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「おっさんずラブ」は私の心のばんそうこう


スケジュール帳を開く。
「こんな夢を見た」
「朝、ヨガができなかった」
「今日も昼ごはんが食べられない」
「いきなり泣き出してしまう」
自分のその日の気持ちや行動をメモして、「ウツ」と記録する。

私には「ソウ」の日と「ウツ」の日がある。

私のこころの病気


東京にいたころ、東京の主治医に
「可能性があるね」
大阪に戻って、先週、大阪の主治医に
「そう認識してます」

つまり、診断を受けていたのに、私は見ないようにしていたのだろう。
双極性障害、昔は躁鬱病と呼ばれていたものだ。
双極性障害Ⅱ型。
ADHDで苦しんだことによって、二次障害として患ってしまったようだ。たぶん一生お付き合いしていく病気である。

躁状態の時、私はよくしゃべって、よく笑って、よく動く。
Ⅰ型の人は、爆買いしたり、まったく眠らなかったりするそうなのだが、そんなことはない。
双極性障害Ⅱ型の波は小さい。
「社交的な人」でおさまる範囲で、私は躁状態の自分が好きだ。

アゲアゲ~♪の直後、沈没

思えば昔から、楽しくて嬉しくて、テンションの高い次の日、私は心が重くなってよく泣いた。
楽しすぎたからそうなるんだろう。
みんなそうだろう。
そう思って聞いてみたけれども、みんな「楽しいことがあった次の日は普通だよ」と言う。

普通?
みんなこんな心が重くて辛い状態が「普通」なんや。
それを苦しいと考える自分が、非常にわがままな気がしていた。

そんなこんなで10代のころから過ごして、ようやくテンションの高い日の翌日を怖がる人は珍しいと知った。

心アゲアゲ~♪
からの、沈没。

沈没中なのに社交的なふりをして、息もからがらなのに社会生活を営んでいる私の人生は、映画化できるほど感動的だった。

ウツによる退職も、離婚も、精神科病棟入院も、ADHDの診断も。
未成年のころを含めれば。
小学生時代、特定の状況でしか話せない場面緘黙症になったことも、
それが原因でいじめに遭ったことも、
中学生時代、不登校になったことも。
あ、あと小学生時代に誘拐未遂事件の被害者になったことも含めておこう。病気とは絶対関係ないけど。

「ADHD」とそれに伴いやってきた「双極性障害Ⅱ型」とやらが原因だったことも、少なからずあるだろう。

自分が自分ではないような感覚

診断を受けてほっとしたものの、躁状態が終わってからのウツは、相変わらず沈没状態だった。
仕事をして気を紛らわせることができるうちはまだいい。
ふと気を抜くと希死念慮がひょいと顔を出すのだが、「4ぬのが怖い」という気持ちから泣いて追いやる。
お風呂に入るのがきつくなってくる。
ちょっとしたことで家族とケンカして、またもや泣いてしまう。

だれだこれ?
私じゃないよね?

…という状態が続くのだ。
よく社会人になるまで生き抜いてきたなあと思う。
というか、「私なら今ごろ4んでるわ」「よくぞ生きてきたね」と友人数人に称賛された。まったく嬉しくないんですが。

文筆業でようやくネタにできたものの……

そんなこんなで、ライター兼エッセイストと名乗れるようになった今、ようやく双極性障害Ⅱ型のこともネタにできるようになった。
やってて良かった文筆業。
……と、ここで終われたら良かったのだが。

ウツ、ウツ、ウツ。
書き連ねて5日目、「いつソウになるんだよ……」と私は倒れていた。
主治医から「冬季うつもありますからね」と言われて、冬を心底憎んだ。
私が主役の感動映画を作る場合は、ぜひ冬と私が対決するシーンを作ってほしい。

「おっさんずラブ」が起こした奇跡(時間ない人はここから読んでね☆)

今日は土曜日。
月曜日にクリニックに行こう。そう決めて、食欲のわかないままテレビの前に座り、昨夜撮っていた「おっさんずラブ」を視聴した。

そして私は。
気が付けば笑っていた。

「おっさんずラブ」のあらすじ 若林目線

不動産会社に勤務する、主人公の春田さん(田中圭さん)。
もともとは異性愛者だったが、2018年の連ドラで真実の愛に目覚め、後輩の牧(林遣都さん)と結ばれた。
ヒロインは、春田さんの会社の部長である黒澤武蔵(吉田鋼太郎さん)さん。
2018年の連ドラでは春田さんに恋をして長年連れ添った妻と離婚、「はるたん♡」と乙女チックに春田を想うが、春田が牧を愛していると知り、身を引いた。

そして相思相愛になった春田と牧。
最終回で春田は香港に赴任して、遠距離恋愛をほのめかす終わり方だった。

翌年の「劇場版 おっさんずラブ」はラブシーン……よりもアクションシーンの多い映画で、黒澤部長が記憶喪失になり「はるぽん♡」と再び春田に恋をするというヒロイン復活劇はあったものの、終盤はなぜかはるぽん……いや、春田が拉致され、なぜか拉致された倉庫が爆発して春田が火に包まれ、その中に黒澤部長と牧が飛び込み、火の中で最終的に春田と牧がふたりきりになり、より深い愛を誓……ったはずが、今度は牧にシンガポール赴任の打診があり、愛を誓いあう指輪をはめた二人は相手に背を向けて、自分の夢を叶えるため離れた。(距離的に)

これでファイナル。

いや、なんで!?
あの炎の中でずっと一緒にいようって言ったやん!
ビターエンドやん!!!

悲しかったので2018年の連ドラで牧がつけていた牧エプロンと、牧がいつも持っていたエルエルビーンのバッグを買って、その後のふたりに思いを馳せた。
心と体の距離はね……ずっと近くにいないとだめなんだよ。
と言いつつ私も、夫が牧と同じシンガポール赴任をしたので超遠距離恋愛になった。

本編から5年後、「おっさんずラブーリターンズー」爆誕

あの日、映画館でガチでむせび泣いた私。
5年後、『おっさんずラブーリターンズー』放送決定のニュースに目をむいた。

2024年、1月。

牧(31)はようやくシンガポールから帰ってきて、春田(39)と同居、結婚生活(!?)を始める。
そこに家政夫として現れたのが黒澤武蔵(61)。
武蔵は春田の幸せを願い、不動産会社を早期退職していて家事代行会社でも部長になった。
「部長、こっちでも部長なんすかー!!」
私と第1話の春田の声が重なり合う。

そして新キャラも登場。
中途採用で春田の年上の部下になった和泉(45/井浦新さん)と、おかかおにぎり限定の「おむすびころりん」店主の菊之助(愛称は菊様。38/三浦翔平さん)である。最初は「え~新キャラ~?」と思ったのもつかの間、2018年からおっさんずラブを愛しぬいた古株&リターンズからの御新規様の多くは、今や和泉と菊様にメロメロである。

その後、紆余曲折を経て、和泉は元公安、菊様は現役の公安で、和泉は公安時代にバディを組んでいた春田と見た目がそっくりの秋斗(田中圭さん二役)が自分をかばって死んだ過去を持ち、今も秋斗の写真の入ったハートのペンダントを首にかけている。
そしてこの二人はなぜか春田と牧の隣に住んでいる。

……情報過多である。

とにかく先週のリターンズ4話まででわかったのは、

春田&牧→なんだかんだ結婚生活を充実させてる。
武蔵→家政夫で春田のお父さん的存在になっているが絶対まだ春田が好き。
和泉→秋斗の面影を春田に投影している。
菊様→実はずっと和泉が好き。

ということである。
他にも2018年から出ていた春田の上司で牧の元カレの武川さん(50/眞島秀和さん)が恋愛迷子になっていたり、春田の幼なじみのちず(33/内田理央さん)がシングルマザーとして頑張ってたり……

……情報過多である。

「おっさんずラブ」は私を救う

ともあれ、そんなこんなで私は第5話、春田と牧(なぜか武蔵も行くヨ☆)の新婚旅行回を見たのである。

説明に時間を割いたせいで自分がウツであることを忘れそうになっていたが、私は朝の鬱々とした気分で泣きそうになりながら録画した第5話を見始めた。

そして。
気が付けば。
笑っていた。

自分がウツ期の真っただ中にいることを忘れていたのだ。

どんな内容だったのかというと、
春田&牧(&武蔵☆)の新婚旅行in熱海で偶然和泉&菊様に会い、おっさんずラブらしいワチャワチャが始まるというものである。

……詳しく説明しよう。
まず、和泉。
序盤、熱海旅行に来たばかりの時は
「おれが好きなのは秋斗だけだ……」と言っていたのだが、
旅行を終えて家に戻ると
「おれは春田さんが好きだ……」
と打ち明ける。
しかも和泉に桃色の片思いをしている菊様に対して。

ちなみに熱海での春田&和泉の関わりは、春田を巡るふたり(武蔵と牧)が大喧嘩しているのを目にしながら、なぜか「ふたりを止めて~!」と言っているマドンナ春田を間違えてねじ伏せただけである。

私は自分ではなく菊様を想い涙を流した

そして前回に続き第5話でも「可哀想オブザウィークリー」に選ばれてしまったのは菊様である。
熱海旅行序盤の和泉「おれが好きなのは秋斗だけ」→Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
熱海旅行終えてからの和泉「春田さんが好きだ」→Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
と、菊様、振り回されっぱなしである。

もちろん演じる三浦翔平さんはΣ( ̄ロ ̄lll)ガーンなんて顔はせず、美しく切ない表情に私を含む視聴者は涙涙である。

しかも切ない表情でこんなことを言う。

「(和泉といっしょに暮らす)家を出ようと思うんです」
宴会で酔っぱらいながら「(和泉に)好きになってもらえるわけないのに泣」

Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン←ワイ

ちなみに罪な男・春田は「菊様って和泉さんのこと好きなんすか!」と言って驚くが、武蔵は父親のように菊様を抱きしめ、

あれ?武蔵と菊様が恋人になるエンドありえるのでは?

とフラグを立てた。

気づけばXに書いていた長文ポスト


酔っ払い菊様、公安らしさ発揮する菊様、警察学校時代を回想する菊様と、私は第5話は新婚旅行に見せかけた菊様回だったと思う。

ほかにも牧が結婚指輪をなくしたり、それを慰めていた春田が急にエロモードになったり、恋愛迷子の武川さんがなぜか熱海にいるのに誰とも絡まなかったり、武蔵VS牧という大人気☆おっさんずラブバトルシーンに和泉&菊様が妙な参入の仕方をしたりと盛りだくさんの内容だった。

そして、気づけば私の涙は乾いていた。


という1いいねのポストをしたのはつい先ほどのこと。

前にもこんなことがあった。
私は「おっさんずラブ」を見ると、自分のウツ状態が一瞬でも消えるようなのだ。
本を読んでも何をしてもダメなのに、「おっさんずラブ」だけは心を明るくしてくれるのだ。

視聴2時間後、私は再びウツを仕事で紛らわせていたが、心には余韻が残っている。

「おっさんずラブ」と出会えて良かった

「おっさんずラブ」は、人の心を、命を救うパワーのあるドラマだ。
愛し続けたい。そしてこの持病を少しでも和らげたい。
そう思いながら、今から視聴2周目をするつもりだ。

……ところで。
来週、春田&牧の結婚式なん!?
え!?
ということは最終回とその前のエピソードにはもっと凄いのが来るの!?
待って心の準備が……!

とことん私の心に揺さぶりをかけるドラマである。



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