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海の向こうからの贈り物

ある日の夜遅く、仕事に疲れきってとぼとぼと帰宅して宅配ボックスをあけるとDHLの黄色いシールが貼られた小包が入っていた。ローマ字で宛名が書かれている。

海外からだ。
差出人はドイツに住む友人からで、小包の中にはドイツの食べ物がたくさん入っていた。

ドイツの夏にかかせないシュパーゲル(白アスパラ)のインスタントスープ。
カリーヴルストのパウダー。カリーヴルストは、焼いたソーセージをぶつ切りにしてカレー粉とケチャップをたっぷりかけて食べるドイツの国民食で、駅のスタンドには必ずカリーヴルストがある。ブロートヒェンという小さな丸パンと一緒に食べるのが定番だ。

レープクーヘンというシナモンなどの香辛料がたっぷりはいったパウンドケーキのようなお菓子も入っていた。小包に同封されていた手紙によると、テレビのレープクーヘン食べ比べで1位に輝いた商品だそうだ。友人は手紙の中で味の好みを心配していたが、スパイス好きの彼がおいしいおいしいと言ってあっという間に食べてしまった。

チョコレートがけのマジパンが入ったバームクーヘンもあった。ドイツのお菓子というとあまりイメージがないかもしれないけど、マジパンが入っているものが意外と多い。ちなみにわたしはドイツで暮らしていた1年ちょっとの間に、日本でおなじみのタイプのバームクーヘンを食べたことがない。

おしゃれなティーパックのアソートもあった。12月1日から24日まで毎日違う種類のハーブティーが飲めるアドベントティーで、手紙の中でアドベントカレンダーをあけ始める12月1日に間に合いますように!と祈ってくれていた。素朴な手作り感のある小さなクリスマスオーナメントもちょこんと添えられていた。

ひとつひとつの贈り物を丁寧に拾いあげてはじーんとした。
小包の段ボールがひんやり冷たくて、ドイツから日本までの遠い遠い距離を連想させる。この贈り物は海を越えてやってきたのだ。

海の向こう側からやってきた贈り物はどうしてこんなに嬉しいんだろう。自ら旅行に行って現地で買い込んでくるのとは違う喜びがある。友人のまごころがこもっているからだろうか。わたしが喜ぶか、嗜好に合わないことはないかと気遣ってくれている気持ちがじんわりと暖かく伝わってくる。

もちろん国内からだって、身近な友人からの手渡しの贈り物だってうれしいのだけど、はるばる海を越えてきたという事実が贈り物に馳せるわたしの気持ちを深くする。


贈り物は残すところアドベントティーだけになってしまった。1日1日友人の温もりを感じながらいただこうと思う。

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