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エッセイ全般

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#関西学院高等部

縁は凄まじい

縁は凄まじい

 古い物が好きで且つそこに執着する傾向が強い私は、歴史的な街並みを保存している人々をホンマに偉いと尊敬します。

 今回、今までまったく知らなかった町、本来なら縁もゆかりもなかった愛媛県西予市の卯之町を訪れた私は、心底感心しました。

 街並み保存は地域の住人の心がまとまらなければ不可能です。
 人が集い棲息すれば、必ず何人かはワケわからん文句を言うアホが生まれます。
 それだけではありません。

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きつねとたぬき

きつねとたぬき

 20歳の頃、特殊な内容の仕事で、ちょくちょく東京に仕事…といってももちろんアルバイトに行くことがありました。
……この仕事の話は、今から考えたらそこそこ面白いので、死ぬまでにいつかおはなしするつもりです。

 さて、生粋の関西人、まして尼っ子の私が、江戸に行って最初に驚いたのが、飲食店で「にく」といえば「豚肉」をさすことでした。

 私ら関西人は「にく」といえば必ず「牛肉」を意味し、もしも「肉う

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キーパー死す

キーパー死す

 2016年4月11日。
 昨夜、高校の1年先輩の訃報を知りました。
やっぱり早すぎるでしょ?
 サッカー部のゴールキーパーでした。
 1年上の学年の最後の試合は、PK戦にまでもつれ、1点ビハインドで相手が5人目、最後のキッカーで、そいつが外せばサドンデスで6人目に勝負が持ち越されます。

 審判のホイッスルが鳴りました。
 敵のキッカーはガチガチに緊張していて、案の定ミスキックで、ボールはボテボ

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私の武勇伝 人類の知恵

私の武勇伝 人類の知恵

 もう30年以上も前のことです。

 私はとある恩師と共に、珍しく電車で移動していました。
 列車に乗り込むと、私らが座ったシートと少し離れた位置のシートに、いかにもガラの悪そうな20歳過ぎのヤンキーが3人。その頃はそんな呼び名はありませんでしたが、今でいえばDQN どきゅん、と表現される人種です。
 その3人のどきゅんが人の迷惑かえりみず、大きな声で騒いでいました。もちろん皆が眉をひそめる明らか

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同じ時期に同じ場所で

同じ時期に同じ場所で

2020年3月19日

 私はいつも思うんです。
 幼児期に可愛がってくれた祖父や祖母や親戚。
 さらに幼稚園の時の先生や友達、そして小学校、中学……とりわけ高校時代の友達。

 自分を中心にしていろんな時代があり、共に成長し、そのたびごとに卒業し……そうして私たちは次の世界へと進んできました。

 成長という言葉がピンとこなくなったのはいつ頃からだったでしょうか?
 その頃から、少しずつ同じ年代

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ファーストキス

ファーストキス

 性の知識も経験も、クラスのほとんどが持ち合わせなかったウブな高校生の頃、新学年にあがった時に、上の学年から T島 が落第してきた。

 ひとつ歳上の T島は休み時間になると、クラスメイトの後ろからそっと首すじに息を吹きかけた。しかもしょっちゅう。

 おどろいて振り返ると、その瞬間、強引にT島にキスをされた。もちろん唇に直接。

 結局クラスの約半数が、こうして T島に ファーストキスを奪われて

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杉中洋成

杉中洋成

 関西学院高校部の卒業アルバムを見直している。

 アルバムの最後の方に、一人一人が言葉を残している。

 18 歳だった悪友が残したメッセージは、

「天上においては、最上の星を、
 地上においては、最高の快楽を求めよ」

 きょうびの高校生と比較して、たしかにマセていた。

 そう書き残した男は40歳を目前に、私を置き去りにして、先に天に……昇ったのか地獄に落ちたのかは知らないが……とにかく勝

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同窓生の余韻

同窓生の余韻

 関西からの客人が帰った途端に、一気に襲ってきた寂しさに、17年間のパチプロ人生から足を洗ったばかりの弟子が、思わず落としたひとしずく。

 顔に似合わない、実に豊かな感受性の青年は、レトリックではなく、ホントにハンカチで目尻を拭うのでした。

「久保せんせとは、こう言ったら悪いけど、いつでも会えるじゃないですか……でもあの人らには、めったなことでは会えんじゃないですか? そんな度々神戸に行くこと

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恥ずかしい人違い

恥ずかしい人違い

 2018年2月のあたま、中学からの同級生
三ッ井君と湯田温泉で食事をして、温泉に入ったときの話です。

 風呂からあがり、脱衣かごの棚の前で私は、バスタオルでカラダを拭いていました。
 いちおう三ッ井君のぶんと私のぶん、バスタオルを2本わざわざ家から持参して、1本は服を脱ぐ時に先に渡してありました。

 私がカラダを拭き終えたあと、となりの三ッ井君が使っていたバスタオルをつかみ、

「持って帰っ

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ガッチャンコ

ガッチャンコ

2019年1月26日、昨年に100歳を間近にしてお亡くなりになられた「恩師」山本善偉 せんせを「偲ぶ会」がありました。
 場所は、兵庫県西宮市の関学会館。大学に隣接した施設です。

 山本善偉 というお名前の由来は、米国の詩人が書いた作品の一節、「GOOD and GREAT」だそうです。

 元学徒兵だったせんせは、その自らの強烈な戦争体験から国家権力の横暴さに強烈な怒りを持つようになり、実

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2国(国道2号線)の殺人鬼

2国(国道2号線)の殺人鬼

 2018年の正月あけ、中学部・高等部からの友人、三ッ井くんが山口に来てくれました。
 昔の友と語らうのはホントに楽しいですね。時が止まっていたような思いがします。

 日本を代表するような大企業の系列会社の社長をつとめる彼は、実はその昔、私と一緒にバンドを組んでたメンバーなのです。

 おととい鹿児島から新山口に着き、昨日の朝、山口で仕事をし、昼過ぎに秘書室長のみを東京に返して、そのあと私と遊ぶ

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エッセイ キャプテン

エッセイ キャプテン

 
  【キャプテン】

        久保研二 著
                
 トーナメントのように必ず勝敗をつけねばならないサッカーの試合で、規定の試合時間を終了しても決着がつかなかった場合、通常PK戦が行われる。

 高校サッカーでは試合時間が若干短いが、普通は45分の前後半と、延長戦の前後半を加えた120分を戦ったあと、ひと呼吸おいてから双方5人ずつがゴールキーパーと1対1で対峙

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お金で買えないものと失うもの

お金で買えないものと失うもの

 歳をとるということは、カラダの部品が壊れたり、見た目が一層劣化したり、物忘れが激しくなったり、加齢臭が出たりと、とにかくろくでもないのですが、探せばきっと素晴らしいこともあるはずです。
 若いうちは、単に探そうとしなかっただけなのでしょう。

 2018年の12月、関西学院高等部の時のサッカー部の1年上のキャプテン、森井さんと神戸で会食をさせていただきました。

 ふりかえれば、森井さんとプライ

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恩人

恩人

 じっくりと振り返ると、自分の人生……特に、世の中の見方を大きく変えてくださった「恩人」を、決して忘れることは出来ません。

 まだ未成年だった私が、叩き込まれた哲学。

「世の中に舐められるな、舐めてかかれ」

「その為に大事なことは、《気合い》と《間合い》だ」

 その恩人……恩師が、こともあろうに、この私に、

「クボ、おまえは、俺をバカにしとるやろ?」

「そんなこと、あるわけないやないで

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