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【SS】ノーパン早歩き競走

※前アカウントに載せていた作品の再編/再掲です

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「大野ー!!頑張れー!!あと少しだ!!!」
沿道に応援の声が響き渡る。

時は2021年、東京オリンピックで日本中が大賑わいしている。
中でも、陸上競技の選手たちは、過去最高に出来がいいと評され、メディアからも世間からも期待されている。

大野隆道(おおのたかみち)、彼もその中の一人だ。

中学から陸上を始めた彼は、何をやっても上手くいかず、種目を転々とした。
走ってもダメ、跳んでもダメ、投げてもダメ。


『陸上で有名になりたい

一度志したこの夢に向かって、高校まで懸命に陸上を続けたが、どう頑張っても結果が出ず、大学進学を機に諦めようと決心した。

そんなときだった。
ふと覗いたネットニュースにこんな記事が載っていた。
【“ノーパン早歩き競走” 陸上競技新種目として東京五輪より正式採用!!】
記事を読んだ彼は、この競技なら世界を目指せると確信し、大学でも陸上競技を続けることに決めた。

そこから、彼のノーパン早歩き特訓が始まった。
「この競技のポイントは、いかにノーパンを感じさせない自然な歩きができるかだ。それができたら自然とスピードも上がってくる」
そう言って彼を指導するのは、元競歩日本代表、大野康(おおのやすし)。
そう、隆道の父親である。

そんな父親の指導のもと、彼は才能を開花させ、今、東京オリンピック陸上競技ノーパン早歩き競走の決勝の舞台に立っている。

彼は初めてのオリンピックで善戦し、3位でレース終盤を迎えた。
上位2人はペースが落ちている。このペースでいけば優勝も狙える位置だ。

「今日は歩いていても全くノーパンを感じない。まるで履いているかのような歩きが出来ている。このままペースを上げて優勝するぞ…!」

しかし、ゴールまであと1kmを切ったあたりで彼は異変を感じる。
「いくら調子が良いとはいえ、本当にパンツを履いている感覚だな。
 ………えっ!もしかして………」

怖くなって彼は自分のズボンの中を確認した。


「履いている…………」


彼はレース前にパンツを脱ぎ忘れたのだ。
ノーパン早歩き競走でパンツを履いて出場してしまった彼は当然失格。
この様子は世界中に生中継され、彼の夢は見事叶ったのだ。

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大学時代に書いたショートショートです。
ショートショートって何か定義ありましたっけ…?
間違ってたらごめんなさい。

就活生時代、僕が受けていた業界的な特徴なのか、エントリーシートに面白い課題を与えてくる企業がいくつかありました。
その中の某映像制作会社のエントリー課題で、ショートショートを1本書いて提出しなさいというものがあり、当時書いたものだったと思います。

これを提出して、通ったか落ちたかは正直覚えてません。
まぁ、最終面接までいった企業は覚えているので、この企業の採用はどこかのタイミングで落ちたのでしょう。

ただ個人的に気に入っている作品なので、改めてこのアカウントにアップして皆に見てもらいつつ、保存しておくみたいな意味も込めてます。

noteではジャンルに縛られずに色々書いてみようと思うので、良かったら引き続きチェックしていただけると嬉しいです。

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