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わかおの日記166

最近本当にお金がない。異常な時給だった原稿のアルバイトで稼いだお金もそろそろ底をつきそうになっている。

なぜこんなにお金がないかといえば、彼女につぎ込んでいるからだ。いや、彼女につぎ込んでいるという言い方はあまりにも自分をきっぷ良く見せようとしすぎている。デートもいつも割り勘で、彼女に多く払わせるようなこともしばしばなのだから。情けない男だ。「つぎ込んでいる」なんて言っていいのは、彼女に財布を出させない男だけだろう。

要は彼女に会いすぎて金がないのだ。

なんで普通の大学生があんなにバイトをしているか分かった。充実した生活を過ごすには金が要るのだ。ようやくそのことに気がついたときには大学2年生が終わろうとしていた。

昨日も夜まで会っていて、今日も彼女が家に来る予定だったのだが、お互い風呂に入るのが面倒くさく、今日のデートはお流れになりかけた。しかし土壇場でぼくが、「お風呂に入るのが面倒くさいなら、2人でスーパー銭湯に行けばいい」という解決策を思いつき、急遽おふろの王様花小金井店に行くことになった。

いつも彼女と会う時にはそれなりのお洒落をしていくのだが、おふろの王様に行くのに気合いを入れても仕方がないと思い、近所のラーメン屋に行くのと同じ服装で行った。彼女は化粧こそしていなかったが、それなりにきちんとした服装をしていたので、なんだか申し訳なくなった。

ぼくはサウナが好きで、行ける機会があるのならばいつでも行きたいのだが、前に付き合っていた人は「一緒にいられないから」という理由で、ぼくと温浴施設に行くのを嫌がった。高校生同士そう週に何度もデートに行ける訳もなく、その言い分も理解できたのだが、やはりぼくは好きな人とスーパー銭湯に行きたかった。

あれから数年、今ぼくのとなりでは湯上りの彼女が玉こんにゃくみたいなほっぺたをつやつやさせてロイヤルミルクティーを飲んでいた。なんて尊いことなんだろうか。「これからもどうせ一緒にいられる」という信頼があるから、ぼくたちは男湯と女湯に分かれて入浴することができるのだろう。付き合って1ヶ月にも満たないのに、もうそんな関係になっていることがたまらなく嬉しかった。

そして金のないぼくたちは、駅前の「ぎょうざの満洲」で定食を食べた。小さいくせに食の太い彼女は、ホイコーローに餃子をつけた定食をモリモリ食べていた。ぼくは彼女が飯を食うのを見ているだけで幸せな気持ちになるのだが、それに加え今回は場所が昔から通っている「ぎょうざの満洲」だったこともあり、自分の日常のなかに彼女が入り込んできた感じがして、思わず涙ぐんでしまった。

それからぼくたちがしたことは、全て金のかからないことで(彼女は定食を平らげたあと、喫茶店でパンケーキを2枚頼んでいて感心した。一方ぼくは金がないので、なんだかよく分からないまま1番安いエスプレッソのコーヒーを頼み、その量の少なさに騙された気になった)、それでも本当に楽しんでくれる彼女のことがありがたく、愛おしくてたまらなかった。

自然とぼくのなかに、金を稼ぎたい、このひとにいい思いをさせてやりたいと言う気持ちが湧き上がってきているのだが、この気持ちがもしかしたら愛なのかもしれない。有識者の見解を聞きたい。

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