見出し画像

わへいはなんの研究してたの編② 〜既存の概念をぶち壊せ!〜

今日は修士論文の研究を紹介させて頂こうと思います。
文字数の関係上、一つ前の記事で書いた2つ目のテーマだけにさせてください(笑)

かなり専門性が高い内容ですがなるべく噛み砕いて書いていきますので、
どうか最後までお付き合い頂けますと幸いです。

○従来の考えは

胎盤タイプの赤ちゃんザメは孵化した後に以下のステップで成長すると考えられていました。

①妊娠初期
この時期はまず卵黄から栄養を摂取します。
卵黄は卵黄柄という管を経由して赤ちゃんの腸に入り、吸収され、赤ちゃんの栄養となります。

②妊娠後期
その後、卵黄がある程度吸収されたら卵黄が入っていた膜が子宮の壁にくっ付き、胎盤が形成されます。
この時期の赤ちゃんは胎盤からへその緒を経由して栄養を受け取ります。

ちょっとわかりづらいのですが下のイラストみたいな感じです。

・妊娠初期

画像1

・妊娠後期

画像2

○わへいの仮説は

従来の考え方だと、孵化したてで赤ちゃんザメの胃袋や腸が発達していなかった場合、卵黄を吸収できません。

そこでわへいは従来のステップに加えてもう一つの段階があると考えることにしました。

・仮説

①??から栄養をもらってる時期(new)
②卵黄から栄養をもらってる時期
③胎盤から栄養をもらってる時期

①の時期に該当するであろうめちゃくちゃ小さい赤ちゃんを見てみると鰓の穴から赤いヒモのようなものがたくさん出ていることが判明しました。

画像3

ということは、、、?これっぽい??

画像4

子宮ミルクタイプとめちゃくちゃ似てることがわかりました。

しかし、この時期の子宮の中には羊水のような透明な液体が満たされてはいますがミルク状のものは全く見当たりません。

ということはこの羊水のようなものに栄養があり、それを赤いヒモのような「外鰓」から吸収しているのではないかと考えました。

※残念ながらこの羊水のようなものに栄養があるかは明らかにできませんでした、、、

つまり従来は胎盤タイプのサメは2つのステップで栄養の摂取方法を切り替えていたのが3つのステップである可能性が出てきました。

少しややこしくなってきたのでここまでの話を一度整理します。

サメの赤ちゃんは以下の3つのステップを切り替えている可能性が出てきました。

①羊水から栄養をもらってる時期(new)

画像5

②卵黄から栄養をもらってる時期

画像6

③胎盤から栄養をもらってる時期

画像7

◯検証結果どうやら仮説は正しいっぽい?

を観察してみると

卵黄をどの時期から吸収しているのかを確定させるために①〜③の時期のそれぞれの腸を顕微鏡で観察してみました。

するとこんな結果が得られました。

①の時期は腸がまだ未発達で中に卵黄もない
②の時期は腸が発達しており卵黄がある
③の時期は腸が発達しているが卵黄はない

妊娠の時期によってこんな感じで発達している器官が異なっており、それぞれの時期で発達している器官を上手く使い分け栄養を吸収しているのではないかと考えました。

画像8

・卵黄柄へその緒

ちなみに妊娠初期〜中期にある「卵黄柄」という管と妊娠後期の「へその緒」の断面を観察すると構造が異なっていることもわかりました。赤が動脈で青が静脈で黄色が卵黄の通り道です。信号機みたいですね(笑)

画像9

妊娠初期に卵黄の通り道に卵黄はないのですが、中期になると卵黄が観察できました。卵黄を使い切っている妊娠後期では卵黄の通り道がそもそも無くなっていることもわかりました。

ここまでの結果から胎盤タイプの赤ちゃんザメがどの器官を使って栄養を摂取しているのかを表にまとめました。
○はほぼ使ってるであろう
△は情報不足のため肯定も否定もできない
×はほぼ使ってなさそう
です。

画像10

以上のことから○と×が付いている箇所が仮説と一致しているので仮説は大体正しいことができたと思います。

◯まとめ

従来2つのステップで成長すると考えられていた胎盤タイプの赤ちゃんザメでしたが、実は3つのステップで成長している可能性が高いことがわかりました。

ただ、自分としてはもう1ステップあると考えていて、それを証明するためには今回の材料では足りませんでした。

悔しい気持ちもありますが、めちゃくちゃやりがいのある研究テーマでした。

今回ご紹介した研究はボーッとしながらサメの赤ちゃんを見ていた時にたまたまひらめいたテーマでしたが、終わってみるとなかなか充実していたと思います。

こんなテーマをやらせてくれたボスにも感謝ですし、いろんな学会で発表した際にたくさんの人とディスカッションをすることでかなり深く考察できました。

自分一人では到底ここまでのデータは出せなかったと思います。本当にいろんな人の支えがあっての研究なんだなぁと実感しました。

○終わりに

今回はサメWEEKということで
第1弾では「サメの雑学や豆知識」を、
第2弾では「わへいの大学院で研究内容」について書かせて頂きました。

少しは楽しんで頂けましたでしょうか(笑)

なるべく噛み砕いてわかりやすく書くように心がけたのですが、正直わかりにくい箇所もあったと思います。すいません。。

今回初めてイラストを自分で描いてみたり、なるべく写真を使うように心がけたりと自分的にもかなり勉強になりました。
慣れない作業だったのでめちゃくちゃ時間はかかりましたが(笑)

とにかくこの記事を読んでくださった皆様にちょっとだけでもサメに興味を持って頂けたらわへいは本当に嬉しく思います。

このロマンに満ち溢れる生き物が少しでも多くの人に興味を持っていただけますように。

感想等をコメントで頂けたらめちゃくちゃ喜びます(笑)

最後まで読んでくださりありがとうございました。

🦈わへを🦈

いいなと思ったら応援しよう!