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【小説】

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僕の姉ちゃんが死んだ。 じいちゃんと僕、そして姉ちゃんとの笑って泣いた愛しい時間。 だけど、きっと僕はここに立ち止まってもいられないだろう。 祖父を介護してたときに書いた物語。…
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小説「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」7

小説「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」7

【あらすじ】両親が死んでから、姉ちゃんと僕はじいちゃんと暮らすことになった。姉ちゃんは料理を覚えて懐かしい母さんの味の料理を作ってくれた。そんな姉ちゃんの病気が発覚、死んでしまう。姉ちゃんの闘病と、そして僕の「夏のいま」が交差する物語――

 夏休みが終わり、それでも蝉の声は小さくならない。僕は汗を流しながら高校までの山の坂を上っていく。休み明け、久しぶりに会う友人たちと声を交わし、空を見上げ、ま

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小説「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」 8

小説「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」 8

【あらすじ】両親が死んでから、姉ちゃんと僕はじいちゃんと暮らすことになった。姉ちゃんは料理を覚えて懐かしい母さんの味の料理を作ってくれた。そんな姉ちゃんの病気が発覚、死んでしまう。姉ちゃんの闘病と、そして僕の「夏のいま」が交差する物語――ゆうやとじいちゃんの会話、続いています。

「じいちゃん、ほんとに一人になっても大丈夫か?」

「なに言うか。大丈夫じゃ」

「一人で飯食える?」

「当たり前じ

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小説「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」9

小説「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」9

【前回までのあらすじ】21歳で死んだ姉ちゃん。姉ちゃんには好きな男はいたんだろうか。僕はもうためらわなくても女の子とキスができる。姉ちゃんはだれかの腕に抱かれたことがあったんだろうか。

 僕は姉ちゃんが高熱を出して病室でうなされているとき、じいちゃんの目を盗んで、姉ちゃんの部屋に入った。どうすることもできないほど、確かめたかったのだ。

 僕は姉ちゃんの机の引き出しや、そこにある姉ちゃん宛ての手

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小説 「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」 最終回

小説 「姉ちゃんと僕と、僕らのじいちゃん」 最終回

【前回までのあらすじ】すこしずつ、姉ちゃんのいない夏に慣れていく僕は、大学進学をようやく決意した。夕暮れの風を受けて、夏の終わりを知る。

「今日はあさりの味噌汁と太刀魚じゃ。初物じゃからの、元気が出るぞ。ゆうや、ビール飲むか」

 帰ってきた僕を玄関まで迎えに出てくれたじいちゃんは元気な声でそう言った。

「太刀魚にビールはうまいぞ。お前もたまには飲め」

 じいちゃんと僕は食卓を囲んできんと冷

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