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第29回読書会『新版國語元年』を読んで

第29回読書会、無事終了いたしました。
今回は6名の方が参加してくださいました。ありがとうございました。

前回まで青空文庫の短編小説を読んでいた読書会ですが、「夏は長編を読む」ということにしていまして、今回からは井上ひさし著『新版國語元年』を読んでいます。

というのも、今は亡き春原憲一郎氏が「日本語教師の必読本だよ」と言っていたからです。ならばぜひ読書会で読もうと思ったというわけです。

あらすじ

どんな本かというと、時は明治時代。東京の文部省に出仕する長州出身の南郷清之輔は南郷家の婿養子。妻と舅は薩摩の出で、奉公人や書生は日本全国から集まった者たちで、この南郷家では色々なお国言葉が使われている。

こちらのお屋敷ではいくつものお国訛りが通用しておりましてね、例えば、御隠居様と奥様は薩摩言葉、旦那様は長州言葉。奉公人では書生の広沢さんが名古屋言葉、車夫の弥平さんが南部遠野弁。

そんな南郷清之輔はこんなプロジェクトに関わることになる。

「学務局四等出仕南郷清之輔、全国統一話言葉制定取調ヲ命ス」

というわけで、南郷清之輔は日本全国の話し言葉と正面からぶつかり合うことになるのである。

読書会の感想

読書会では、まず、役割りを決めました。参加者のみなさんも、最初は手を挙げにくかったかもしれませんが、一人、また一人と、立候補してくださって、うれしかったです。

ちなみにわたしは、奥様である光、その父親である重左衛門と、後半に清之輔を担当しました。

薩摩弁はドラマでもよく聞いているし大丈夫と思っていたけれど、ところがどっこい。話すとなれば、本当に難しいなと思いました。何が難しいって拍の取り方です。皆さんのも聞いていると、文字を読んでいるだけじゃなくて、やはりそれらしく聞こえるかどうかというのは拍の取り方が一つのポイントになっているのだなあと感じました。

それから、長州弁というのは、わたし自身、あんまり聞いたことがありません。ドラマでも語尾や「そねな」「どねな」という言い回しを除いては、標準語に近いような気がします。そういうわけで、イントネーションはきっと関西弁になっていただろうなって思いました。

また、参加者の皆さんの朗読も最高でした。戯曲を読むって初めてでしたが、本当にいいものだなあと思いました。

その後の感想会でも、皆さんが楽しく話してくれているのでうれしかったです。言葉って食べ物や飲み物と同じくらい人間にとって大事なものなんだなということを感じました。

井上ひさしについて

そして、こんな戯曲を書いた井上ひさしもすごいと思います。というか、どんだけ話し言葉(方言)に詳しいのでしょうか。

これを残しておいてくれなかったら、わたしたちはかつて日本語がこんなに豊かだったことを知る由もないでしょう。

事実、わたしの地元の滋賀県でも、本当は滋賀の言葉があったけれども、もうなんか普通の関西弁になっているし、そのうち関西弁さえ、なくなってしまうかもしれません。

むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに

井上ひさしがそう言っているように、あくまで愉快にこの戯曲を読んでいきたいとおもいます。

では、次回もよろしくお願いいたします。

7月17日土曜日 JST19時から
『新版國語元年』
3 会津の虎三郎が押し入った夜 からです。


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