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ブロックチェーン入門_#1:はじめに


この単元の学習目標

自分では技術開発をしないビジネスパーソンは、ブロックチェーンの仕組み自体を理解していなくても、ブロックチェーンを使ったサービスやプロジェクトの設計は可能だと思うかもしれません。しかし巷では、Web3やブロックチェーンについての誤った理解があふれています。

また、優れたプロダクトをタイムリーに生み出すために、エンジニアとのコミュニケーションは欠かせません。エンジニアが使う言葉にも、ある程度は親しんでおく必要があるでしょう。

では、ビジネスパーソンにはどの程度の理解や知識が求められるのでしょうか。例えば、自動車を運転する人は、エンジンやモーターの細かな仕組みまでは知らなくても、ある程度こういう仕組みで動いているのだろうという模型(モデル)を頭の中に持っているはずです。そうした頭の中のモデルのことを「メンタルモデル」と呼びます。メンタルモデルは、本物とそっくりである必要はありませんが、本物とずれていると、いざという時に使い方や判断を誤って事故につながることがあります。

この単元では、ブロックチェーンの動作原理について、みなさん各自が有効なメンタルモデルを頭の中に作れることを学習の目標とします。そのために、適切な比喩などを用いながら、ブロックチェーンの四つの特長である「自己主権性」「耐検閲性」「耐障害性」「耐改ざん性」がどのような仕組みで実現されているのかを説明するようにカリキュラムを構成しています。

これらの特長と、その仕組みを押さえておけば、ブロックチェーンに何を期待して良いのかを分かった上でビジネスを検討できるようになるでしょう。

各単元の関係

ブロックチェーンとは何か、比喩を用いて簡単に表すとしたらどう言えるでしょうか。一つの答えは「参加者による署名記事を集めた新聞」を「参加者全員で作る」システムです。

なぜ「新聞」なのでしょうか。例えば、私たちは新聞を事実の確認に使います。ブロックチェーンも、送金があったかどうか、といった事実を確認するために使えます。そのために、送金を行う本人による「署名記事」の形で「私は誰それにいくら送った」といった内容を紙面に記録していきます。新聞は、誰もが同じ内容を読める出版物ですが、ブロックチェーンも誰もが同じ内容を読めるように工夫されています。

ここでは、ブロックチェーンの全体像を「新聞の紙面の中身とページの繋ぎ方」「全員で作る方法」の二つに分けて整理してみましょう。

■新聞の紙面の中身とページの繋ぎ方

ブロックチェーンは、一般に誰でもアクセスできるようになっています。そのため、誰でも「新聞の紙面」に自分の「署名記事」の追加を依頼できる仕組みになっています。すなわち誰でも自由に、送金等を表すトランザクションをブロックに格納してもらうために、ブロックチェーンネットワークに送信できます。

例えば、Aさんは自分の口座(アカウント)からBさんの口座に暗号資産(仮想通貨)を移転するトランザクションをブロックチェーンに載せてもらうことができます。ただし、もし二人とは関係のないZさんでも同じ内容のトランザクションをブロックチェーンに載せてもらえるとしたら、Aさんの意思に反した送金も可能になってしまいます。そこで、本人の意思を確認できる仕組みとして「デジタル署名」が登場します。(関連単元:基礎技術「デジタル署名」 - 本当に押印・割印よりも便利なのか

そのようにして署名が施されたトランザクションが集められ、ブロックに記録されます。ブロックは時間経過に伴って、平均すると一定の間隔で追加されていきます。その際、新しくできたブロックは、直前のブロックの「要約(ダイジェスト)」を含むことになっています。このダイジェストを計算で生み出すのが「暗号学的ハッシュ関数」と呼ばれるものです。(関連単元:基礎技術「暗号学的ハッシュ関数」 - 同じかどうかを確かめる

直前のブロックのダイジェストを格納した、新しいブロックを誰かが作るには、「力まかせのくじ引き(プルーフ・オブ・ワーク)で当たりくじを引く」あるいは「暗号資産をデポジット(プルーフ・オブ・ステーク)した上で抽選に当選し、かつみんなから承認してもらう」といったコストが負担されなければなりません。これにより、過去のブロックの内容を改ざんしようとすると、累積したコストがその邪魔をするようにできます。(関連単元:ブロックチェーン技術「プルーフ・オブ・ワーク」 - 改ざんを防ぐ、ブロックチェーンの課題解決になるか - プルーフ・オブ・ステーク編


■全員で作る方法

ブロックチェーンの維持に貢献する参加者は、ユーザーたちがネットワークに送信したトランザクションを収集し、その正しさを検証した上で他の参加者たちにも送って共有し、くじや抽選に当たったら正しいトランザクションを記録したブロックを提案してチェーンに繋いでいきます。このチェーンは、俗にハッシュとも呼ばれるダイジェストによって繋がっているチェーンのため、「ハッシュチェーン」と呼ばれることがあります。(関連単元:ブロックチェーンの技術「ハッシュチェーン」 - 順序をはっきりさせる

ブロックチェーンに「止まらない仕組み」「止められない仕組み」を実現することの弊害だと言えますが、時折、同時に複数の参加者たちが、自分が当たったと判断して同じブロック番号を持つ異なる複数のブロックをネットワークに流してしまうことがあります。ブロックチェーンには、それらの中でどれを正しいと見なすかを自動的に決める仕組みも備わっています。(関連単元:ブロックチェーンの技術「ナカモト・コンセンサス」 - 歴史を一つに


各技術の詳細については以降の単元で解説していきます。「基礎技術」ではブロックチェーンに限らず、現在の私たちの生活を支える情報環境で広く使われている基礎的な技術について解説します。「ブロックチェーンの技術」ではブロックチェーン特有の技術について解説します。


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