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感想&雑感:『人事の企み ~したたかに経営を動かすための作戦集~』海老原 嗣生 (著)

 どうも!おはようございますからこんばんわ!まで。

 今回はこの本の感想&雑感を書いてみたいと思います。凄いですよ!この本。

1.本書の位置づけ&感想の概要

 『人事の成り立ち』(歴史),『人事の組み立て』(理論),『人事の企み』(実践)の海老原人事3部作の最後の本だと、著者の海老原氏は位置づけていて、私は『人事の成り立ち』と『人事の組み立て』を読んでいた上で、『人事の企み』を読みました。(『人事の組み立て』については過去にnoteで感想を書きましたので、よろしければ合わせてご一読いただけますと幸いです(笑))

 本書の章立ては次の通りです。

・経営環境篇

・社風と人材篇

・採用篇

・組織設計と育成篇

 私自身は海老原氏の著書は長らく色々読んでいるので、改めて読むとおぉ~と思っていたり忘れていた部分もあったので改めて勉強になりました。だけど、初見でこの本を読んだら目から鱗がポロポロ落ちるんじゃないかな?と思うほど、やっぱりすげぇなと思いました。次から、いくつかピックアップしていきます。

2.採用は無手勝流

 goo辞書で無手勝流を検索すると次のように書いてありました。

戦わないで策略を用いて勝つこと。自分であみだした流儀によること。転じて、自分勝手にやること。自己流。

 海老原氏は本書内で「他社と同じことをしては勝てない」「お客様の喜ぶことをしては勝てない」というビジネスの普遍的な鉄則が、採用が上手くいっている会社の特徴だと指摘しています。例えば、一例として海老原氏もOBであるリクルートは「リクルート事件」や買収,借金苦を経ても尚且つ東大・京大といった層の大学から採用できた理由として、「ニッチ層」を狙うというアプローチです。1980年代の日本型雇用全盛期における優秀層の大学生は、往々にして安定を望む傾向にある中で、脱日本型・実力主義を標榜するリクルートをキラキラした目で見る一部のひねくれた層を狙ってアプローチをすることで、東大・京大といった層の大学から採用することができたそうです。そしてこれは「リクルート事件」を契機に個人情報の取り扱いが難しくなった中で、管理職を駆り出してリクルートが「模擬面談(面接)」サービスをやりますよと大学の就職課に触れこんで、大学側も採用事情を知っているリクルートの管理職が学生を鍛えてくれるならという事で模擬面談を行い、めぼしい学生にはいつでも相談に乗るよとメールアドレスを教えていたとの事です。

 これ1つ見ても普通なら思いつかないようなアプローチ手法ですが、本書では採用手法の当たり前をベースにした多様な事例が載っています。例えば、大手企業ほどの応募者がこない中小企業で最終面接をハイキングに置き換えて候補者の人間性が分かるというやり方や事業説明を人生ゲーム風のすごろくにして無味乾燥な傾向になる事業説明を飽きさせないようにしたり、あるいは自社と取引のある会社さんの業界にフォーカスを当てた業界研究の手伝い的なセミナーや企業動向のインターンシップといった就活の伴走役に徹して自社のカラーを極力出さないという手法といったように、色んな事例が本書には書かれています。

 また中小企業層で有効な手として、ニッチ層の狙い方として会社の弱みにフォーカスを当てる事を本書内で海老原氏は指摘しています。例えば中国へ事業展開を考えている会社で社内に中国語を使える人が誰一人としていない会社で、片言ではあるけど中国語話せる学生(応募者)が応募してきたら会社の弱みと応募者の強みはパズルの如くハマります。もう一例で言いますと、若い年齢層の社員がいない・少ない会社があるとして若い年齢層のノリについていく事ができない性格の学生(応募者)が応募してきたら、会社の弱みと学生の特徴(強み?)はパズルの如くハマります。

 採用の部分に重きを置いてピックアップしてみましたが、これ以外にも人材補充のやり方として制度を構築したり会社を清算するのではなくM&Aをしたりする等、色んなアプローチ手法が本書には書いてあり、当該会社なりの予算ややり方の可能性があるんだなというのが無手勝流にはあるんだなと思いました。

3.成長の階段=儲けの階段

 銀行に例えるとまずは窓口を担当してその合間に簿記やFPといった多くの資格試験を取るように言われ、その後個人融資,中小の法人担当といったように、徐々に担当する仕事内容・役割が変化していきます。採用の過程でその会社を特徴するインパクトある仕事のイメージが強く残っている人にとっては、ステップを踏んでいくスタイルに辟易する人ももしかしたらいるかもしれません。しかし、この階段は儲けの階段だと海老原氏は指摘しています。そして、日本企業は往々にしてこの階段の構築が上手だったと海老原氏は指摘しています。その1つが目標の使い分けです。

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 上記画像は、本書にも登場するやりたいこと(will),できること(can),やらねばならないこと(やるべきこと・must)の相関図です。通称:will,can,mustと呼ばれる目標管理の手法です。本書内で海老原氏が重要視しているのは、やりたいこととやるべきことの交点となる挑戦目標です。当人としてやりたいこと・チャレンジしたいことに対してまだできない状況は前向きな成長を促すと言われています。このような目標の取り扱い方について、人事は社員当人の成長に必要な栄養(目標達成のために必要な要素)を決める「栄養士」の役割で上司はそれを上手く食べさせる「調理師」の役割が求められると述べています。

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