【小説】おらく 1/5
1 食卓に、私の知らない顔がいた。
正確には、完全に知らない人間、というわけではない。どこか親しみの感じられる、他人とは思えない誰か。まるでずっと前から我が家の一員であったかのように、朝の風景に溶け込んで味噌汁を啜っていた。父も母も妹も、私以外の誰もが、その誰かを当然のように受け入れていた。
「やあ、ヒカルさん。おはよう。今日は寝坊しなかったんだね」
その誰かは、朗らかに微笑んで私にそう言った。見れば見るほど不思議な風貌をしている。目じりのしわや疲れた背中から、年齢は四十