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ピレネーを越えて|カミーノ・デ・サンティアゴ巡礼日記#1

2015年7月31日
サン・ジャン・ピエ・ド・ポー〜ロンセスバージェス 27.5km

窓の外からの光で目を覚ます。時計は4時半、起きるにはまだ早い。外から土砂降りの雨の音が聞こえる。その瞬間、窓全体がピカッと光った。

今日はカミーノ・デ・サンティアゴ、フランス人の道の最初にして最大の難関と言われる、ピレネー山脈越え。山を越えて25キロ以上先まで宿がないらしく、土砂降りの中ピレネーが越えられるのかな?寝ぼけた頭でぼんやりと今日のことを考えるも、うとうとと再び眠りに・・・。

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6時になると、あちこちでアラームが鳴り他の巡礼者起きはじめました。身支度を整え、クラッカーの簡単な朝ごはんを食べいざ出発です。明け方の雷がうそのように雨は上がって、夜明けのツンとした空気が胸いっぱいに広がります。

絵に描いたような古いヨーロッパの町並み。巡礼者(スペイン語でペリグリーノと呼ばれる)たちがつぎつぎに現れ、雨に濡れた石畳の上を村外れにある時計台に向かって歩いていきます。
ここからはじまるんだなあ、と神妙な気持ちで時計台をくぐぬけ、いよいよ800キロメートルの旅のはじまりです。

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地図によると今日はピレネー山越えを含む27キロ、おおよそ8時間の行程とのこと。
村を抜け、坂道を登っていると、ハッセルブラッドというドイツのフィルムカメラを首から下げて歩く男性が。カメラが気になってチラチラ見ていたら声をかけてくれました。ポルトガルから来たという彼とカメラについてぽつぽつと話しながらしばらく歩くきます。
カミーノで最初に出会ったペリグリーノ。

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ピレネーの道は山の中ではあるけれど、アスファルトで舗装されていて歩きやすく、フランスバスク地方の山々を横目にぐんぐん高度をあげていきます。
夏の鮮やかな緑と雨上がりの土の匂い。夜が明けたばかりのオレンジ色の朝日に雨粒がきらきらと反射する様子に目を細めます。

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道沿いの牧場や放牧地では牛や馬たちが優雅に朝ごはん中。

しばらくすると頭上にどんよりとした雲が。遠くで雷も聞こえます。今にも雨が降りそうな気配の中、ちょうど2時間歩いたところで山小屋のようなバルに到着しました。

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巡礼者でいっぱいの店内。なんとか空いている席を確保し、まわりの巡礼者に習って、カフェ・コンレチェ(カフェラテ)とトルティーヤ(オムレツ)で休憩します。ついでにランチ用のボガティージョ(バゲットのサンドイッチ)も一緒に注文。(この3メニューは巡礼中幾度となく登場します。)
店内で巨大なトルティーヤにかぶりついていると、店の外にいた人たちが慌てて内へ駆け込んできました。どうやら降りふりはじめたみたい。

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休憩後も雨は降ってはやみを繰り返し、あたりは霧に覆われ10メートル先も見えません。幸い道はきれいに舗装されているし、人影も多く道に迷う心配もなく、前の巡礼者のリュックを見ながら進みます。

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時折、真っ白な霧の中に馬の輪郭がかすかに見えます。
青い霧の中、まるで海の底に沈んでいるみたい。

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ふと、近くで大勢の羊が鳴いている声が聞こえ、しばらくすると鐘の音が。

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羊が横断中。足早な巡礼者たちも、羊の歩みを待ちます。

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頂上付近にたどり着く頃には雲の上に出たのか、霧が晴れ青空が見え始めました。天に向かってぐんぐん歩きます。気持ちがいい。

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霧が晴れ、イエス・キリストを抱くマリア像が姿を現しました。幻想的な風景。

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頂上付近、風の中を進みます。

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山頂を越え、フランス・スペインの国境に差し掛かる頃には広々とした高原だった風景は一変し、緑の深い森に変わりました。森の中ではしとしとと小雨が降り続きます。

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途中の水飲み場で休憩がてら、お昼ご飯にボカティージョ。
うっすら霧が立ち込める森の中を進みます。

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途中、頭に葉っぱを飾っておしゃれしている馬に出会いました。フォトジェニックな馬たちに雨の中、夢中で写真を撮ります。

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歩きはじめて8時間、そろそろ疲れてきたなと思ったところで、霧の中大きな建物が現れました。雨降る中、突如に現れる巨大な建造物はまるで要塞のような雰囲気。

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ロンセスバージェス、本日のアルベルゲ(巡礼宿)に到着です!長かった!!

入り口では雨の中を歩き続けたどろどろの巡礼者たちが、今日のベッドを求めて列をつくっていました。列に並び、クレデンシャルにスタンプと宿泊費12ユーロを払い、ベッドにありつく。

指定された番号のベッドへ。2段ベッド2台が向かい合う形で並び、4人ごとに仕切られ、男女別に分かれていてシーツも清潔だし、ベッドもふかふかで言うことなし。思っていたより清潔・快適で安心しました。
向かいのベッドにはシチリア出身のラウラとリザ。(写真を見返して気が付いたけれど、上の写真の山頂付近で風の中を進むふたりです。)20台後半のふたりは南イタリア娘のイメージそのままの健康的な美女。軽く自己紹介などをして交流しました。
ミサがあるようなことが聞いたけれど、ドロドロに疲れ果てた身体にシャワーを浴びてベッドに戻ると、そのまま気絶するように19時には就寝していました。


カミーノ・デ・サンティアゴ巡礼日記#0↓


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