特撮系作品に登場する特撮オタクたち~R/Bの愛染マコト、平ジェネFOREVERのアタル、SSSS.GRIDMANの新条アカネ

 1月16日は116でヒーローの日らしいです。その理屈なら11月6日もヒーローの日になりそうですが、定めた人はそのあたりどう折り合いをつけるんですかね。

 せっかくなので、最近よく見る”特撮系作品に登場する特撮オタク”というキャラクターについて書いてみることにしました。

 今回扱うのはタイトルにもある通り、

ウルトラマンR/Bに登場した愛染マコト

仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVERに登場した久永アタル

SSSS.GRIDMANに登場した新条アカネ

 の三人です。

作品内にいながらその作品のオタクであるキャラクター

 とはいえいきなり三人の紹介から始めるというのも乱暴なので、前提としてもう少し広い話から入ろうと思います。

 今回取り上げる三人を見て僕が特殊だと感じたのは、ある作品に登場するキャラクターでありながら、その作品と同じジャンルの作品を愛好しているということです。

 もっと大雑把に言うなら、その作品自体を外から鑑賞するような視点を持てるキャラクターというくくりになります。かなりメタ的な存在です。僕はこういうのが大好物です。

 しかし、最初に珍しい存在だなあと感じはしましたが、よくよく考えてみると実は結構ありふれたキャラクター設定にも思えます。

 例えば、いわゆる異世界転生ものの主人公は、こういった視点を持つキャラクターであることが多いのではないでしょうか。中世ファンタジー世界に飛ばされた主人公が、そこと似たフィクションの知識を使って順応していく、というようなものを結構見た覚えがあります。これは僕の主観によるものなので、間違っていたらごめんなさい。

 ともかく、その作品を見る人間と同じ視点を持っているというキャラクター設定は、そこまで珍しくないのです。作品を見ている人間が感情を移入しやすくするための、古典的な戦法なのだと思います。

 それでは、上記の三人のどこを特殊だと感じたのかと考えたところ、一つ分かりやすい共通点がありました。





 注意:この下ちょっとネタバレ





 この三人はみんな、ヒーローに倒される側、敵役なのです。

ダメな部分を煮詰めたオタク

 敵役のキャラクターを作るときにまず考えるであろうことの一つとして、”倒したときに爽快感があるか”があります。特に特撮系作品、ヒーローものにおいては欠かせない要素だと言えるでしょう。もちろん敵を倒した後にもやもやが残るようなヒーローものも片手では数えられないくらいは思いつきいますが、一般的な考え方として。

 そんな敵役に、その作品を見る人間と同じようなキャラクターを当てはめるというのは、奇妙なことに思えます。主人公が自分と同じようなキャラクターである作品を見るのは、追体験をして快を得られるからという簡単な説明ができそうですが、自分と同じような敵役が主人公に倒される作品の楽しみは、どこにあるのでしょうか。

 ここからは僕の妄想になっていきます。

 おそらくオタクの敵役は、それを見る人々が”その作品のオタクの悪い部分”を強調した形で描かれているのだと思います。オタクの主人公は、そのオタクであるという属性をうまく用いて活躍することで、オタク属性の善い部分を強調しています。一方で今回の三人は、皆大なり小なりオタク属性の負の側面、オタクの悪い部分を強めた人々でした。

 敵役が悪であればあるほど、勧善懲悪の物語は面白くなります。もちろんこれは物語というものを単純化した上での話になりますが。そこで、敵役がいかに悪であるかを分かってもらために、見ている人間の属性を借りてきたのです。

 もっととげとげしい言い方をするならば、見ている人たちへの悪口のようなものです。しかしそれを聞いた人たちは、大体「そういう人たちも確かにいるよね~~」と自分ではない人間のあるあるネタのようなものとして消化してしまいます。よってそこには不快感はあまりなく、面白さが残るという寸法です。ちょうど綾小路きみまろが漫談で、聞いているおじさまおばさまをディスるようなことを言うようなものです。

 とまあ、ここまで勝手なことを書いてきましたが、僕自身この考え方はそこまで正しいものだとは思っていません。しかし、そういう視点で作品を見るのもまた面白いのではないでしょうか。

 ではここから、三人のキャラクターと、悪いオタクとしての側面を紹介していきます。本題までが長い。




注意

 ここから先の話は、ウルトラマンR/B、仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER、およびSSSS.GRIDMANのネタバレを含みます。

 SSSS.GRIDMANの話の中で仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVERの話に触れるというようなこともあるので、ネタバレされたくないものを読み飛ばしても食らうおそれがあります。





愛染マコト(ウルトラマンR/B)

 愛染マコトは、2019年1月の現時点で最新のウルトラマンであるウルトラマンR/B(ルーブ)に登場する、簡単に言ってしまえば悪のウルトラマンです。2つ前のウルトラマン:ウルトラマンオーブが悪堕ちしたような見た目の、ウルトラマンオーブダーク(本人曰くウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ)に変身します。

 ウルトラマンロッソに変身する湊カツミ、ウルトラマンブルに変身するイサミの主人公兄弟と戦うのですが、その戦う理由が最大の”悪いオタク”の要素でしょう。

 雑に彼の言っていることを要約すると、主人公二人はウルトラマンとしてないっていない! とのこと。ウルトラマンはかくあるべきだというこだわりがあり、それに反するような行動をしている主人公二人が許せないというような感じ。二人がいかにウルトラマンらしくないかを言うために、ウルトラ通信簿なるものまで作ったり。

 そのこだわりに、ウルトラマンを見ている人が言いそうなことと被る部分が多いのです。挙げればきりがありませんが、例えば「ウルトラマンがベラベラしゃべると神聖さが失われる」みたいな。

 そういった、「最近の作品はこういうところがダメだ!」と言ってしまうオタクの性を強調したキャラクターでした。かなりコメディチックに描かれていて、後の二人ほどメタ的な存在ではありません。個人的にはR/Bの中で一番好きなキャラクターです。

 EXPOのステージに再登場してくれたのがめちゃくちゃ嬉しかった。

久永アタル(仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER)

 次のキャラクターは、映画仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVERに登場した久永アタルです。この作品はかなり特殊で要約するのが難しいのですが、あくまで僕の解釈で紹介を進めます。探せばいろんな考察が出てくるので、見てみると楽しいです。

 久永アタルは、平成仮面ライダー一作目の仮面ライダークウガの放送開始日に生まれ、2018年で高校生になっています。物心ついたころから平成仮面ライダーを見、ライダーの変身アイテムやフィギュア、お面に至るまで収集し、部屋に飾っている、典型的な平成仮面ライダーオタクです。

 基本的な設定は、平成仮面ライダーを虚構として見ている、我々と同じ世界の住人、ということになっています(後々そこはあやふやになりますが)。彼が現実で仮面ライダーに会いたいと願ったことが物語を動かすきっかけとなるのですが、そのあたりは是非劇場に行って確かめてほしいところです。流石にまだ1月の間はやっているはず。

 ともかく、彼の悪いオタクとしての側面は、仮面ライダーを辛い現実からの逃避先として使っていたことが大きいと思います。これは三人目の新条アカネにも見られた要素ですが。

 もちろん、現実が辛くなったときに、フィクションを心の癒しとするのが悪いことだと言っているわけではありません。しかし彼の場合は、それが10年以上続いていた点、そしてその間現実の辛いこと(両親が自分を見てくれないこと)に向き合わなかった点が、作品内で強調されていました。そして彼は、その弱さにつけこまれ、主人公常盤ソウゴ(仮面ライダージオウ)、そして桐生戦兎(仮面ライダービルド)たちと敵対する存在になってしまいます。

 上で書いたこととは矛盾しますが、彼は完全な敵役ではありませんでした。ティードという、敵の大ボスに洗脳されたことで、敵役に回ったというだけで、それがなければ主人公と敵対はしなかったでしょう。仮面ライダーオタクが仮面ライダーを倒そうとするのも変な話です。

 しかし物語の中で、先ほど書いた歪みの部分と向き合う場面があります。そしてそのきっかけを与えたのは、主人公常盤ソウゴら仮面ライダーたちでした。後に主人公に正される歪みを持つ存在と考えれば、勧善懲悪の構造とそれほど大きく離れないのではないでしょうか。

 とはいえ、平ジェネFOREVERは複数の解釈ができる非常に多重な作品です。見る人によって感想も大きく変わるでしょう。というわけで、まだ見てない人は今すぐ見てほしいです(結局布教)。

新条アカネ(SSSS.GRIDMAN)

 最後の一人は、SSSS.GRIDMANに登場した新条アカネです。この作品だけ(特撮作品が元になっているとはいえ)アニメ作品。なのでこの話のタイトルは特撮”系”作品としています。

 彼女も非常にメタ的なキャラクターとして描かれていました。アニメの中盤で、物語の舞台であるツツジ台という閉ざされた街を生み出した人物であることが明かされます。彼女は本来もっと広い世界(おそらく現実世界)の住人であるのに、そこから目を背け自分に都合の良い理想郷のツツジ台を、自分の好きな怪獣によって支配していたわけです。

 彼女のオタク要素は、愛染マコトと久永アタルを混ぜたようなようなものでした。ウルトラマンのような巨大特撮に対して、「ヒーローとサイズ違いの怪獣は邪道」「怪獣が出ない回は作っちゃダメ」というようなこだわりを持っていること、そしてフィクションの世界を現実の逃げ道として用いること、などが共通特徴として挙げられます。

 とはいえ、二人と確実に違うところもあります。それは彼女が、作り手側のような要素も兼ね備えているということです。彼女は自ら怪獣を造りツツジ台を自分の理想の形に作り変えていました。特撮作品を消費するオタクであることは確かですが、ツツジ台もフィクションの世界だとすれば、そこに対するスタンスとしては、制作者としての立場からくるものもあったと思います。

 最終的には彼女も、主人公響裕太(=グリッドマン)たちに後押しされ現実と向き合うことになります。序盤は純粋な敵役に感じられる言動をしていましたが、終盤でアレクシス・ケリヴなるラスボスににそそのかされていたことが明かされます。とはいえ彼女を悪ではないと言うのも少し無理があるように思えますが、愛染マコトと久永アタルのどちらに近いかといえば、おそらく後者になるでしょう。つまり、勧善懲悪の爽快感のために悪いオタクの側面が用いられたのかというところに関しては、少し微妙な感じ。

 SSSS.GRIDMANは、(少なくとも現時点では)prime videoで視聴可能で、しかも全12話と他の2つのコンテンツに比べれば短いので、見ていない人は見てみると良いと思います。

おわりに

 書き始めたのは確かに1月16日だったのですが、書いているうちに日付を超えそうです。文章が長くて申し訳ありません。

 また、勢いで書いているので誤字脱字がたくさんあると思います。事実と異なるところもあるかもしれません。そういう「ここおかしいんじゃない?」みたいなところは、指摘していただけるとありがたいです。

 まとめとしては、こういう観点で物語を見るのも面白いんじゃない? という雑なもので良いと思います。正しいか間違っているかはともかく、少なくとも僕は、この観点でそれぞれのキャラを考えたことで、約5000字もの文章を書けるくらい楽しむことができました。

 まとめたところで、この長い話を締めさせていただきます。呼んでくださり、ありがとうございました。

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