大阪府高槻市・円覚寺様施工してきました
大阪府高槻市の浄土真宗本願寺派円覚寺様で、漆塗工事を施工してきました。
内陣正面敷居を黒漆塗蝋色仕上げ、内陣床を赤摺漆仕上げ、黒色唄金具を金箔押しに変更するという内容で、今回は珍しい赤色の摺漆仕上げについてお話ししたいと思います。
円覚寺様の本堂は、200~300年ほど前の日蓮宗寺院の仏堂を、いつの頃か現在地に移築して浄土真宗寺院の本堂に改築した建造物で、歴代のご住職やご寺族、ご門徒様が大切に守ってこられました。
床板には、灯明油のシミや落とした物の傷が付いていたものの、”いい味”を感じる日焼けをしていて、歴史ある本堂にマッチしていました。しかし、先の大阪北部地震で内陣に設置していた具足や土香炉が落下し、一部”いい味”がなくなってムラになっていました。
ご住職曰く、「これまで本堂を守ってこられた人たちに申し訳ない…。」ということで、今回の施工に至りました。
「摺漆」は、採取した漆液からゴミや塵を取り去った「生漆」を、対象となる木材に何回も何回も含浸させながら塗り込んで光沢を出す技法で、木材の木目を活かしつつ、表面に保護塗膜を形成して木材を守る効果があります。
今回の施工が珍しいのはここからで、この生漆に弁柄という酸化鉄の顔料を混ぜて赤色に発色させます。弁柄は紅殻と書くこともあります。上手に塗ればきれいな赤色を発するのですが、相手は数百年を経過し、その間には落としキズや引っ掻きキズ、油シミがたくさんついた天然木。1枚1枚木目も違い、均一に着色するのはなかなか困難なことです。
ということで、テストピースを作成するために床板を研磨して日焼けやシミを取り除き、弁柄摺漆がきれいにできるか、実験!
………。板をまたぐと差異が出てしまいました。塗料を使用した「赤」「赤茶」「茶」も実験してみましたが、どれも同じようなばらつきが出てしまい、実験結果は芳しくありません。最終的には、ご住職と前坊守様の「どのようになっても、”味”って捉えるから大丈夫!」という声を掛けてもらい、
いざ、施工スタートです!
どんどん色が付き、光沢が出てきていることがわかるでしょうか?
そして完成!
私の心配をよそに、弁柄入摺漆は非常にきれいに、そしてむらなく塗り上がり、大変落ち着きのある床板になりました。
内陣正面敷居には、黒漆を塗り、鏡面仕上げとなる蝋色技法で仕上げ、黒色唄金具は金箔押しに変更しました。ちなみに、この唄金具の金箔は私が押したんですよ。
仏具も元通りに戻して、完了いたしました。
※一番最初のアイキャッチ画像は、円覚寺様の境内の池に咲いた水蓮があまりに綺麗だったので撮影しました。
工芸舎・F倉
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