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関西学院中学部&高等部の思い出

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学生時代、関西学院中学部 関西学院高等部 の思い出にまつわるエッセイです。還暦を迎える2020年、ウイルス自粛のゴールデンウィークに、記録目的で、アップしていこうと考えました。同…
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#同級生

エッセイ 陽だまりの町

エッセイ 陽だまりの町

 関学高等部のクラブハウス。
 我がサッカー部の隣りが、ラグビー部の部室だった。

 授業が終わり、ユニフォームに着替え、スパイクを履いて通路に出ると、左側からラグビー部の黒田が声をかけてきた。

 黒田と私はクラスが同じで、彼は私と大違いの、いわゆる"ええしの子"(お金持ちの子供)で、育ちの良さが全面に沸き出ている嫌味のない好青年だった。

 ふと見れば、黒田の後ろに、見慣れない顔がある。
 黒

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エッセイ 杉中洋成のこと

エッセイ 杉中洋成のこと

 【杉中洋成のこと】 中編
       久保研二 著                                       
 夢と現実の交錯

【一】
 
 その男からの電話は必ず、

「オマエか?俺や」

 というふうにかかってくる。
 
 この、第三者が聞けばとんでもなく無意味で曖昧なやりとりが、やたらと本人のお気に入りだった。

 私にそんなふうに電話をかけるのが余程嬉しかったので

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エッセイ えべっさん

エッセイ えべっさん

 中学の体育の授業で1500m走の計測があった。不幸にも、私はその日に限って運動靴(トレーニングシューズ)を忘れた。

 サッカー部の部室に常備していたつもりが、ロッカーの中にはなぜか底に6本のポイントをはめ込んだサッカー専用のスパイクしか見当たらない。
 数日前、一度洗って乾かそうと家へ持ち帰ったことを思い出して悔やんだ。

 その日通学のために履いていったのはスエードのハーフブーツ。私は特に

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