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DAGMAR理論を用いてマーケティングを数値化する。

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
「中の人」がマーケティングに携わるようになって、最初の頃に読んだ書籍のひとつに丸井達郎氏の著書『数字指向のマーケティング』という本があります。
今回は、その数字思考のマーケティングを実装するためにDAGMAR理論と併せてご紹介しようと思います。

数字思考のマーケティングとは

マーケティングって華のあるようなイメージとは裏腹に、地道で長期的な活動になることが多いです。そんな活動の中で、目標を定めて成果を正確に判断するために販売活動をフェーズに分け、各フェーズでの重要指標を作るというのが「数字指向」です。

BtoBであれば、こんな感じでしょうか。
このようにフェーズ毎に数値化して測るものを設定することで、現状把握やボトルネックの発見、目標設定から施策の効果測定まで数字で管理することができるようになります。

DAGMAR理論とは

さて、上記の数字指向をマーケティングに実装するために有用なのがDAGMAR理論です。DAGMARはDefining Adverting Goals for Measured Advertising Results の単語の頭文字をとった略語となっています。日本語的には「広告効果を計測するために、広告の目的を定義する」となりますね。
DAGMAR理論では売上につながるコミュニケーション・プロセスを5段階に区切り、ひとつひとつクリアしていくことで成果につながるとする考え方です。コミュニケーション・プロセスに応じて5段階のコミュニケーション目標を設定して、施策実行前と後で数値を計測することで、施策の効果を知ることができます。
DAGMAR理論で用いられる5段階のコミュニケーション・プロセスは「認知」「理解」「好意」「トライアル」「レギュラー」とされています。
(「未知」「認知」「理解」「確信」「行動」とする場合もあるそうです)

認知フェーズ

最初はどんな商品・サービスでも知ってもらうことから始めますよね。
「中の人」がマーケティングに携わり始めたばかりの時、とある大手広告代理店の人から「知られていなければ、存在しないのと同じ」という言葉をもらったことがあります。DAGMAR理論ではこの考え方こそ重要なものになります。ブランド・カテゴライゼーション上で「知名集合」に入ることを目指します。
このフェーズでの重要指標は「認知率」ですね。一般的には認知率60%を目指すと言われています。「大体の人が知っている」という状態を作り出すのがこのフェーズの目的になります。そのために多くの企業が少なくない広告投資を行います。

理解フェーズ

知ってもらうだけでは、まだ足りません。ブランド・カテゴライゼーション上の「処理集合」に入り込むために、どんな会社なのか、あるいはどんな商品・サービスなのかを理解してもらう必要があります。
以前、日清紡ホールディングスのTVCMで「日清紡〜♪名前は知ってるけど〜♪日清紡〜♪何をやってるかは知らない〜♪」というやけに耳に残るものがありましたよね。理解度が少ないことを逆手に取ったものだと思いますが、実際に購入してもらうには何をやっているか知ってもらわないことには始まりませんよね。
このフェーズの施策を評価する場合、単純に理解度≒理解している人数で計測するものではありません。コミュニケーション・コンバージョン・レートという指標を用います。

コミュニケーションCVR=[理解度]÷[認知率]

といったように、知っている人のうちどれだけ理解してくれているかを測ります。知名度が高ければたくさんの人が名前を知っているので、「イメージできる人」の数も自然と増えるものです。なので、理解度の数字が高くなるのは当たり前です。逆に、低ければ理解度も低くなる。
これでは、理解度を上げるため施策の実力が測れないので、知名度を分母にすることで、知名数が少なくても評価することができます。この数値は絶対評価ではなく、競合との相対評価で測ります。というのも、コミュニケーションCVRの平均値は業界により差異があるそうです。なので、業界平均値よりも高いのか低いのかを判断材料にするそうなのです。もし、業界平均よりも低い場合、「知名度の割に理解が追いつかない」という状態なので施策の見直しが必要になります。

好意フェーズ

商材を理解してもらったら、次は好意を持ってもらうことが購入につながりますよね。もっというなら、ちゃんと記憶してもらうことです。ブランド・カテゴライゼーションでいう想起集合に入ることが求められます。
しかし、困ったことに好意度というのはそう簡単に上下しないそうなんです。人に例えてみるとわかりやすいですよね。第一印象はそう簡単に覆りませんし、無関心な人を好きになるってよっぽどのことがない限りあり得ないと思いませんか?
なので、認知フェーズでのアプローチである程度好意を持ってもらえるような施策が求められます。
さて、この好意度を測る指標も単体では測りません。
この好意度は理解度と組み合わせることで測るそうなんです。というのも、理解しているのに買わない人を測る指標にするのだそうです。その指標が、コミュニケーション・リテンション・レートというものです。計算方法は以下の通りです。

コミュニケーション・リテンション・レート=[好意度]÷[理解度]

この数値が低い場合、理解しているけど買わない人=好意が持てない人が多いことを意味します。その場合は、ターゲットの見直しや、ターゲットが持っている評価基準を見直す必要があります。

トライアルフェーズ

好意を持ってもらえたら、お試し購入をする可能性が高まります。
実際に一度でも買ったことがある人を数値化したものが普及率です。普及率はその先の施策の判断に影響します。例えば、イノベーター理論と照らし合わせて、キャズムとの位置関係で「新しさ」を訴求するのか「信頼感」を訴求するのかの判断ができたり、レイト・マジョリティに到達していれば成長戦略からの切り替えが必要だと判断できたりします。
ただし、このフェーズで満足してもらってはLTVを伸ばすことができません。むしろこのフェーズにいる人たちは1回しか買ってくれなかった=試した上で買わないことを判断した人たちです。最後のフェーズであるレギュラーへのリテンション・レートを上げるためには製品分析や競合分析を行なっていく必要があります。

レギュラーフェーズ

レギュラーフェーズが目指すべき到達点です。常に買い続けてくれるという顧客層になります。レギュラー顧客を分析することでペルソナを作成することができるので、上記の4つの段階での施策にも影響を与えることができます。
トライアルフェーズからレギュラーフェーズへの意向度合いを、リテンション・レートで計測します。リテンション・レートは以下の式で求めます。

リテンション・レート=[レギュラー]÷[トライアル]

リテンション・レートはバラエティ・シーキングの起きやすさなど業界の特徴に左右されますので、業界の平均を基準に検討するのがベターです。
リテンション・レートが低い場合、購入した上で「もう買わない」と判断されてしまっているということですので、商品やサービスの見直しが必要です。その場合、自社商材の評価のみで決めず、競合との相対評価で検討を進める方が良いとされています。例えば、飲料の場合「美味しかったですか?」と聞いてYESと答えても、継続購入にならない可能性があります。なぜなら「美味しかった(けど、あっちの方が好みに合ってるな)」という場合が考えられるからです。

まとめ

DAGMAR理論は「中の人」的にAIDMAモデルの実装版だと思っています。効果測定をできるようにしたもので、数値化された指標は今後の施策を検討する際に役に立ちます。さらに、自社の販売プロセスに落とし込んでいくのが「数字指向のマーケティング」です。まずは、DAGMAR理論に則って計測を始め、徐々に自社の販売プロセスに合わせて理解を深めていくのが良いかもしれません。DAGMAR理論は元々は広告の効果検証のための理論です。ウェブ広告に触れる機会の多いウェブ解析士なら、覚えておいて損はないと思います。
認知目的の広告なら認知率で測る、リピーターを増やす目的ならリテンション・レートで効果を測る。といったように、広告の目的設定に対して、評価指標を定めることで、広告主とのコミュニケーションが円滑になると思います。

DAGMAR理論のフェーズと指標

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
またもやネタ切れになりかけている「中の人」です。最近、お陰様で日々の業務が忙しくなりつつあり、インプットの総量が落ちているのが原因です。
とは言いつつ、今回は少しウェブ解析士らしい記事が書けたような気がして満足しています。(笑)
さて、今日からまた来週分のネタ探しです。
来週の月曜日にはネタが降ってきていることを祈ります。
それではまた来週お会いしましょう。

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