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UXってなんですか?

今週もウェブ解析のnoteをご覧いただきありがとうございます。
最近、「中の人」はMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)と呼ばれる戦略上位概念の策定の依頼を受けていました。
こういったハイコンセプトになる部分を実装するには、そのハイコンセプトを商品やサービスといった形に具現化する必要があります。そして、商品やサービスを通してユーザーにハイコンセプトを実感してもらうためにはUXやCXといった観点が欠かせないと思っています。
コンセプト開発したところで、それが実感として届かないことには自己満足で終わってしまいますからね。
と、いうことで今回はUXについて改めて考えてみようと思います。

UXの定義について

UX(User eXperience)ってそもそも何なのよ。というところからおさらいしていきたいと思います。

公式テキストの定義

ウェブ解析士認定試験の公式テキストの記述では以下のように定義されています。

「エクスペリエンス」とは、ユーザーやカスタマーが製品・サービスを利用したり購入したりするときの体験です。
ただし、本テキストでは、事業の価値を高めるような「感動体験」をエクスペリエンスと定義します。よりよいエクスペリエンスを提供できない事業は存続できません。
ここで取り上げるエクスペリエンスには、次の2種類があります。
•「 ユーザーエクスペリエンス(UX:User Experience)」は、ウェブサイトやアプリなど部分的な操作画面の利用者としての体験です。なお、UXと混同されがちな「ユーザーインターフェイス(UI:User Interface)」は、ユーザーがウェブサイトやアプリで情報をやりとりする接触面を指します。
•「 カスタマーエクスペリエンス(CX:Customer Experience)」は、顧客の認知から購入や利用までの、一連の流れの中で得る体験です。CXを高めることで、顧客はエンゲージメントを感じ、さらなる利用や率先した共有・拡散へとつながります。

『ウェブ解析士認定試験公式テキスト2023』

公式テキストの見解では、ウェブサイトやアプリ上での体験をUX、顧客の行動フロー全体で得る体験をCXと定義するそうです。重要なのは、事業価値を高めるような「感動体験」でなくてはならない点ですかね。

ISOによる定義

次はISO(国際標準化機構)によって定義されたUXについてみてみましょう。

システム、製品、サービスの使用または使用の予測から生じるユーザーの知覚と反応を指す。
注釈1:ユーザーの知覚と反応には、使用前、使用中、使用後に発生するユーザーの感情、信念、嗜好、知覚、快適さ、態度、達成感などが含まれる。
注釈2:ユーザーエクスペリエンスは、システム、製品、サービスのブランドイメージ、プレゼンテーション、機能性、システム性能、インタラクティブな振る舞い、および支援能力に起因する。それはまた、ユーザーの以前の経験、態度、スキル、能力、人格、および使用文脈によって引き起こされる心理的および身体的な状態からも生じる。

ISO9241-210:2019

ISOの定義上でUXとは、ウェブサイトやアプリに限らず、システム・製品・サービスといった商材になり得るもの全てを通した体験を指しています。
また、特徴的なのは「使用の予測」からの体験でさえもUXな点ですね。

UX提唱者が定義するUX

最後に見ておきたいのは、UXを提唱したドナルド・ノーマン及びヤコブ・ニールセンによるUXの定義です。

UXとは、エンドユーザーと企業およびそのサービスや製品の相互作用における、あらゆる状況を包括したものである。

https://www.nngroup.com/articles/definition-user-experience/

これだけではよく分からないので、彼らが定めるUXの要件を見てみましょう。

優れたUXの最初の要件は、お客様の正確なニーズを煩わしさや手間をかけずに満たすことです。次に、所有して使用することが楽しく、嬉しいと感じる製品を生み出すシンプルさとエレガンスが求められます。真のユーザーエクスペリエンスは、単に顧客が望むものを提供したり、期待した機能リストを提供するだけでなく、はるかに進んだものです。

https://www.nngroup.com/articles/definition-user-experience/

ニーズをストレスなく満たすことがUXの最低条件であり、期待以上のものを提供することが必要だと言っていますね。
さらに、”製品を生み出す”という言葉が出てくる通り、上述した公式テキストの「ウェブサイトやアプリの操作上の体験」、ISOの「商材を通した体験」よりも範囲が広く、バリューチェーン全体を包括しています。
また、「エンドユーザーと企業」という言葉から察するにユーザーとの関係=カスタマー・リレーションシップまで影響を及ぼすものだと考えられます。かなり広義的ですね。

それぞれの定義

上記した3つの定義を「中の人」なりに解釈して図式化したものが下図になります。旅行業を例としてみました。

公式テキストの記載の通りいくと、旅行を予約する際の、旅行サイトやアプリ上での体験という狭義でのUXとなりますが、ISOの範囲でいくと、商品を利用する予測(=ワクワク)から商品利用後の実感までを含むので顧客の活動全般を包括します。さらに、ノーマンとニールセンの定義では企業とユーザーがインタラクション(相互作用)を及ぼすので企業のバリューチェーンまで含めるというかなり広義でのUXとなりますね。
こうしてみると、ISOの定義は公式テキストで言うところのCXに近い気がしますね。

部分最適と全体最適

広義〜狭義までさまざまな定義があるので、議論する際に注意すべきは自分達はどこのUXを向いているのかと言う点ですね。
ウェブ解析を行う際に決める「スコープ」を持つと言うことですね。
公式テキストではスコープについて下記の様に記しています。

スコープ(対象範囲)とは、解析対象の範囲を指します。オンラインに加えオフラインにもスコープが存在していることを意識し、限られた時間の中で必要な範囲に集中して解析します。
スコープの設定が不十分だと、不要な範囲のデータを収集して適切な解析ができなかったり、入手データの偏りが発生したりするなど、目的のデータが適切に取得できなくなります。

『ウェブ解析士認定試験公式テキスト2023』

ノーマンとニールセンの定義はちょっと広すぎるので、一旦置いておくとして、ISOの定義を便宜上CX、公式テキストの定義をUXとしましょう。
CXはUXなしでは成り立たないですし、UXはCXを意識しないことにはチグハグな体験設計になってしまいます。
CXを最適化することは全体最適につながり、UXを最適化することはすなわち部分最適と捉えることができるでしょう。
全体最適と部分最適を行き来しながら、UXないしCXを設計していくことが「事業価値を高める感動体験」を提供することに結びついていくのだと思います。

まとめ

各定義の引用だけでそれなりの文字数になってしまったので、今回はこの辺りで留めておきましょう。
私たちウェブ解析士がUXと言う場合、ウェブサイトやアプリでの体験を指すことが多いですが、国際的な定義ではウェブサイトやアプリの使用前から使用後までを含めてUXといいます。そして、UXという概念を提唱したノーマンとニールセンによれば、それは企業と顧客との間でインタラクションする…すなわちCRMも絡むような壮大なものであるのだそうです。
UXを取り扱う際はスコープを持って、部分最適と全体最適を行き来するような取り組みが必要になってきます。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
なんだか今回は大学のレポート課題のような記事になってしまいましたね。笑
それよりも、個人的に嬉しいのが、この記事で50週連続の投稿となります。継続は力なりなんて言いますが、よく続いたものですねぇ。目標としている1年継続=52週まであと2つです!変わらず応援してくださると泣いて喜びます。
それでは、また来週お会いしましょう。

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