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心配性の庭


 植物を育てている。確か20代半ばにIKEAで買ったミリオンバンブーとハイビスカスが最初で、ここ10年くらいは常に何かしら世話をしている。
「ガーデニングが趣味です」と声高らかに言ってみたい気もするが、大人になってからはマンションにしか住んだことがなく、ベランダに植木鉢を並べているだけなので、そこまで主張するのも気が引ける。 


 それでも、細々とやっているInstagramでは、「#ベランダガーデニング」などとタグを付けてみたりして、同好の士がアップするバラやビオラの写真を楽しんだり、栽培の仕方を教えてもらったりすることもある。
 今はミニバラ、バラ、アロエ、ローズマリー、レモン、唐辛子、アイビー、クリスマスローズ、クチナシ、小さな胡蝶蘭と、娘が運動会の褒美に買ってもらった赤いベゴニア、それからもうすぐ咲きそうな沈丁花の鉢を持っている。
 植物を育てていると、植物に関する本や記事が目に付く。どこに書いてあったのかは忘れてしまったが、

「植物を育てるのが上手い人は心配性である」


という一文が印象に残っている。その通りだろう、と思う。
 植物は、水やりや消毒といった手入れを必要とするが、そのやり方にいつも不安を抱いていることこそ、植物を枯らさない秘訣と言えるかもしれない。
「水をやり過ぎているのでは?」
「日当たりが良すぎると葉が枯れるかもしれない」
「消毒が遅れると虫が付くかもしれない」
など、自分の世話の仕方を常に疑い、植物を観察して少しでも異変があれば対応する。そうしていれば、あまり枯らすこともない。その代わりに、気も休まらないが。


「水さえやっていれば大丈夫だろう」
と思える人は、私から見れば楽天家の気質に恵まれた人で、嫌味ではなく心から羨ましいと思う。私の母はサボテンさえ枯らしたと言って植物栽培に手を出さないが、むしろ幸せな人だろう。


 そんなわけで、私は手入れの行き届いた庭や見事に咲いた花の写真を見ると、その美しさを楽しみつつ、育てた人は自分と同じ心配性かもしれないと、勝手に共感を覚えているのである。

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