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【3】ゼロからの学習支援まずはここから ~なっちゃんへの引継ぎnoteフリースクール学習支援~

本シリーズは、「おうちフリースクールを一緒に手伝ってくれている新卒のなっちゃんに向けて書いた業務引き継ぎノート」というスタイルで構成します。
わたなべの「おうちフリースクールでぃありす」での実践内容の中でも、もっとも大切にしてきた”学習”についてのあれこれを書き残していきます。
おうちフリースクールを運営中の方、ホームラーナーをサポート中の方にお役立て頂けたら嬉しいです。

【1】はじめに より

昨日は良い天気だったので、父(と言っても夫の父)の指導を仰ぎながら人生初の芝刈りに挑戦しました。
いくつになっても「人に何かを習う」というのはとても刺激的ですね。
適度な緊張、ワクワク、そして、上手にできた時に褒められて嬉しい気持ち。
感情の動きが子どもの時と変わらない自分に、呆れるような嬉しくなるような。

しかし芝刈りというのは案外スカッと気持ちの良いものですね。
仕上がりを見て、触って、少年の坊主頭を彷彿とします(そういえばボウズ頭の子って、最近見ないな)。


さて、先日生徒さん達が帰った後になっちゃんが言っていた「子ども達の勉強を見た後は、いつも”あのやり方で良かったのかな…”というモヤモヤが残る」という言葉が印象的でした。
本当にそうなんです。支援者の多くが悩みを抱え、試行錯誤を繰り返すのが学習支援だと思います。奥が深いなぁといつも思います。
私だって、もう結構な年数この仕事しかしていないクセに、「まだまだだな…!」と自分に喝を入れること多々です。
私が全国のフリースクール運営者さん向けに実施している「おうちフリースクール運営オンライン相談」においても、一番相談されることの多い項目のひとつが学習支援のお悩み。

✔生徒さんの学習習慣が定着しない
✔学習に前向きな気持ちになってもらえない
✔そもそも支援者自身が学習支援に自信がない

などなど。

学習支援の経験が長い先生方の場合は、それぞれのご経験に基づいた学習支援メソッドでうまくいくことが多いでしょうが、学習支援経験ゼロの先生方からは日頃多くのお悩みが寄せられます。

グループ学習か個別学習かなど、学びのスタイルは各スクールそれぞれだと思いますが、今回は大抵どこのスクールでも一度は経験することになるであろう「自習、自学スタイル」の学習時間における支援者の姿勢について、私が”個人的に”思うところをお話したいと思います。

▽いきなり良い先生になろうとしない

さて、学習支援者の第一歩。
私が思うのは、最初のうちは「勉強を教えよう」「やらせよう」とあまり強く思わなくて大丈夫、ということです。
また「理解あるかっこいい大人」も目指さなくていいよと、私はいろんな先生達に伝えています(変に取り繕うとあとあと迷走します)。

学習支援にものすごく精通した先生であれば、師弟関係をベースに学習支援にあたるのももちろんOK。
でもこれは結構難易度が高く、誰にでもできるやり方ではありません。

意外と盲点ですが、例えニコニコしていたとしても、自習を”監督”している雰囲気を出すのもよくありません。
支援者としてはただ見守っているだけのつもりでも、子ども達からすれば「監督する大人ー監督される子ども」という図式です。
自学の時間は、大人も何か作業しているくらいで丁度いいと思うのです。

▽まずは支援者自身が”良き学習者に”

ところで、学習に気持ちが向かない子は、一体どうしてそうなってしまったのでしょう?

この部分について、まずは支援者が真剣に想像を巡らすことがスタートラインです。

素人考えですけれど、大抵の人間って基本的に「知りたい」という欲求があるものだと思うんですよね。
スマホ依存、YouTube依存っていうのは、まさにこの「知りたい」という欲求があるからこそ起こるものなんじゃないかなぁと一般人の私などは考えるのです。
その仮説で言えば、本来勉強というのは人間の「知りたい欲」を満たすのに最高の娯楽のはず。
”学習に気持ちが向かない=シンプルに学習そのものが嫌い”というよりは、過去に学習活動に付随して発生したハプニング、気分の悪い経験…そちらのほうに嫌悪感を抱いているのではないかなと思うのです。

私が出会ってきた生徒さん達ですと、立ち上がる自由がなく机に拘束されるのが苦痛、間違えるのが恥ずかしい、ブランクが長すぎて勉強が恐怖にすら感じる、周りの子ができて自分だけできなかったらどうしよう、テストの点数で評価されてうんざり、寝てないので疲れている…などなどの理由が多かったです。
大人の想像だけで暴走するのも良くないので、私はざっくばらん、生徒さん達に「なんで勉強イヤになったの?」と質問して教えてもらったりもしていました。

では、
どうしたら、子ども達は安心して机に向かうでしょう?
どうしたら、子ども達は安心して挑戦するようになるでしょう?
とうしたら、子ども達は安心して間違うことができるようになるでしょう?
むしろ、間違う=不正解ではなく、それは思考力をつけるために最も価値のあるプロセスである。このことをどうしたら理解してもらえるようになるでしょう?

私なりに出した答えは単純で、
まずは大人が率先して挑戦し、間違い、思考し、プロセス知識全体を自分のものにしていく姿を見せればいい。そう考えます。
そういう意味で、最初は「良い先生」ではなく、「良き学習者」のスペシャリストを目指してみるのはいかがか、と提案しています。

根気はいりますが、今日から誰にでもできる簡単なことばかりです。

まずは支援者も子ども達と同じテーブルを囲んで、自分の勉強に取組んでみる。
小中学校の教科の学び直しでもよし。
資格試験の勉強でもよし。
私はよく、生徒さんが今取り組んでいる問題を「見せて、私もやりたい」と頼んだりしています。
最初はうんうん唸りながらでもいいので取組んで、子どもの前で自分の答えに○つけをして、惜しげもなく間違えて、模範解答握りしめて悔しがったり、生徒さんと一緒に悩んだりすればいいのです。

こういう事を続けていくと、やがて支援者も生徒さんもレベルが上がっていって、「答えは一緒なのに途中式が違う」とか「大人は三平方の定理で、生徒さんのほうは全然見たことも無いやり方で正解を導き出してる」とか「3人の人間が、それぞれ違うやり方でやったのに全員正解だった」みたいなことも起きるようになり、かなり盛り上がります。

こういう事を真剣にやっていくと、そのうち子ども達の「正解よりもレベルの高い不正解」みたいなケースにも容易に気付けるようになりますよ。

まずは大人が一生懸命になってみてください。
子どもに勉強させることに、ではありません。自分の勉強に、です。

子ども達は、大人の頑張りもよく見てくれているものです。
あっさり間違える大人を見て「間違えてもあんな感じに振舞えばいいんだな」と参考にしたり「間違えても大して恥ずかしくないもんだな」と拍子抜けしたりし、徐々に挑戦するメンタルの強さを取り戻していくように思います。
またこのような過程を通して、初めて大人を戦友として認めてくれるようになるはずです。

✔この人達の前では、安心して挑戦できる
✔この人達は、間違いも価値あるものにしてくれる
✔この人達の中では、自分は成長できる

こんなふうに、フリースクールでの人間関係が子ども達にとって居心地の良いものになれば、学習活動はとても充実したものになります。
充実した学習支援の第一歩は、「安心できる環境づくり」これに尽きると考えています。

ちょっと脱線しますね。
折角なのでスマホ、ゲーム、YouTube依存の話に戻ります。
ゲームやYouTubeなどのツールに極端にハマってしまった経験を持つ子に話を聞かせてもらったところ、なかなか興味深い回答が得られました。

「別に楽しくてハマってたわけじゃない。時間が早く過ぎるから。集中しているとイヤなことを思い出さなくて済むから」とのことでした。
1人2人ではなく、まあまあな割合の子が、こう教えてくれたのは興味深い事実でした。
中にはゲームを自作して世界中にファンを抱えるという”ゲームに愛された天才”みたいな生徒さんもいたのですが、その子はちょっと別として。

集中してイヤなこと忘れたいなら、勉強してヒマつぶししたっていいわけですよね。
勉強に集中できるようになると、自然とゲームやYouTubeと適切な関係を築けるようになっていく子も多かったように思います。


▽声かけはタイミングが大切


「そうはいっても、生徒さんが自習中にわからないことがあって困ってるときはどうするの?」と思われますね。

答えは簡単。「教えて」と言われたら教えればいい。
(断言できないですが、私はそう思っています)

「教えて」と言われて初めて、どれどれ…と一緒にペンを動かしたり、模範解答とにらめっこして、わかる喜びを共に嚙み締めればいいのです。(子ども達の「わかった!」の瞬間が、支援者にとっては一番のご褒美の瞬間ですね^^)

おしゃべりな私は、話しかけ過ぎにも注意するようにしています。
生徒さんのペンを動かす手が止まる度に毎回「大丈夫?」と声を掛ける…ということはさすがに無いですが、手取り足取り手伝いすぎないようにも気を付けています。
寄り添っているつもりでも、生徒さんにはちょっと重いかも、なんて。
大人だって、タイピングをじーっと見られてたりしたら気になってタイプミスしちゃったりするでしょう?(私はする)
何より、生徒さんの集中を妨げる行為はアウトです。
手が止まっていても、脳みその中はフル回転している時だってあります。
目に見えるアウトプットがない時間も、子ども達は思考しているし、その時間はとても大切です。
だから、ついお節介焼きたくなっちゃうけれど、大人の側も我慢我慢。
大人は、生徒さんが本当にこちらの力を必要としてくるまでは辛抱強く待つことを心がけています。

とはいえ、”教えて”とか”わからない”ってなかなか言ってくれない子もいますよね。
それはまだ、子ども達にとって支援者がまだ戦友認定されていない証拠と、自分を省みる機会にしています。
前の項で話したように、自分の学習環境づくりは万全か?私自身は良き学習者になれているか?と自問自答します。

あるいは「困ったら”ヒントちょうだい”って言ってね」とだけ声を掛けて少し距離を置いてみるのも手です。
学習時間終了間近まで質問がなかったら「今日取組んでいた演習、私も一緒に解いてみていい?」と聞いてみるなどして、ちょっとずつ距離を詰めてみます。


あくまでもちょっとずつです。私は急激にグイグイ行かない派です。
中学生って優しいから、あんまり声をかけてくる大人には「しょうがねぇなぁ」と話を聞いてくれることがほとんなので、その繰り返しで、大体の生徒さん達は心を開いてくれるようになったように思います。

以上が、わたなべなりの学習支援の留意点です。
他の先生達は、どんなこと考えて支援しているんだろうねぇ?ぜひ聞いてみたいよね。
いろんな先生方に学びながら、自分なりの「学習支援の心得」をもつと、ムラがなく、安定した学習支援が提供できるようになると思いますよ。

※画像は、みんなのフォトギャラリーからharunatelierさんの作品をお借りしました。






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