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“カスタマーサクセス”が持つ複数の意味 ~サイエンスとアート~

■はじめに

“カスタマーサクセス”と同じ言葉を口にしていても、自分と相手との間でどこか意味が嚙み合っていない、と感じたことはありませんか?
実はカスタマーサクセスという言葉は、話の対象となっている範囲によって異なる意味合いを持っており、それによって齟齬を生んでしまっている状況が見受けられます。
本記事では、カスタマーサクセスが持つ複数の意味を体系的に整理し、話の切り口のヒントを提示していきたいと思います。
貴社内での議論の解像度を上げ、論点がズレないようにするお手伝いができれば幸いです。

■4つの”カスタマーサクセス”

早速ですが、しばしば議論に登場する主要な”カスタマーサクセス”を4種類に区別し、以下体系図にまとめました。

図01

●大分類・中分類
最も広い意味のカスタマーサクセス(大分類)には、事業実態を指す「サイエンス=仕組みとしてのカスタマーサクセス」(中分類上段)と、考え方や心の在り方を指す「アート=思想・哲学としてのカスタマーサクセス」(中分類下段)が含まれます。まずはここでどちらの話をしているのか区別しましょう。

●中分類・小分類
さらに、サイエンス=仕組みとしてのカスタマーサクセスは、製品(プロダクト)・業務・従業員(エンプロイー)の3要素に分解が可能と考えており、この内の業務に当たる部分が最も狭義のカスタマーサクセス(小分類)です。特定の部門やチームが行うカスタマーサクセス業務について話す際にはこちらを指しています。
製品と従業員のサクセス(成功・成長)を含むか含まないかで使い分けましょう。

■サイエンスとアート

カスタマーサクセスを議論する上で、特に重要な切り口は中分類のサイエンス(仕組みとしてのカスタマーサクセス)とアート(思想・哲学としてのカスタマーサクセス)だと考えており、カスタマーサクセス推進にはこれらを並行して検討することが不可欠です。
少し詳しく見ていきます。

図02

●サイエンス
サイエンスとは、科学です。
実証性、再現性、客観性を有することを意味します。
アート=思想・哲学を実現するための業務運営の”仕組み“です。サイエンス実現のためには、取り組み方(誰が/いつ/どう)で成果が大きく左右されない状態に昇華することと、言えます。業務の定義・標準化やカスタマージャーニーマップ構築が大きな課題です。
カスタマーサクセスのコンセプトを噛み砕いて言うと「①製品・サービスを通し、②顧客が求める以上の価値を提供し続けることで、③Win-Winの関係を築くこと」です。各要素(①②③)の質を高めるためには、それぞれに対応する取り組みが必要です。
① コアとなる製品/サービス自体をアップデートする「プロダクトサクセス」
② 製品/サービスを支え届ける付帯サービス・サポートをアップデートする「(業務としての)カスタマーサクセス」
③ 顧客の期待値超えに挑み続ける従業員をアップデートする「エンプロイーサクセス」

●アート
アートとは、哲学・美学です。
創造性、理想性、主観性といったあたりがキーワードです。
カスタマーサクセス的に言えば、求める顧客に価値を、成功を届けたいという“根源的思想・哲学”。業務運営の“仕組み”の根幹であり、理想実現への発想の源泉、と言えます。
”我々はカスタマーサクセスを大切にするのである”、そしてこういう世界観を実現するのであるということを、ミッション・ビジョン等なんらか会社の価値観・文化として宣言すること、がまずは重要だと思っています。
トップマネジメントが、こうしよう!と明らかにすること、その宣言が、個々社員の意識の変容を促します。カスタマーサクセスの10原則にも「トップダウンでやると決める」がありますが、カスタマーサクセス推進の前提として、全社の目線、向き先、足並みを揃えるうえでのポイントと言えます。

■最後に

今回は、カスタマーサクセスという言葉がもつ複数の意味について説明すると共に、カスタマーサクセスには、サイエンスとアートが必要不可欠だ、というお話をしてきました。
どんなサービスでも顧客と接している以上、顧客起点化しなければなりません。
そして、顧客に選ばれ続けるためには本当にいいサービスでなければならず、根幹にある企業の理念・哲学が認められなければなりません。
企業は理念を社内外に向けて、正しく伝えていき、サービスに落とし込んでいく必要があります。
これはまさに、芸術家が自分の作品を通じて世界観を表現するのと同様、カスタマーサクセスにおける“アート”と表現できる部分で、どれだけ自社の哲学を顧客に理解してもらうか、どれだけ時代に即した形にブラッシュアップしていくかが大切です。
一方で、テクノロジーの活用や、定量的なデータに基づいた判断など、いわゆる「仕組み」によって正しく顧客を理解し向き合う“サイエンス”としてのカスタマーサクセスも当然欠かせません。
“サイエンス”のない“アート”は、“絵に描いた餅”に。
“アート”のない“サイエンス”は、“仏造って魂入れず”に。
このように、カスタマーサクセスは、“サイエンス”と“アート”の両輪で成り立つものだと当社バーチャレクスは考えます。

図03

本記事に関するご不明点、並びにカスタマーサクセス全般に関するご相談がございましたら、弊社までお気軽にご連絡をいただければと思います。
貴社カスタマーサクセス構築の一助になれれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。

カスタマーサクセスの10原則についてはこちら

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