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資金調達_#5:「INO」の基礎知識と法規制

INO(Initial NFT Offering)とは、NFT(Non-Fungible Token)を通じて資金を調達する方法です。NFTとは一般に、ブロックチェーン上で発行されるトークンのうち、トークン自体に固有の値や属性をもたせた代替性のないトークンのことを言います。

アートやゲーム内アイテムなどのデジタル資産を表すトークンとしてNFTが発行される形であれば、基本的に、適用される厳格な規制はありません。しかし、NFTで発行するからと言って、必ずしも有価証券や暗号資産に該当しないというわけではありません。INOを実施するには、他の規制の適用を受けないかどうかが重要となります。

NFTが以下に該当する場合は規制の対象となります。

(1)有価証券
(2)前払式支払手段
(3)暗号資産・電子決済手段
(4)為替取引

この単元では、NFTが上記の定義に該当しないのはどのような場合かを解説することで、INOの可能性について理解を深めていきましょう。

有価証券に該当するかどうか

「「STO」に関わる法規制」の単元でも触れた通り、有価証券に関する規制が定められている金融商品取引法はかなり複雑なものとなっています。まずはざっくりと、投資家から資金を受領し、その資金を元手に事業を行い、事業の収益を投資家に分配する場合には、有価証券に該当する可能性が高いとイメージしてください。このようなトークンを発行する場合には、専門家に相談するなどして、有価証券該当性を慎重に検討してください。

逆に言うと、NFT保有者に対して、事業の収益を分配するというものでない場合には、基本的には有価証券には該当しません。

前払式支払手段に該当するかどうか

前払式支払手段とは、いわゆるプリペイドです。法的には以下の要件を全て満たすものが該当します。

(1)金額等の財産的価値が記載又は記録されること(価値の保存)
(2)金額又は数量等に応ずる対価を得て発行される証票等、番号、記号その他の符号であること(対価発行)
(3)発行者又は発行者の指定する者に対する代価の弁済に使用することができるもの(権利行使)

一般的なNFTは代替性がないことから、支払手段としては機能しないため、前払式支払手段には該当しないと言えます。しかし例えば、プラットフォーム内でNFTを商品等の購入の対価として使用できるような仕組みにしている場合には、前払式支払手段に該当する可能性も出てくるため、注意が必要です。

暗号資産・電子決済手段に該当するかどうか

NFTは代替性がないことから、一般的には支払手段としての経済的機能を有しておらず、暗号資産や電子決済手段には該当しません。しかし、NFTだからといって、絶対に暗号資産や電子決済手段に該当しないというわけではありません。

例えば、NFTを大量に発行して、NFT○個で○円分などというように、代価の弁済(代金の支払いなど)のために、NFTを使用できる状態だと、暗号資産・電子決済手段に該当する可能性が出てきます。なお、暗号資産と電子決済手段の違いは、基本的には、法定通貨にその価値が連動しないものが暗号資産であり、連動するものが電子決済手段と理解してください。

具体的にどのような場合だとNFTが暗号資産・電子決済手段に該当しないかを判断する基準として、以下のような目安が金融庁から公表されています。暗号資産・電子決済手段該当性を避けるために、これらの手当を施しておくことが望ましいです。

以下のイ及びロを充足するなど、社会通念上、法定通貨や暗号資産を用いて購入又は売却を行うことができる物品等にとどまると考えられるものについては、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる」ものという要件は満たさない。ただし、イ及びロを充足する場合であっても、法定通貨や暗号資産を用いて購入又は売却を行うことができる物品等にとどまらず、現に小売業者の実店舗・ECサイトやアプリにおいて、物品等の購入の代価の弁済のために使用されているなど、不特定の者に対する代価の弁済として使用される実態がある場合には、同要件を満たす場合があることに留意する。
イ 発行者等において不特定の者に対して物品等の代価の弁済のために使用されない意図であることを明確にしていること(例えば、発行者又は取扱事業者の規約や商品説明等において決済手段としての使用の禁止を明示している、又は、システム上決済手段として使用されない仕様となっていること)
ロ 当該財産的価値の価格や数量、技術的特性・使用等を総合考慮し、不特定の者に対して物品等の代価の弁済に使用し得る要素が限定的であること。例えば、以下のいずれかの性質を有すること
・最小取引単位当たりの価格が通常の決済手段として用いるものとしては高額であること(例えば1,000円以上)
・発行数量を最小取引単位で除した数量(分割可能性を踏まえた発行数量)が限定的であること(例えば100万個以下)
なお、以上のイ及びロを充足しないことをもって直ちに暗号資産に該当するものではなく、個別具体的な判断の結果、暗号資産に該当しない場合もあり得ることに留意する。

為替取引に該当するかどうか

為替取引とは、「顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又は、これを引き受けて遂行すること」です。ざっくり言うと、AさんからBさんに資金が移動するような仕組みになっていると為替取引に該当する可能性が出てきます。

為替取引に該当すると、銀行業や資金移動業のライセンスが必要となります。NFT保有者に対して資金の払戻しを可能とするなど、NFTの移転を通して資金が移動するような仕組みでなければ、通常は為替取引には該当しません。

INO成功の鍵はコミュニケーションと透明性

INOは、基本的には厳格な規制の対象でないため、資金調達側にとってはとても利便性の高い資金調達手法と言えます。ただしINOを実施するには、NFTが有価証券、前払式支払手段、暗号資産・電子決済手段や為替取引に該当しないということをしっかりと確認しなければなりません。

また、2024年4月現在、INOは規制の対象となっていませんが、利用者保護の必要性などはICOと大きく変わるところはありません。悪質な業者が出現し、社会問題化すれば、規制対象となることも予想されます。

INOの健全な発展のため、発行者には利用者との十分なコミュニケーションや透明性の高いプロジェクト運営が求められます。その際にはICOなど他の規制を参考に、発行者と利用者の双方にとってバランスのとれた“あるべきルール”を自主的に構築していくことが重要となります。


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