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【メンバーインタビュー】経営者2人が大事にしている、作ること・小さいこと・多様なこと

テクノロジーの力で誰もが作り手になれる世界を実現する建築系スタートアップVUILDは、このたび事業推進・事業開発を担当するメンバーを迎えるべく、募集を行います。
そこで一緒に働くことになる人たちがどんな人で、どんな思いで仕事をしているのかを紹介しようと、メンバーインタビューを行いました。今回は全3回の1回目、CEOの秋吉浩気とCOOの井上達哉へのインタビューです。

<写真右>
秋吉浩気
 Koki Akiyoshi/VUILD株式会社代表取締役CEO、建築家、メタアーキテクト。

1988年大阪府生まれ。2015年に慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士終了し、2017年にVUILDを創業。2018年にウッドデザイン賞ソーシャルデザイン部門コミュニケーション分野・林野庁長官賞優秀賞、2019年にUnder35 Architects exhibition Gold Medal賞、2020年グッドデザイン金賞、2021年Archi-Neering Design AWARD最優秀賞を受賞。著書に『メタアーキテクトー次世代のための建築』(2021)がある。

<写真左>
井上達哉 Tatsuya Inoue/VUILD株式会社取締役COO、林業プロデューサー

1984年生まれ。岡山県西粟倉村在住。西粟倉村の地域材サプライチェーンを構築し間伐材プロダクトの製造販売事業を行う(株)西粟倉・森の学校の代表を経て、次世代型アーキテクト集団のVUILD㈱のCOOに就任。職住一体の田舎暮らしリモートワークを続けながら、ライフワークとしてマイクロ6次産業化の推進、タンコロ運動、山主を面白がる会、ちょうどいい材木ラジオ等、小さな林業や森と暮らしを繋ぐ横断したプロジェクトを行っている。

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自分で作ることで得られる、たくさんのもの

──お二人の出会いについて教えてください。

秋吉 井上さんに初めて会ったのは、10年くらい前です。井上さんが当時代表をしていた「西粟倉森の学校」がテレビで取材されていて、おもしろそうな人だなと思ったから会いに行きました。林業は課題が山積みだと感じていたのですが、西粟倉森の学校はとても前向きで明るい話をしていたのが印象的だったんです。共通の知人がいたので連絡を取ってもらったつもりが、うまくコミュニケーションできていなくてノーアポのような状態で行ってしまいました。

井上 完全にノーアポだったよ! 浩気くんはまだ学生で、デジタルファブリケーションの話をしてくれたんです。

秋吉 当時やっていた研究について話したのですが、楽しそうに聞いてもらいましたし、場所も印象的でした。保育園のようなベビーベッドのある場所にレーザーカッターが置かれていて、赤ちゃんをおんぶしたお母さんがそれをピッと操作していたんです。しかも作っているのが端材を使った「ヒトテマキット」という、DIY初心者でも自分で彫刻刀で窪みを削ってオリジナル木製カトラリーが作れる商品。カスタマイズができること、人を巻き込む仕組み、端材を材料として売るのではなく商品として売ることできちんと利益を出す発想に、すごいイノベーションだと驚きました。

ヒノキの間伐材を使って自分で木製カトラリーが作れる西粟倉森の学校・ヒトテマキット

井上 西粟倉は人口が少ないし、子育て中のお母さんたちって働き口がないんですよね。レーザーカッターは簡単で誰にでも扱えるので、こういう仕事でもよければぜひと、当たり前のようにお願いしていました。

秋吉 僕は、建築家になれば何でも作れるからと建築学科に入ったのですが、東日本大震災で医師や美容師といった手に職を持つ人々が現地で即座に何かできるのに建築学生である僕は何もできないことを知って挫折を味わいました。いろいろ考えた結果、特殊な技術がない人でも建物などが作れるようになれば、世の中はよくなるし、人々が何でも専門家に頼ろうと考えずに主体的に生きていけるような社会にできるのではないかと思いつき、デジタルファブリケーションに興味を持って研究を始めたんです。西粟倉森の学校のあの光景は、研究者として非常におもしろかったですね。

井上 あそこでそんなふうに思っていたんだ。知らなかったな。当時僕たちがやっていたのはDIY的なアプローチでしたが、自分で作るという行為によって、ものの背景もわかるし、視野も広がって主体性も生まれると思って仕事をしていました。デジタルファブリケーションの話を聞いて、ものづくりに対する価値観が浩気くんとは似ているなと感じたんですよね。

林業とVUILDはともに長期的な視点を重視する

──そもそもお二人が木材・林業に興味を持ったのはなぜですか?

秋吉 大学院生のときに世界ファブラボ会議が日本で開催されて、海外から来た研究者をアテンドしました。世界中のShopBotを扱う人が「日本といったら木材だ、桜材はどこで買える?」「ケヤキは?」と熱心に聞くので、京都や金沢など希望の場所に案内したんです。その当時、研究者が熱心に考えていたのは、地域固有の素材を地域の課題解決に生かすこと。日本は諸外国と違って都市から少し離れれば木材がたくさんあるから、木材を使うのは運送の環境コストが低くてメリットが大きいことがわかりました。ただ、国産の木材は学生には高いし、興味はあるけれど触れる機会がなかったんです。そんななか、テレビで井上さんのことを知って、実際に会いに西粟倉に行った頃から、本格的に木に興味を持ち始めました。

井上 僕はもともと農学部森林学科で、インドネシアで植林などの研究もしていたのですが、林業を好きになったのは、こんなに尊いビジネスはないと思ったからです。植林って50年後のために仕事をするんです。自分がもう生きていないかもしれないのに投資するのは、必ずしも自分のためではなく、子どもや孫のためなんですね。子どもや孫の進学の時、家を建てる時など、人生の節目のイベント時に、木を売って少しでも足しにしてあげようという、地縁血縁のなかで受け継ぐ財産です。
でも、現代だとそういった長期的な視点で資源を残し、生かそうと考えることは、あまりないですよね。今は課題も多い林業ですが、そこに関わって自分たちが何か新しい取り組みを起こすことで、次世代がいい林業の形やシステムを作っていけたらいいなと思いました。

樹齢800年の巨樹「大久保のヒノキ」のなんとも神秘的な姿

秋吉 井上さんから、西粟倉村役場が森林所有者から森林を借りて間伐を行う「百年の森構想」の話を聞いたことがあります。10年、20年と手入れをしていくと、小径木ばかりで元気のなかった森が蘇っていくんですよね。それを見ると人間ってすごいなと思います。
現代の消費サービスは、1〜5年程度の短いスパンで考えられています。僕たちはスタートアップ企業で複数企業から出資を受けていますが、出資者が消費サービスの時間感覚で投資回収をしようとすれば、短期的な目標でしかビジネスが語れなくなります。それって裏を返せば、いま生きている人、つまり自分たちしか考えていないと言えなくもない。人間の意識を変えるようなビジョンのある仕事はもっと長いスパンで考えるものですし、林業ではそれが当たり前なんです。とても尊いですよね。

川下から川上までアプローチし、多くの地域の林業を良くしたい

──その後、2017年に秋吉さんがVUILDを立ち上げ、2018年に井上さんがジョインしましたが、井上さんはなぜ西粟倉森の学校を退職したのですか?

井上 実は創業者と不仲になって、クビになったんです。森の学校の代表を僕に任せて別の会社を立ち上げていた創業者が、戻ってきたんですね。経営者をやって3、4年経ち、自我が出てきた頃で、経営方針に違いが目立ってきました。会社では、さきほどお話しした「ヒトテマキット」や、敷くだけで国産無垢の床にできる「ユカハリ・タイル」という商品を製造販売していたのですが、僕は西粟倉の林業だけが良くなればそれでいいとは思えなかった。だから、製造権を他の地域に譲渡するなどして、小さくスケールさせていきたかったんです。ただ、そうすると西粟倉での売上は下がるかもしれません。だから反対する気持ちもわかるのですが、もう少し何かできるはずだと思ったんですよね。
その点、VUILDでは川下から川上までアプローチしていけます。当時、浩気くんからジェレミー・リフキン『限界費用ゼロ社会』やF・アーンスト・シューマッハー『スモール イズ ビューティフル』などを勧められて読んでいて、これをおもしろいと思う浩気くんとなら、自分が考えていることに近いことができるだろうと思ったんです。僕は世界も含めて「森に関わる人みんなが幸せにやっている世界」を個人的なビジョンとして持っているのですが、VUILDで仕事をすることは、そのビジョンに接続しています。

──VUILDにジョインした結果、井上さんは前職ではできなかった「やりたいこと」をできていますか?

井上 西粟倉森の学校でやっていたような、小規模林業事業者が地元の木材を使って最終商品を作り、消費者に直接売ることで年収を上げるような取り組みを全国に広げたかったのですが、それを「マイクロ6次産業化」という個人プロジェクトとして取り組んでいます。ここ2年くらいで実現できそうだという手応えを得られているんですよ。VUILDではオルタナティブな提案ができるのが楽しいです。


画像をクリックすると「マイクロ6次産業化の推進」の動画へ

社会を変えるために、広げ方も作っていく

──今、VUILDでは事業開発のメンバーを募集しています。VUILDを広げていく方法としてお二人はどんなことを考えていますか?

秋吉 わくわくするような広げ方がいいですね。

井上 僕たちは二人とも小さいことや、多様なことが好きです。スケールしていくと物事を平準化してシステムを作り上げ、自分たちのシステムとして守りたくなるかもしれません。その方が経済的には合理性はあるのでしょう。ただ、それだと僕たちはわくわくできないかもしれないですね。多様な広げ方を模索していきたいです。

秋吉 新しい価値観、新しい世界を作っていこうとしているのだから、アプローチ自体も自分たちで作ればいいですよね。既存の正解とか既存の事例など、杓子定規なシナリオに乗り始めて、挑戦するマインドがなくなったら危ないなと感じます。

井上 ものづくりを単純に資本主義的に突き進めすぎると、最終的には大量生産・大量消費を念頭に人件費と材料費を削っていかに原価を下げるかを追求することになります。大量消費・大量生産には、安価にそれなりのものを多くの人が手に入れられるというメリットもありますが、ものづくりの現場に行っても誰も楽しそうにしていないし、アウトプットもパターン化し、人も簡単に機械に置き換えられてしまうようになって、物とお金しか流通しなくなります。でも、本来はものづくりって、物とお金だけではなく、物語や愛や情緒もめぐるものだと思います。大量生産・大量消費だけではない、オルタナティブな選択肢をつくりたいですね。

0→1には長けているので1を増やせる人材を

──秋吉さんと井上さんお二人の関係性をお聞きしたいです。

井上 浩気くんはアーティストに近く、良い意味で子性を持ってやんちゃしていくので、バランスを取るのが僕の役割かなと思っています。会社が燃え上がりすぎていれば「お金がなくなっちゃうよ」とアラートを立て、でも守りに入っているように思えば焚き付けにいく感じですかね。

秋吉 井上さんはバランスを保ってくれるけれど、ときどき駆け上がる感じもあるんです。だから僕は基本的にツーフォワードだと思っているんですよね。通常のCOOは穴を塞いだり、火消しをしたりとディフェンダー的に動くことが多いと思うのですが、VUILDのCOOは価値を作り続けて、VUILDの命を繋いでいます。

井上 でもそれは浩気くんと僕だけがやっているのではなく、メンバー一人一人が意識していることです。VUILDのメンバーは、とにかくアウトプットの量が多いんです。しょうもないものもありますが(笑)、0→1には長けた体質にはなっていますね。

秋吉 無限にボケられる人ばかり、とも言えるかもしれない。だけどツッコミ役があまりいないので、そういった黒子的な役割で、知恵を出して動いてくれる人が来てくれたら、うれしいですね。

TEXT:フェリックス清香


VUILDらしい広げ方のできる事業開発メンバーを募集します。



◆募集職種

EMARF事業、VUILDERS事業の事業開発メンバー  各1名

◆仕事内容
事業の拡大全般を経営陣と並走しながら推進していただく仕事です。

ーEMARF事業
2020年4月ローンチ。設計者やデザイナー向け、木材のクラウドプレカットサービスとしてサービス展開。会員数5000人を超え、小さなインテリアから建築規模の木材加工まで幅広い利用が広がりつつあります。
今後は、専門知識やスキルがなくてもモノづくりにアクセスできるGenerative AIを活用したEMARF AI等の開発を進め、誰もがアイデアをカタチにできるような「モノづくりのAWS」を目指します。

ーVUILDERS事業
創業期から行う米国製のCNCルーター「ShopBot」の販売事業。これまで全国に約160台を導入。機械販売だけでなく、取り扱いスキル向上のための教育サービス、経営サポート、EMARF拠点化等の収益化サポートも平行して行う。
今後は、現在開発中の安価な木材乾燥機とEMARFツールをセットにした林業者向けのマイクロ6次産業化システムを提供し、持続可能な森林経営を支援するサービスの展開へ向け準備を進めています。

◆募集背景
創業から5年かけて「建築の民主化」を実現するための技術開発と実績を着実に積み上げてきました。これまでに2つの自社プロダクト開発、約6億円の資金調達、毎年150%ずつの売上成長、6期目にしてようやく単年度黒字化を達成予定です。
今後、これまで培ってきたノウハウを基に一気にスケールさせていくフェーズへの移行に伴い、事業のスケール/グロースの推進役となってくださる新しい仲間を募集します。

▼応募&問い合わせ
こちらのフォームよりお問合せください。お話しできること楽しみにしています。

事業開発以外もメンバー募集

正社員、業務委託、インターン、アルバイトなど形態に関わらず、年間を通じて複数の職種でメンバー募集を行っています。VUILDの活動に興味ある方、検討したい方、随時カジュアル面談も受け付けているので、お気軽にお問合せください。                 (2024.04.15追記)

詳細情報こちらから確認いただけます。
https://vuild.co.jp/career/