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エガク、足るを知る

ガウディは強靭な精神力を持った、時に嵐のような怒りを爆発させる激しい人でしたが、そのエネルギーはすべて制作に向けられ、世の中を上手く渡っていこうとするようなことはできない性格でした。これもガウディの職人的な一面だと思います。

外尾悦郎『ガウディの伝言』,光文社(2006)

疲れもとれていない寝惚け眼の土曜の午前中、絵を描いている。
パステルとスケッチブックと現像した写真を携えて、近所のアトリエに向かう。

参考にする写真はたいがい動物のソロ写真で、
あまり深いことは考えず、模写をするように絵を描き進めていく。

先生はカピバラを知らなかった

先生に作品のコメントをいただいた後、提言があった。

「そろそろテーマというか、構図というか、
好きなように組み合わせてみてもいいですね。」

このまま模写を描き続けてもいいんですけどね、と。

悩んだ。

アトリエのメンバーは、私が見る限り、各々が「世界観」をもっていた。

Kさんはインドの神々シリーズを描き、
猫の絵本を出版する猫画家さんがいて、
いつも黙々と青にこだわった水彩画を描くお兄さんがいて、
デフォルメされた動物のイラストと精密な植物画を描く丸メガネのお姉さんがいる。

私に描きたいものがあるだろうか。
私の世界観って一体なんだろうか。

迷った挙句、その時読んでいた本に頼った。

サグラダ・ファミリアの外尾悦郎さんによるハープを弾く天使の彫刻をベースに、
サグラダ・ファミリアそのものをモチーフに描いている。

数年前に観に行けた

聖書、自然、花、昆虫、音楽、平和……
サグラダ・ファミリアは、全てを内包した芸術。

模索しながらも熱中して描いていれば、数時間があっという間に過ぎる。

教会建築も、スペインも、自然も、
私には好きなものがある。
でも、私はそれを諦めようとしている。

やりたいことがある。
それは絵を描くことで、やっとできていて、本当によかったとなんだかほっとしている。

でも今の私の時間の大半は、キャリアとかお金とか将来とか漠然とした不安で動いている。

人生には必要なことなんだろうけど、
虚無になる。

それでも、スケッチブックに世界を広げる。
いつだって答えはなくて、動くしかない。

表現なんてたいそうなことはできていない。
描きたいものを描くことしかできない。

まあ……、それでいっか。
それがいいな。

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