フリースクール生徒さんが書く来室記録
先日同業の方がポツリとこぼした一言をヒントに今日はnoteを書いてみます。
「フリースクールの生徒さん達が、毎回の来室記録をほーんのちょこっとしか書いてくれないんです」と。
来室記録というのは、「〇月〇日:今日はフリースクールでこんなことをしました。こんな発見がありました」などなど、その日1日のまとめを書くものです。
フリースクール運営者がつくる日報とは別に、生徒さん自身に自分の言葉で手書きしてもらって、生徒さんの在籍小中学校にも提出したりするスクールさんも結構あります。
私が運営しているおうちフリースクールでぃありすでもずっと続けている習慣で、以前私のnoteでもそのフォーマットを紹介したことがあります。
上記は有料記事なので、画像でチラ見せしますね。
私のフリースクールではこんな感じのフォーマットをA4用紙に印刷して、生徒さんに毎回の来室ごとに記入をしてもらっていました。
さて、本題に戻りましょう。
生徒さんによるこの記録用紙への記入を充実させてもらいたい場合、支援者として行うべき手立ては何でしょうか?
▽そもそもなぜ来室記録を記入させるのか
そもそも、なぜこの来室記録を記入させるのか。あるいはしてもらいたいのか。
意外と「何となく書かせている」というスクールさんも多いと思います。
まずはこの点について、支援者自身の姿勢をハッキリさせると良いと思います。
✔生徒さんの在籍学校から提出を求められているから
✔自分を振り返る習慣をつけてほしいから
✔作文の練習として
などが挙げられるでしょうか。
私の場合、上記3つの理由も、まぁあると言えばあったのですが、一番の目的は他にありました。
▽小さな感動を共有してほしい
私が生徒さんに「1日の振り返りの記入」をお願いしていた一番の理由はこれです。
日常の中の小さな感動を、おすそ分けしてほしい。
これが一番です。
感動とは。
それは「強い感銘を受けて深く心を動かすこと」。
必ずしも、歓喜に湧いたり涙したりすることだけが感動ではありません。
今日この小さな教室に来て、初めて知ったこと。
初めてできるようになったこと。
驚いたこと。
友達に言われて嬉しかったこと。
先生はこう言っていたけど、正直ちょっとムッとしたこと。(けど、勇気が出なくてその時は言葉にできなかったこと)
彼らはいちいち言葉にしなくとも、我々支援者の気づかない間にものすごい速さでたくさんの感情に出会っています。
そのひとつひとつを、教えてもらえる範囲でいいので、私にもこっそり打ち明けてほしいと思って書いてもらっています。
日々の教室の中での感情を生徒さん達におすそ分けしてもらうことで、我々支援者は次回の支援へのヒントが得られるのです。
▽お返事を書いてみてください
皆さんが生徒さんに来室記録を書いてもらいたい理由は明らかになりましたか?
「ただ何となく書いてもらっている」という感じだと、生徒さんもまた「ただ何となく書いてあげる」となるものです。
来室記録記入の理由が明確になったら、今度はぜひ「お返事の記入」を始めてみてください。
私が「生徒さんが書いた文章へのお返事書き」を欠かさないようになったのは、中学校で英語を教え始めてすぐの頃からでした。
当時は大体4クラスを担当していて、英語の授業は各クラス週4コマあるから週合計16コマの授業をこなします。
私は週16コマ毎回の授業で、合計約160人の生徒に「英語の授業の振り返り」の記入を求めていました。
そして毎回必ず、振り返りへのお返事を一人ひとりに書いていました。
1日平均で3クラス教えるので、大体120人分のお返事を書きます。
教員の空き時間は1日50~100分。
お返事書きだけで貴重な事務時間の大半がつぶれますが、例え残業してでも、このお返事書きだけは第一優先事項として、ずーっと続けてきました。
えらいでしょう?とか、そういう話ではないんです(「えらい」と言われれば正直嬉しいですけれど)。
どうしてこんなことを続けていたか、わかりますか?
子ども達の言葉に、支援者がどう向き合うか。
その姿勢の違いで、子ども達の成長というのは大きく変わるということに気づいたからです。
子ども達の言葉に、支援者がどう向き合うか。
本当なら160人の生徒一人ひとりと対面で会話できる授業が理想なのですが、毎回そういうこともしていられないので(やってみたことはある)、せめて文字のやり取りだけでも毎回したいと思ったのが始まり。
中には私のことが大の苦手という生徒がいても、文字の応酬なら顔を合わせなくても済むから気楽でしょう。
160人の子ども達との文通を始めて以来、子ども達の学力の伸びも大変良かったです。
週4日も授業を受けてくれているのに、それに対する評価は年5回の定期試験の点数でしか返ってこないなんてあんまりだ、とも感じていました。
だからお返事には、「今日のグループ活動、〇班は盛り上がっていましたね」とか「小テスト、最近絶好調だね」とか「今日はたくさん挙手してくれたね」とか、小さなことでも、教師として嬉しかったことを書いていました。
だんだん話がそれて”絵しりとり”の応酬になったりとか、「彼女へのホワイトデーのお返しは何がいいだろう」だとか、最近の推しについての一方的な解説をしてくる子とかが出てきます。というか大半がそんな感じになっていくのですが、それもまたヨシ。
担任外のクラスの子とコミュニケーションを取れる機会なんてなかなかないし、特に男子なんて廊下で話しかけても「死ね」「うぜー」とかしか言ってくれなくなる子も少なくありませんが、この記録だけはちゃんと書いてくれて楽しかったです。
大事なのは、「書かせっぱなし」にしないことじゃないかなと思います。
口から発せられた言葉には、支援者なら皆さんちゃんとお返事すると思います。
だから、文字のコミュニケーションも大切にしてみると、何かヒントが得られるんじゃないかなと思うのです。
※画像はみんなのフォトギャラリーからt0m0y0さんの作品をお借りしました。
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