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DeFi_#5:DeFiの思想背景とは - DeFiの変遷

暗号資産(仮想通貨)は、通貨の発行権が政府や中央銀行などの中央集権機関に集中しており、そのことが長期的には通貨の価値を低下させるという問題意識に対するアンチテーゼとして誕生しました。原則的には、暗号資産はパーミッションレス(無許可性)であり、ノンカストディアルで、透明性を備えている必要があるという思想背景のもとで生まれたものが多いです。

暗号資産と同じくブロックチェーン上で構築される DeFi も、同様の思想背景のもとで構築されているケースが多くなっています。この単元では、自律分散型な金融サービスの歴史とDeFiの思想背景を解説します。


自律分散型な金融サービスの誕生

DeFiという言葉が使われ始めたのは2017~2018年頃になりますが、最初にブロックチェーン上で実装された金融サービスは2016~2018年頃に盛んに行われた ICO と言えるでしょう。

Ethereum(イーサリアム)を利用する DApps の開発チームが資金調達のためにICOを行っていました。当時は独自トークンを管理する スマートコントラクト をブロックチェーン上にリリースして、証券会社などの仲介者が存在せずともトークンの発行と暗号資産による資金調達を実現していました。

また、Ethereumなども開発費用をICOにより調達していましたが、当時はスマートコントラクトでは管理されておらず、オフチェーンのサービスで申し込みをした上で、指定されたアドレスにBTC(ビットコイン)を送付するというものでした。

世界最初期のICOは2013年7月に行われたJ.R.Willetという開発者が主導したMastercoin(その後Omniに改名)というプロジェクトです。当時はBTCの投資額に応じて独自コインを配布するというものでした。

その後、Maidsafe(メディアセーフ)やNXT(ネクスト)などのプロジェクトもICOを行いますが、ICOはまだ一般的ではなく、黎明期にBitcoin(ビットコイン)コミュニティにいた人物によるICOの参加がほとんどでした。2014年にはICOプラットフォームのKonifyが登場しました。これは事業計画の進捗に基づいて調達した資金を開発者が利用できるというものでした。

これまでのDeFiの歴史

ICOなどにより数多のトークンが発行されると、これらのトークンを売買する需要が創出されます。従来型の取引所でも取引ができましたが、取引所でトークンを取り扱ってもらうにはプロジェクトが相応のコストを支払う必要があることや、時間のかかる上場審査などを経てから取引可能となるため、早期に取引をしたい投資家の需要を十分には満たせていませんでした。

そのような需要に応えるべく、誰でも自由にトークンを上場させることが可能で、誰もが自由に売買をすることを目的とする、ブロックチェーン上のスマートコントラクトで実現されたトークン売買機能がある非中央集権型アプリケーションの開発が行われました。

このようなDappsが DEX と称され、2017年にはEtherDelta(イーサデルタ)、Bancor(バンコール)、Kyber Network(カイバーネットワーク)、0x Project(ゼロエックスプロジェクト)など多くのDEXがリリースされます。

その後、2018年頃にはより複雑な金融サービスの提供が可能なプロダクトの開発が進み、DeFiコミュニティ活動などが開始されます。チャットアプリでの議論やハッカソンなどでの開発チームが資金調達をするなど、草の根活動としてコミュニティが広がっていきます。

下記は当時にリリースされたプロトコルの一例になります。

トークンの貸し借りができるレンディングプロトコルCompound
自由にヘッジファンドの組成が可能なBetoken
信用取引が可能なFulcrum
条件に従い自動でポートフォリオのリバランスを実行するTokenSets
仲介者がいないオプション取引を提供するOpyn

これらは多くのプロトコルは、既存金融で提供されているサービスをスマートコントラクトで構築したものでした。しかし、同時期にリリースされたDEXであるUniswap(ユニスワップ)はAMM(Automated Market Making、自動マーケットメーカー)という画期的なものであり、他のDEXが板取引を採用しているため利便性が悪く流動性が十分にないという課題点を、流動性プールによって解決しました。(関連単元:「DeFi」における新しい金融システムの事例2-AMM)

2020年にはDeFiプロトコルがガバナンストークンを利用者へ配布することで、ユーザーの利用を促すインセンティブを付与するイールドファーミングにより、DeFiの総運用金額は急拡大し、エコシステムは広がりを見せました。

現時点では、このようにDeFiという言葉が誕生してから数年しか経過していないにもかかわらず、DeFi全体の総運用金額は約6兆円(2023年6月末時点)と国家予算に匹敵する市場規模まで拡大をしている要因は、自由に誰もが使えることに起因するでしょう。チェイナリシスの調査では、DeFiは当初、米国からでしたが、ヨーロッパやアジアでも広がりつつあります。

次回は、オープンな金融サービスを実現させるために、DeFiに必要不可欠な構成要素について解説しています。


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