読書感想文「十角館の殺人」
皆さんは十角館の殺人を読んだことがあるだろうか?
もし無ければぜひ読んでほしい。おすすめの一冊である。
ジャンルは生粋のミステリー。
登場人物のあだ名にミステリーの名前が使われていたりと、ミステリー好きには堪らない内容だ。
基本的にネタバレ無しで感想を書いていくので、ネタバレに神経質な人以外は読んでいただいて大丈夫だ。
あらすじ
こちらはプロが書いたあらすじを引用した方がよいだろう。
講談社文庫の裏面に書いてあるあらすじから抜粋させてもらう。
あらすじにあるように、連続殺人の話だ。
しかも最初から曰く付きであることがわかっている孤島の中での出来事であり、ミステリーサークルものなのである。
個人的には最初から何が起きるのかわかっているのに、それをどうやって実施するのかわからない展開は好きなので、この設定はかなり痺れた。
トリックの感想
ネタバレはもちろんしないので安心してほしい。
タイトルにもあらすじにもあるように、殺人が行われることは既にわかっている。
これで殺人が起きなかったら大どんでん返し?期待はずれ?なのでネタバレになってしまうが、実際殺人は起きる。
何も知らずに読み進めたとしても、途中まで読めば誰かが死ぬ前から「あ、これは人が死ぬな。それもほぼ全員もしくは全員が死ぬんじゃないか」と雰囲気でわかる。
それくらいに死が近い作品と言っても良い。
ミステリーサークル内での連続殺人が起きるわけだが、トリックはほとんどわからなかった。
大まかにわかるものもあったが、詳細まではわからず、トリックが明かされた時はなるほどなとなった。
トリックだけでなく、トリックの前段階で誰が死ぬかを考えるのも楽しい。
この作品においては誰が死ぬのかもほとんど読めなかった。
それが一番良かった点とも言えるかもしれない。
不穏な空気が流れているのに誰が死ぬかわからないというのは、常にハラハラ感があって非常に良かった。
登場人物の感想
出てくる登場人物は、大きく分けて3グループいる。
過去の人たち、現在孤島の外にいる人たち、現在孤島の中にいる人たち、の3グループだ。
それらのグループの全ての人たちが不穏であった。
どの人も不穏な空気を出しているので、誰が犯人なのか読めない。
ひとたび疑い始めると全員が全員怪しく見えてくる。
全員が犯人の可能性を秘めているのではと感じさせるほどに、キャラクターに奥行きがあり、魅力的であった。
展開の感想
過去と現在のつながり、孤島の中と外のつながり、それぞれがチラつくのだが、全容がなかなか見えてこない。
どこがどう繋がっているのかわからないまま話は進んでいった。
この仕掛けによってまさしく物語に引き込まれた状態で読み進めることになった。
あらすじにもある通り、ミステリ研の中で殺人が起きる。
この時に、ミステリ研の中で2つの軸で考えが進む。
そもそも同じ研究会の中に犯人がいると考える軸と、孤島の中に研究会とは別に犯人がいると言う軸だ。
そのどちらにおいても、また誰かが死ぬかもしれない、自分が殺されるかもしれない、と言う恐怖と闘いながら推理しているのも非常に良かった。
総括
ミステリーの根幹をなすトリックの部分、そしてどんな小説でも重要な登場人物と話の展開、それぞれがとても魅力的で面白かった。
私は綾辻行人先生の作品を読んだことがなく、十角館の殺人が初めてだった。
これを期に他の作品も読みたいと思わせてくれる良作ミステリーだった。
また別作品を読んだ際はぜひ感想を書きたい。
若井俊頼