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振動
何ごとかが起きた。ぼんやりとした意識のもとでそれを認識した。機械が振動している。横たえた身を捩り機械に触れる。ぶるぶると震えている機械に触れると振動は収まった。少ししてまた震えがくる。
これは僕の震えなのか、機械の振動なのか、判然としないまま冷たいガラスの画面に触れる。血が通っている僕よりも元気に動いて知らせを告げようとする機械に畏敬の念を抱く。
お前がそんなんだから
誰かが呟く。
部屋には誰もいない。
周りが迷惑する
機械が振動する。
振動と会話する。
振動の先の世界へ出ていく気があるなら、靴を履いて地面を踏み鳴らせ。お前がどんな異形だろうがここにいることを知らしめろ。理解され難き非道徳生物の細胞を賦活しろ。脆弱な身体と薄弱な精神を惜しみなく晒せ。君はようやく怪獣としての自由を手に入れる。欠落を埋めるためでなく、忘却を掘り起こすためでなく、飛ぶために飛ぶ。恒星から恒星へ。
光を震わせて知らせがやってくる。
君はまだ生きている。
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