り上がり」をテーマにしているので、プレイヤーのアクティブ数に関する話は別記事にしようと思っています。

有名配信者には影響力があります。しかしその影響力は限定的です。
知名度が低いけれど面白いゲームを配信を見ている人に伝えることができます。気になっていたけれどやるか迷っている面白そうなゲームをプレイする背中を押してくれるかもしれません。
しかし、つまらないゲームを面白くさせる力はない(面白く伝えることと、プレイしてて面白いかは別)ですし、発売からある程度の時間が経過して認知されているゲームをやるかどうか、面白いかどうかは、自分自身が感じて判断しているものかと思います。

余談:視聴時間の罠

配信技研のランキングデータをざーっと見てたら、
2021年1月にイナズマイレブンというゲームがランキング10位に入っています。
視聴時間:117,016,050分
総配信時間:21時間
平均同時接続数:92,870人

1人の配信者が月にたった21時間このゲームを配信しただけで
このゲームを月間10位の視聴時間にランクインさせました。
有名配信者の圧倒的な底力!加藤純一最強!ですね。

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