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ビリヤニとマンサフに感じる陸のシルクロード

中東の主食は小麦粉であるのは間違いない。それは歴史が奏でてきた時間の積み重ねが違う。元来乾燥していた土地ながらいわゆる「肥沃の三日月地帯」と呼ばれた地域に元々自生していた小麦を発見した人々が、小麦を栽培しはじめたのが12000年前とも言われている。対して同地域での米の歴史はその半分弱の5000年前ぐらいと言われる。高湿・高温の気候を求めて今のエジプトのナイルデルタあたりから始まったのが同地域での稲作文化だ。麦がメインながらも随所に米が差し込まれてくるのがこの中東の食の特徴だし、米を愛している僕からすると時折差し込まれるこの米のアクセントがとても体にとって優しく響くのだ。

米食文化もしっかり根付いたこの国で気づくことがある。どこの米かと聞くといいほとんどの店がインド産のバスマティと答えてくる。文化的にも中東とインドの繋がりは強い、陸のシルクロードが果たした役目は今もその影響は色濃く残っている。現代でもインドとの結びつきは原料の米の輸入もそうだし、古くからの代表交易物だったスパイスもそうだ。アラビックコーヒーは決まってカルダモンだ、そのカルダモンもインドのテカディからやってくる。中東文化を文字通りスパイスアップしたのがこのインドの食材たちだ。食材が似れば、食べる食も似てくる。それがビリヤニとマンサフの関係だ。

マンサフとは米を炊き上げたところにバターで炒めたバスマティライスに、しっかり煮込んだ羊肉のシャンクを添えて、その上からサーミンと呼ばれるドライ発酵乳で作ったヨーグルトソースをかけて食べる料理だ。元々はヨルダンなどで食べられるお祝い料理なのだが、これがすこぶる旨い。そしてインドのビリヤニとも同じような製法でもあるために、作り方をみるだけでも色々と料理のアイディアが出てくる。中東を旅したり住んだことがある人はヨーグルトの立ち位置みたいなものが変わることだろう。米と乳製品を積極的に合わせようとする発想はもちろん和食にはない。しかしもともとは釈迦が一週間一食という修行で衰退していたときに差し出されたのが乳粥だったわけで、実は米と乳製品の関係というのは実は僕らが考える以上に違いのだ。そしてこの乳製品はメソポタミア発祥と言われているから、そんなところまで調べていくと更に寝られなくなっていく。

僕がこの間のインドからこの中東に流れ着いたのもそう考えるととても学び多きルートに乗っているんだなぁっと思うのだった。

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