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できるだけ多くの方に知ってほしい後進国での衣料品製造の真実

2010~2012年にかけて中国経済の成長に伴い、生産拠点の移動
所謂、チャイナ+1が大々的に行われた。

衣料品業界ももれなくこの流れに乗って
賃金が安く、関税フリーな国への移管に力が注がれた。

その多くはバングラデッシュ、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、インドネシアへとシフト

そして私はバングラデッシュ、ベトナムに駐在する事に...

もちろん
ミッションは1セントでも安く商品を仕入れる事
毎日毎日新規工場への開拓 松竹梅、様々な工場へ行きました。

現地に行くまではお恥ずかしい話、
エコ、エシカル、サスティナブルなどなど、その手の事とは無縁、
むしろそう言う事言う人を??でした。
すいません。

時は2012年まだラナプラザ事件が起こる前

ダッカ近郊ビル崩落事故(ダッカきんこうビルほうらくじこ)は、2013年4月24日(現地時間)、バングラデシュの首都ダッカ北西約20kmにあるシャバール(サバール、en:Savar Upazila、人口約140万人)で、8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」が崩壊した事故である
死者1,127人、負傷者2,500人以上
引用元:wikipedia

その頃の最低賃金は2,700タカやったかなぁー
現在の為替だと日本円で3,471円

この頃は本当に労働環境がひどくて、小さな火災や崩落事故も頻繁に起こっていて、労働争議も頻繁

ラナプラザ以降
世界中でこの事件が報道されると労働環境が画期的に改善され
賃金も5,300タカ(6,818円)
2108年末には8,000タカ(10,291円)と大幅に改善

しかしその分、
物価も上昇している為、労働者の生活は実質改善されておらず、
子供への教育面でも大きな改善がなされていないのが現状
労働環境自体は危険性が回避できるようになったのは確かだけど、
それでも
BGMEA(Bangladesh Garment Manufacturers & Exporters Association )などの協会に加盟する約5,000社ほど工場の話であり、それ以外の
小さな下請け工場は何ら以前と変わっていない。

そして
バングラデッシュだけではなく、東南アジア地域でも賃金上昇
原材料費も大幅に上昇した。
当然コストは上がる傾向にある

一方で日本国内での販売状況はどうかと言うと

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07年2,451年→16年2,592円と141円のUP
14年に5-8%消費増税しているので、これを考慮すると3%程しか
国内での平均購買単価は上昇していない。

賃金も上がっている。
原材料費も上がっている。
当然商品原価も上がっているのに販売価格は3%ほどしか上昇しない。
20年前と比べると
衣料品販売価格は6掛けに下落しているとも言われている。

おかしいと思わへん?
本来、
商品原価が上がれば、販売価格も上がるはず、しかしほとんど変わらへん。
それを誰が吸収してんの? 誰が損をしてんの?

この一つの要因はビジネスの本質にあります。

大量生産されている衣料品の場合、原価に関係なく販売価格が優先して
決められている。

無地のTシャツなら○○円
プリントTシャツなら○○円
デニムなら○○円
シャツなら○○円

お店ごとにその上代価格と卸価格(上代かけ率)が決まっている。
つまり何を作ろうとも、原価に関係なく決まった上代価格に合うモノづくりをする必要性があります。

工場との交渉の際に必要な材料はサイズと枚数と希望価格

その交渉に特別なスキルは必要ない。
海外の観光地でお土産を値切るのと大して変わらない攻防が行われ、
希望価格に見合わなければ、「他に発注する」と言う殺し文句

工場は非常に立場が弱く、
工場は稼働させる事で収益を維持する必要がある為、薄利であっても仕事を受けざるおえない。
仕様書もまともに読めいない人が
発注権限を持っていると言う立場だけでバックマージンを受け取るバイヤーも少なくない。

もはやこのやり方はモノ創りではないし、フェアでもない。
労働賃金が上ろうが関係がない。
空調の利いた環境の良い空間で定められた販売価格ですべてが決まる。
発想はとてもシンプル「うちの店ではその価格でしか売れない」
もはや商品価値を高める努力より、価格訴求
その安易な発想が後進国での労働環境を悪化させる。
いゃ、もはや後進国での労働環境だけじゃない。
国内でも海外技能研修生への不当な扱いが問題になっている。

そして2つ目の要因

もし皆さんが労働者の安全を確保し、高い給与水準の工場に改善する為、
設備投資していたとして、値段の合わない仕事を受けざる追えなかった
場合、どうしますか?

答えは「値段の合う安全とはかけ離れた下請け工場に生産させる。」です。

多くの工場を日々廻っている中で出くわす事があります。
「日系の優良企業の生産をこの工場で行って良いのか?」と言う
場面に...

中には
長期賃金未払いだったり、染色汚染水をそのまま川に流していたり、
コンプライアンスの低い工場で日系企業の生産をしている場合がある。

この場合、ハイコンプライアンスの工場で受けた仕事が値段が合わず、
下請け工場に流れているケースです。

おそらく発注している日系企業も知らずに行われているケースですが、
これはバングラデッシュのみで行われている事ではありません。
東南アジアでもよくある事

もう1点
製造キャパシティーが越えている工場に無理な納期設定をした場合にも
下請け工場での生産は行われます。

とても悲しい事ですが、
エシカルやサステイナブルをうたう日系企業の商品が劣悪な環境で生産されているのを目撃した事があります。
賃金も未払いで労働争議も頻繁に起こってた。

もはや大量生産され、低価格で販売される衣料品には持続可能性と言う点で
構造上、破綻しているではないでしょうか?

ラナプラザ以降改善されたとは言え、未だ日系企業の生産は発注した企業も知らないうちに賃金が安いどころか?賃金を受け取れない様な環境で生産されている場合もある。


低価格を求め、手にした私たち自身が経済的に豊かになってますか?
所得が上がり、将来の不安もなく、満足な暮らしをしていますか?

私たちだけじゃなく遠くの誰かを苦しめ、未来の誰かに負担を掛ける。
そんな構造はやく辞めた方が良いと思わへん?

エシカル=倫理観が求められる時代

海外では
環境や労働に配慮のない商品は敬遠されつつある。
消費する事で社会的に意味のある商品が選ばれ、

「そうじゃないモノはダサくて時代遅れ」だと...

私自身もその昔、買うのも売るのも安ければいい。と言う感覚でいた。
たまたま後進国の製造現場で見てはいけないモノを見てしました。
見ておかしいと思う事はやれない。

社会問題の多くは知らない内に起こっている。おそらくそこに悪意はない。
日本では真実が報道されないので、自らの経験でしか真実を知る術がない。
しかし
知った事を見て見ぬふりをして放置する事は悪意だと思う。

そう。皆さんもこのnoteをここまでお読み頂いたと言う事は
後進国での現状を知ったも同然、知った限りは何かをしないとそれは
悪意かもしれませんよー

皆さんもここ10年程
安いものを消費していても
経済も暮らしも良くならない事はわかったでしょ。

環境にも後進国の方々の暮らしにも良くならない。
誰が得をする? 若しくは特定の誰かだけが得をしてんのか?

どうせこのままの生活を続けても疲弊するだけ
だまされたと思って、意味ある消費をしませんか?


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