今までとこれから:「国宝 東京国立博物館のすべて」(2022)
会期、2ヶ月
この国宝展のために、どれだけの学芸員、博物館職員、文化庁職員、その他あらゆる関係者が心血を注いだのだろうと思うと、ちょっとめまいがする。
2022年の10月から12月の2ヶ月間、東京国立博物館の所蔵するすべての国宝89件と、関連資料あわせて延べ150件が展示される一大特別展が開かれた。
この2ヶ月間を、短い・長いのどちらに感じるだろう。
私は当初「えー、会期短いなぁ」と思っていた。しかも、出不精なもので友人から声をかけられて初めて行こうと思ったほど意識は低かった。
なお、誘ってくれた友人は九州からの参加だ。気合いの入れようが違う。
私はその感覚の差を埋めたく、何を思ったか「国宝の展示・公開の規則」について調べ始めた。
2018年「取扱要項の改訂」
国宝や重要文化財の公開と取扱要項の改訂前は、おおよそ以下の通りだった。
2018年、ニーズと実態に沿って文化庁が大きく改訂した。
国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項(平成30年1月29日改訂 文化庁)
改定の概要としては、石・土・金属など、公開による劣化が少ないとされる材質でできた作品は公開延べ日数が60日以内から150日以内に緩和され、油画や染め物などは展示の際の照明の明るさには制限がかけられた。
日数は劣化具合や材質ごとに30日・60日・100日・150日と指針が示さている。
想像でしかないけれども
私は学芸員や文化財保護に関する知識がほとんど無いため、完全に想像だが、この取扱要項に沿って考えると、なかなか気が遠くなる。
国宝には土偶や刀などもあるが、もちろん書画も多い。2ヶ月間の会期で、けっこうな作品が「年間延べ日数」を使い果たす。
また、150日以内とされたものでも、その期間ぶん定期的な点検も増える。
今回の国宝展は、展示物の半分以上が国宝だ。過去の私みたいな大学生が気軽にスタッフとして応募できる展覧会とは違う。
今回「東京国立博物館の所蔵するすべての国宝89件」の展示を実現するために、何年前からプロジェクトを動かしていたのだろう。
なんだか流し見するのは失礼な気さえして、観賞用のグラスを用意して当日に臨んだ。
鑑賞と物語
2014年の国宝展は「信仰・祈り」をテーマに構成されていたのに対し、今回は所蔵展に近いため、ジャンルごとの鑑賞がメインになる。物語性という面ではあまり期待をせずに列に並んだ。
ただ、それも中の人には見越されていた。「これまでに国宝とされてきたもの」と「これから国宝になるかもしれないもの」を並べ、最後には東京国立博物館の創設と歴史を綴ることで、全体がひとつの物語としてまとまっていたのだ。
150周年という大きな節目にふさわしい、大展覧会の無事の終幕に、大きな拍手を送りたい。関係者の皆様、お疲れ様でした。
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