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[感想]オルダスハクスリー「素晴らしい新世界」
ここ100年間のディストピア作品の原点にしておそらくは頂点でもある。
1世紀近く前の1932年に描かれた不穏な未来はますます現実味を増してきました。
読み終わると「こんな世界は嫌だ、だけど何が悪いかはわからない...」といった風に頭を抱えることに。
そんな気分の悪くなる読後感にあえて浸ってみるのも面白いかもしれませんね。
SFなのか、それとも予言書なのか
辛い戦争を乗り越えて、世界平和を成し遂げた世界。
争いはなく老いることもない、最大多数の最大幸福を実現した世界は一見すると非現実的で、フィクションだと思えますね。
ところが現実に目を向けるとハクスリーの世界に近づきつつある気もするんです。
ここ100年で大きく伸びた健康寿命や逆に下がった乳幼児死亡率。
未だ戦争は無くならないものの、暴力による死傷者はかなり少なくなりました。
現代の流れが発展した先には「すばらしい新世界」が待っているかもしれないです。
現実がフィクションに追いつくまで残り時間はどれくらいですかね、100年くらいの猶予はあるんでしょうか。
「ソーマ」はダメなのか
作中に出てくるドラックであるソーマ。
副作用は一切なく、わずか数グラム服用するだけで「至上の幸福」を得ることができる。
こう聞くと「でも薬は...」という考え方をしたくなりますが、ソーマがダメならファストフードはどうなんでしょうか。
ファストフードは美味しいですが添加物はたくさん使用されており、健康被害もあると思います。
それに比べてソーマに副作用はないんです。
格差は良くないのか
作中の世界では格差が人為的に作られています。
平等を目指す現代を生きる私たちにとっては受け入れ難く感じるますが、この小説を読んでいると戸惑ってしまいますね。
格差があったとしても「全員がその地位に納得している」なら何も問題ないのかもしれない、と。
現代の私達は生きる上で必要なことを全てこなすことはできないはず。
外科手術はもちろんスーパーがなければ食べ物を手に入れることが難しい人もいるでしょうね。
どうあっても分業が必要な以上ある程度の格差は必要なんでしょうか?
古代中国の哲学者である荀子は「人は多くの任務を兼ねることはできない」と言い、各人が社会的役割を全うするべきだと考えていました。
古代でこれなら現代はなおさら格差を必要としているのかもしれません。
私達はどちらを選ぶのか
ハクスリーが「すばらしい新世界」を想像したのが1932年のこと。
ユートピアの実現可能性が高まってきたからこそ考えるべきかもしれないですね。
幸福を目指すのか、真理を目指すのか。
ミァハの言うような一線を、今はまだ越えていないことを信じて。
まとめ
「すばらしい新世界」は読むと頭の中がぐちゃぐちゃになります。
他の本では中々味わえない「この感覚」がたまらなく好きで、旧版を持っていながら新訳版を買う始末(2冊持ってどうするよ...)
万人受けしないとは思いますが、先が見えず不安の多い時代だからこそ読む価値があるのかもしれないですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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