幽霊船が沈まぬ朝を
冬垂れのなか
挫いたオールを引き摺りながら
私は駅へと帆を張ります
蛮性に満ちた列車への乗車はいつも心の奥が震えております
しかしながらも駅へと向かう潮の流れには逆らえず
群衆を渦の中心へと巻き込む魔の地帯
朝の切り傷の様な冷たい空気が
より私に深傷を負わせ
氷山の裏側でひっそりと私船と氷は衝突いたしました
休んで船を修理してる暇がないと
勘違いを繰り返し
連日幽霊船の様な朽ちき帆を靡かせ
改札口に錨を降ろします
私船が幽霊船となり禍々しく沈みかけていることにも気づかず
安息の大陸を指し示すコンパスを持っていないから
と己に嘘を被せ面舵いっぱい
大丈夫
まだいける
これは愚行と愚考が交わり合った
愚公の空気が作ったまやかし
帆をたたみ
オールを捨てて
船大工に逢いにいきましょう
希望の船出は何度だって訪れるから
己の船を大切に撫でて
列車は何本見送っても
いつでも乗車できるのだから
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