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感想&雑感:『欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング 』嶋 浩一郎 , 松井 剛 (著)

 どうも!おはようございますからこんばんわ!まで。

 今回はこの本の感想を書いていきたいと思います。 

1.社会記号って何?

 本書のタイトルでもある社会記号について、冒頭で次のように定義されています。

生まれたときには辞書に載っていないのに、社会的に広く知られるようになり、テレビや雑誌でも普通に使われ、見聞きするようになることば

 一般的には「流行語」という言葉で表現できる言葉ですが、著者の嶋氏がかつて所属していた博報堂では「社会記号」という言葉で表現されていたとのことです。振り返ってみると女子力やコギャル,第3のビールみたいに、当該コンテンツを売る上での大枠としてや人々の欲望と紐づけられる形でマーケットを開拓していこうとしていく際に、こういう言葉は確かに存在していたなと思いました。また、人々の社会構造の変化の予兆として登場し定着したりしなかったりするのも社会記号としての特徴にはあるそうです。

2.社会記号が持つ役割と現代社会における課題

 社会記号には8つの機能と4つの類型に分けられると本書第3章にて指摘されています。

機能:自己確認,同化,寛容,拒絶,規範,課題,報道,市場

類型:呼称,行為,脅威,カテゴリー

 例えばコギャルの特徴として茶髪にルーズソックスというスタイルが有名だと思いますが、コギャルの対極にある文化に触れてる人にとっては馴染みは無いと思う一方で、コギャルの特徴がコギャルという社会記号を規範の点即ちコギャルと言えば茶髪にルーズソックスっしょ!という形で機能していきました。また例えばクールビズという言葉が世間に広まった背景として、従来のジャケット&ネクタイのスタイルは夏の時期には暑いだろうという常識を変える形で軽装でも良いだろう!という行為が始まり、それがいつしかクルービスファッションとして新たな相場観(規範)として構築され今に至っています。

 こうして見ると、社会記号を上手く使いこなすことができれば世の中を思い通りに動かす(コミュニケーションの理論で「皮下注射モデル」という理論があり、メッセージの送りての意図通りに受け手が受け取ってくれることだそうです)ことができると思う一方で、現代における情報は送り手側から受け手側へ送るという一方通行なコミュニケーションだけでなく、SNSに代表されるように多くの情報を多くの人達でやり取りをするスタイルが主流なため、送り手側の意図通りに受け手側がメッセージを受け取ってくれるとは限らないからです。

3.人が社会記号を求めるのはなぜ?

 前述しました社会記号の類型は、それぞれ次の社会的要請と関係性があると本書第5章で指摘されています。

類型:呼称↔ラベリング,行為↔動機のボキャブラリー,脅威↔スティグマ,カテゴリー↔スキーマ

 例えば「婚活」という言葉はいまでこそ社会に馴染む社会記号となりましたが、当初はマッチングアプリ等のサービスを活用して結婚相手を探すという行為には後ろめたさがありました。しかし「就活」という言葉をアレンジして「婚活」という言葉を生み出すことで、就職先を探す活動としての就活のように結婚相手を探す活動として婚活が存在できるようになりました。この動機のボキャブラリーは、社会学者のミルズが1940年に記した論文において提起された分析視点で、「なぜそれ(例:婚活)をしたいのか」「なぜそんなこと(例:婚活)をしたのか」を説明するためのことばで他人とのコミュニケーションに使う事ができます。

 この他にも呼称↔ラベリングにはラベリングをして思考を節約したいという要請が、脅威↔スティグマには何がスティグマでスティグマ管理のための手段はなんなのか?を考えるという要請が、カテゴリー↔スキーマには無数にあるモノ・サービスを整理整頓するためのスキーマが欲しいという要請がそれぞれ結びついています。だから、新しい言葉が社会記号として発展するか否かに関係なく続々出てくるんだなと思いました。

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