人間をペット扱いする親たちへ

 ネット上にはペットの写真や動画が氾濫している。
 それらの多くは飼い主が撮影し、アップロードしている。
 同様に、乳幼児や児童の写真や動画も多い。
 それらの多くは親が撮影し、アップロードしている。

 後者を見かける度に疑問に思うことがある。
 彼らは被写体に形だけでも許可を取っているのだろうか?
 一度でも曲がりなりにも許可を取ろうとしたのだろうか?

 無論、ペットは人間ではないのだから許可を取る必要はない。
 しかし、乳幼児や児童は明白にペットではないし、人間であり、自然人である。
 それならば、被写体の許可が取れない以上、本来は撮影さえすべきでないはずだ。
 ましてや、全世界に向けて公開することなど道徳的にも法的にも許されない行為である。

 たとえば、己の友人や配偶者の寝相や仕草や習癖を勝手に撮影してアップロードしたとする。
 これが肖像権の観点から許されないことであることは容易に理解できるだろう。
 であれば、この守られるべきプライバシーが乳幼児や児童には事実上認められていないことになる。

 これに対して、あなたは言うかもしれない。彼らの許可が取れないのだから仕方ないと。
 または、現時点で彼らには判断能力や意思能力がないのだから仕方ないと。
 または、のちに追認されることを見込んでいるから仕方ないと。のちに抗議された場合のみ対応すると。
 では、問いたいのだが、あなたは『道徳的にも法的にも当人の同意が必要な行為』を当人の同意なしに実行する人間なのか?
 その人の許可が取れないからと、現時点でその人に判断能力や意思能力がないからと、その人が後から追認するだろうという希望的観測をもって実行する人間なのか?
 ネット上に公開するような不可逆的な行為を、原状回復が不可能な行為を当人から抗議される可能性を打ち捨てて己の意思と欲望だけで実行する人間なのか?

 そもそも、彼らの親はなぜ勝手に彼らを撮影して不特定多数に向けて公開するのだろうか?
 可愛らしい、愛くるしい様子を皆と共有するというペットの飼い主と同じ論理をまさか人間に向けて適用しているのだろうか?
 または、己の生み出した人間を己の所有物扱いし、イイネを貰い、自己の承認欲求を満たしたいのだろうか?
 このような人間軽視、人間侮辱で自分勝手で利己的な振る舞いを我々人間は許すべきだろうか?

 乳幼児や児童の写真や動画を難なく受け入れ、または微笑ましく思うことは非常に危うい。
 乳幼児や児童が人間扱いされていない現実を直視せずに無批判でいることは人間侮蔑である。
 一部の人間に対する重大な道徳的違反、法的違反を見過ごすことは人間差別に他ならない。
 我が子を人間扱いせず、ペットのように扱う親たちは人間差別主義者として糾弾されるべきである。

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