見出し画像

資金調達_#4:「STO」に関わる法規制

STO(Security Token Offering)とは、法令上、有価証券に該当する権利をブロックチェーン上のトークンとして発行し、その販売を通じて資金を調達する方法です。法令では有価証券に該当するため、その性質上、伝統的な有価証券に対する厳格な規制の対象となっています。

STOなどを含まない狭義のICOと、STOとの大きな違いは、発行するトークンが法令上、暗号資産に該当するのか、有価証券に該当するのかという点にあります。この単元ではSTOの概要について、適用場面が限定されるような例外規定の解説は割愛し、できる限り全体像が分かるように整理して解説します。


有価証券に該当するかどうか

有価証券に関する規制は、金融商品取引法で定められています。有価証券をトークンとして発行する場合にどのような規制が適用されるかについては、独特な用語も複数登場し、例外規定や投資家の人数に応じても異なるなど、かなり複雑なものとなっています。

まずはざっくりと、投資家から資金を受領し、その資金を元手に事業を行い、事業の収益を投資家に分配する場合には、有価証券に該当する可能性が高いとイメージしてください。このようなトークンを発行する場合には、専門家に相談するなどして、有価証券該当性を慎重に検討する必要があります。

1項有価証券と2項有価証券の違い

金融商品取引法では、1項有価証券として取り扱われるか、2項有価証券として取り扱われるかにより、規制の軽重が異なっています。

金融商品取引法2条1項では、株券や社債券など伝統的に紙である証券が発行される有価証券が規定されています。1項有価証券は原則として、厳格な規制が適用されます。1項有価証券をトークンとして発行しても、原則として紙で発行する場合と同様に厳酷な規制が適用されます。

金融商品取引法2条2項では、合同会社の社員権や組合などの集団投資スキーム持分といった必ずしも証券が発行されない権利が有価証券として規定されています。2項有価証券に該当する範囲はかなり広く、投資家が拠出した金銭を用いて行う事業から生ずる収益の配当を受けることができる権利だと、原則として集団投資スキーム持分に該当し、2項有価証券となります。

2項有価証券は、電子的な方法で移転できない形で発行する場合、1項有価証券と比較すると緩やかな規制が適用されます。しかし、この2項有価証券をトークンとして発行した場合には、原則として「電子記録移転権利」に該当し、より厳格な規制が適用される1項有価証券として取り扱われます。

以下では、電子記録移転権利に適用される規制について、解説します。

発行者に発生する届出義務と開示義務

金融商品取引法上、有価証券の募集については原則として、発行者が有価証券届出書を届出しなければならないことになっています。ここでの「募集」とは基本的に、多数の者を相手方として、新たに発行される有価証券の取得の勧誘を行うことです。

具体的には、いわゆる適格機関投資家等のみを対象として取得勧誘を行うプロ向け私募、または、49人以下を対象として取得勧誘を行う少人数私募にあたる場合等を除いて、電子記録移転権利の取得勧誘は金融商品取引法上の募集に該当し、STOの実施にあたり、開示規制を履行する必要があります。

電子記録移転権利は、1項有価証券としての開示規制の対象となるため、原則として、電子記録移転権利の募集を行う場合、発行者に届出義務が発生します。有価証券届出書の作成・提出義務が課され、その後も事業年度ごとの有価証券報告書の提出等、継続開示義務を負うことになります。

どんな場合、第一種・第二種金融商品取引業の登録が必要か

電子記録移転権利の発行者自身が自己募集を行う場合に関しては、原則として、第二種金融商品取引業の登録が必要となります。この点は、2項有価証券と変わらない点です。

発行者以外が電子記録移転権利を業としてその売買等や募集の取扱い等を行うためには、第一種金融商品取引業の登録を受ける必要があります。この点は、2項有価証券をトークンとして発行する場合に、規制が高まる部分です。

実施には金融商品取引業者との連携が現実的

STOにて資金調達を行う場合には、厳格な有価証券規制に準拠する形で実施することになります。ゆえに、安全な投資環境を提供でき、より広範な投資家層にアクセスできるとともに、リスクの透明性と理解を深めることが期待されます。

ただ、厳格である分、発行者単独で有価証券規制に対応するのはハードルが高いと言えます。そのため、証券会社等の金融商品取引業者と連携しながら実施するのが現実的であると考えられます。


Web3ポケットキャンパスはスマホアプリでも学習ができます。
アプリではnote版にはない「クイズ」と「学習履歴」の機能もあり、
よりWeb3学習を楽しく続けられます。
ぜひご利用ください。
▼スマホアプリインストールはこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?