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デジタル技術による、プロ並みの日曜大工

【デジタル日曜大工 #3】
VUILD代表・秋吉浩気が妥協なく制作した新居用のテーブル。今回は、そのアイディアが実際にかたちになるまでの制作プロセスをご紹介します。


1.「欲しい」を言語化

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まずは、このテーブルを作ろうと思った背景から。
新居に引っ越した際にテーブルがなく、あらゆる家具屋に行ってみたものの、納得のいくものが売られていませんでした。デザイン性の高いものは素材の質が悪かったり、反対に、無垢材を使用しているものはデザイン性が悪かったりと、デザイン性と質の両方が担保されたものが見つからなかったのです。

そこでどんなテーブルが欲しいのか考えたところ、3本脚で直径120cmほどの丸テーブルが欲しいという結論に至りました。人数に縛られずに等間隔で座れる3本脚の丸テーブルは、来客時や家族構成が変化しても対応可能で掃除もしやすくなることが特徴です。

2. 事例の選定

欲しいテーブルのイメージが具体的になったところで、名作家具を調べてみることに。その中で唯一見つけた理想の形に近いものが、ハンス J. ウェグナーの28万円のコーヒーテーブルCH008でした。

デザインと無垢材を使用している点はイメージにぴったりでしたが、使用用途がコーヒーテーブルであることから高さが50cmほどしかありませんでした。それに加えて、天板に脚が3本挿さっているだけの接合部に自分のこだわりを追加したいと考えました。

そこで、ウェグナーのテーブルから見る自分の理想の形を継承しつつも、細部までこだわった新しいテーブルをShopBotで制作することにしました。

3. 作り方の研究

図面が無いなかでハンスJ.ウェグナーのテーブルを分析したところ、高さをあげるには同時に強度もあげなければいけないこと、そしてそれには「留め」が一番のミソであると秋吉は考えました。

留めにホゾ(接合部)をつけて脚を挟むことで、脚が回転してもホゾがうまく抵抗してくれるのではないかという仮説のもとスケッチを行い、次に、家具職人の田中さんに「どれくらいのホゾの寸法があればいいか」を相談したそうです。その際に、留めの接着方法が大切であることをアドバイス得たため、治具もShopBotで制作することにしました。

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4. モデリング

スケッチを描いた後、モデリングソフト「Rhinoceros」でデータを作成し、接合部を試作しました。参照したウェグナーのテーブルは、テーブルの脚を下から挿すのみに止まっていましたが、 ShopBotだからこそできる三次元切削の強みを生かした接合部に変形することにしました。

ここからは秋吉がテーブルの天板と脚の接合部に詰め込んだ3つのこだわりを紹介します。

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まず一つ目が、両側から材を固定する構造です。ShopBotだからこそ出来る3次元切削の強みを生かし、脚の接合部に凹をつけ、それを両側から挟む部材に凸をつけることでより強固に脚を固定できる構造にました。
(▼画像/動画参照)

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二つ目にこだわったのが、脚を固定する際に使用した治具です。脚のジョイントをクランプで固定する際に、三角形の形状では十分に圧をかけられない。そこで、三角形の角度に合わせた治具をShopBotで切り出し、クランプから垂直かつ全面に力が加わるようにしました。

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三つ目は、接合部のR(角度)です。こちらもShopBotだからこそできる曲面切削技術を生かし、接合部に少しの隙間もできないように角度をつけて切り出しています。

モデリングの際には、ShopBotならではのフィレット(刃の逃げ)を考慮し、12.7mm直径の刃物が入るフィレットの大きさを用意しておきました。また、タイトボンドで止めることを想定し、オフセット値(ホゾのゆるさ)は大きめに作ったそう。

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5. プロトタイプの作成

次は、検証です。まずは、これらが成立するかCLTの端材で試作し、想定通りの納まりであることを確認しました。

6. 材料の選定

毎日使用するテーブルは、素材にもこだわりたい。「白くて純粋無垢な家具」が作りたかった秋吉は、広葉樹であるメープルの材を使用しました。

天板は、30mm厚を田中さんに板に接いでもらい、60mm厚、幅が105mm,長さが1000mmの材で脚と張りを作りました。

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7. 加工

いよいよ、ShopBotで実際に切り出していきます。

切り出し

ShopBotで切り出したこちらのパーツは、自分が納得いくまで研磨と塗装を行なったといいます。ランダムアクションサンダーでツルツルになるまで研磨し、オリオ2で塗装したパーツは、上述の様にクランプで固定しながら組み立てました。

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8. 完成

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天板と脚を繋ぐ三角形のパーツは、各辺を3つのボルトで固定しています。

9. 自分の作品だからこそ「妥協なく」

自分のための作品づくりは、自らの希望を全て詰め込めるのが醍醐味。そうして妥協なく徹底的にこだわり抜いた本気の日曜大工は、家具メーカーにも劣らない完成度に仕上がりました。

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ShopBotで3次元切削を実現したこちらのテーブルですが、EMARFでも順次、3次元加工に対応していきます。28万円のハンスJ.ウェグナーのコーヒーテーブルを参考に制作した今回のテーブルは、原価約5万円でより自分の理想に近いかたちで実現しました。

無垢の広葉樹を使って丁寧に家具を作れば、ShopBotでもここまで出来る。合板を用いて2次元でつくるものには制約が大きいですが、3次元加工すればその限界を越えられます。「安いけれど質は悪い」というこれまでのDIYの前提を覆すことができる可能性を実感する挑戦になりました。

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