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空気人形

一番好きな映画のタイトル。
是枝裕和監督作品。

「人形が心を持ってしまいました。」
登場人物はみんな心に虚を抱えている。
人形しか愛せない男。過食症&ゴミ部屋のOL。大切な人を失って空っぽになってしまった男。
そして、心を持ってしまった愛玩人形。
愛する人の息で満たされたい。
愛する人の心を埋めてあげたい。
そんな願いが悲しい結末へと繋がる。
ラストシーンの空虚な目で、ゴミ捨て場から空を仰ぐ人形が、儚くも美しい。

消えてしまうだけ。空気を掴んで。空っぽの心は痛みさえ感じなくなった。柔らかく千切れ、縺れあいながら真っ青な空に溶けていくようで。

ああ一度、空っぽになってしまいたい。
心の中の澱も全て出し切って、まっさらな自分になれたら。
しがらみもプライドも全て捨て去って、この手に掴めるだけの幸せのために生きたい。
息が吹き込まれるように、温かな何かで心を満たされたい。
そんな渇望が湧き上がる映画。

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