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はみ出しものがたり〜ありこやプロジェクトが立ち上がるまで〜

ノワでは現在、佐賀県有田町にある有田工業高校に親元を離れて全国から通ってくる生徒のためのシェアハウスの運営業務や、実際に親元を離れて生活している高校生の皆さんの見守り業務を行なっています。
この事業は、佐賀県や有田町、地域の空き家オーナー、アパートオーナー、実際に見守り業務を行なってくれる地域の方々など、たくさんの方々が関わってくださるおかげで成り立っています。
県内でも初めての取り組みとなっているこのプロジェクト。
なぜ有田町で立ち上がったのか。そこにはSさんの活躍が欠かせませんでした。

そもそもの背景

佐賀県立有田工業高校は、佐賀県内で初めて”地域みらい留学”に参画した学校です。
”地域みらい留学”というのは、私が所属している、一財)地域・教育魅力化プラットフォームが展開しているサービスで、県外募集を行っている全国各地の都道府県立学校と、都市部を中心に、魅力ある高校に親元を離れてでも進学したい中学生/保護者をマッチングする取り組みです。

この”地域みらい留学”というサービスは、子供たちに多様な選択肢を与えるとともに、意欲ある生徒が全国から集まることによって学校そのものも魅力的になっていく、結果としてその高校が所在する地域も活性化していく、という三方よしの素晴らしい取り組みだと思っています。
有田工業高校は、伝統ある有田焼の産地である有田町に所在していることから、セラミック科/デザイン科という特徴ある学科を有しており、この特徴的な学科を武器に県内で先駆けて、全国からの生徒募集を始めました。

2022年度には6名の生徒が全国から入学するなど着実に成果が上がっていたのですが、一方で課題も明らかになってきました。
それが、「住まいが足りない」ということでした。
有田工業高校には寮が備わっておらず、地域のアパートやゲストハウスのオーナーに協力いただいて住まいを確保していたのですが、それでも足らなくなり、募集を続ける上では、生徒が安心して暮らせる住まいの確保が急務となりました。
そうはいってもすぐに見つかるものでもなく、どうにかできないかと知恵を出し合って白羽の矢が立ったのが、有田町で空き家活用などに取り組んでおられたSさんでした。

Sさんとの関わり

Sさんは、有田町で空き家活用などに取り組んでおられる方なのですが、他にも様々な取り組みを広めておられていて、当時は有田町で初めて子ども食堂を立ち上げる、といった活動もされてました。
そういったご縁で、有田町に暮らす高校生を支援する、ということに対しては意欲を持ってくださっていて、高校生の住まいが足りない、という課題に対しても、できる限りのことはしたいと思ってくださっていたようでした。

ただ、Sさんとしてはできる限りのことをしたいと思っていたものの、いざ実際に高校生の見守りをしたり寮などの住まいを運営する、というのは少しハードルが高いと感じておられたようです。
ご自身が経営されているNPOにおいて、他の役員さんや会員さん含め、応援したいものの、NPOの活動領域をあまりに超えている、現実的に考えると自分たちの事業として持つことは難しそう、という意見が出ていたそうです。
子供たちに安心な住まいを提供する、というのは片手間でできることではなく、そのように考える方々がいらっしゃるのも自然なことだと思います。
このまま行くと、解決すべき問題ではあるものの、解決に向けて取り組める人がいない、という事態に繋がりそうな状況となっていました。

訪れた転機

Sさんとしても、取り組みたいけれど自分が主導権を握るのは難しいと思っていた折、偶然私とSさんで話す機会があって、その際に、この話になりました。
そこでSさんの悩みを聞いた私は、一財)地域・教育魅力化プラットフォームのOさんとつなぐことで、何か化学反応が生まれるかもしれない!と思い立ちましたw

(Oさんとのエピソードについてはこちら)

結果として、主導者にはなれないけど現地のコーディネートくらいだったら担えそうなSさんと、現地のコーディネートや運営はできないけど全国の知見を集めて全国でも噴出している「住まいが足りない」問題の解決事例を作るためにある程度の予算を投じることはできそうなOさんとのマッチングがうまくいき、一財)地域・教育魅力化プラットフォーム主導で、有田町に高校生のためのシェアハウスを立ち上げる可能性が生まれました。

Sさんが高校魅力化プロジェクトへ”はみ出す”

佐賀県との丁寧な対話も進めながら、また有田町の支援も受けながら、有田町に高校生のためのシェアハウスを立ち上げるプロジェクトの形が定まってきました。
また、対話を進める中で、次の1年生のためにシェアハウスを作ることも大事だけれど、すでに来てくれている高校生たちのための支援も合わせて必要ではないか、という議論になり、シェアハウスを作るだけでなく、有田町に来てくれているすべての高校生のための見守りや緊急時支援のプロジェクトも合わせて立ち上がる話になっていきました。
今回の取り組みは、関わるすべての人たちが「住まいが足りない」ことを問題として捉えながらも、どこか1つの組織だけでは担いきれない、取り組みきれないことで、もしかしたらプロジェクト化しなかったかもしれません。
ですが、関係者同士で対話を重ね、お互いのできること/できないことを出し合い、補い合う関係性を築くことで、結果としてプロジェクト化することができました。
結果として、Sさんは今でも”ありこや”というシェアハウスの運営と、見守り事業の運営に携わってくださっており、自らの領域から”はみ出す”活動をしてくださっています。

Sさんがいてくださったからこそ、関わりしろを諦めずに探し続けてくれたからこそ、結果として佐賀県とCPFという二つの組織の”協働”につながった、”ものがたり”です。
ご覧いただき、ありがとうございました。

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