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一見真逆? スポーツを輝かせるエンタメと臨場感 アメリカで得た南葛SC新スタジアムのヒント

前回はアメリカ視察の際に感じた、直に接することの重要性、さらに感じ取ることの大切さについてお話をしました。

同様に、アメリカで足を運んだスポーツの現場で気が付いたこと、参考になったことがあったのでこちらもシェアしたいと思います。

二刀流・大谷翔平選手の登板日に観戦できた幸運

いまやアメリカで一番有名な日本人かもしれない大谷翔平選手。二刀流という現代のメジャーリーグベースボールでは前代未聞の偉業を現在進行形で形にしている大谷選手の勇姿はぜひとも見ておきたい!

投手専任の選手なら登板日以外は見ることができないにしても、打者としても試合に出場する大谷選手ならその姿を見ることができるはず! そんな思いで4カ月前に入手したロサンゼルス・エンゼルスの本拠地、エンゼルススタジアムでの試合チケット。なんと幸運なことに、大谷“投手”の登板日と重なり、マウンド、打席の両方に立つ大谷選手の姿をこの目で見ることができました。

3番投手兼DHで出場した大谷選手は、投げては7回3安打無失点で今季13勝目のナイスピッチング、打っても先制点を生む二塁打を放つなど、本当にすごい活躍。現地での熱気や大谷選手の人気ぶりを肌で感じることができました。

MLBスタジアムの観客を「一瞬たりとも退屈させない」エンタメ

とまぁ、観光客としてはこんな感想なのですが、そこはやはりスポーツクラブの経営に関わる人間として、プロスポーツの本場アメリカで長い歴史を誇るMLBの試合をビジネス面でも見ておきたい。スタンドで感じられたのは、圧倒的な「エンタメの工夫」でした。

大谷選手の活躍という視点はあるものの、“生粋のサッカー人”である私にとって、やはり野球のリズムというか、攻守交代しながら回を重ねていくテンポにどうしても馴染めないところはありました。いい悪いではなく、ずいぶんゆっくりだなと感じてしまう。

そこはさすがにベースボールが根付く国、アメリカ。イニング間が間延びしないように、とにかくちょっとしたイベントが絶え間なくスタジアムで繰り広げられていました。

たとえば、選手の紹介を地元の子どもたちがする。これは子どもにとって忘れられない体験になると同時に、会場もなんだかほっこりムードになります。親子で試合を観に来る文化が育まれるでしょうし、これが続いていくんだろうなという歴史の重みも感じました。

有名人のそっくりさんを探せ!のようなコーナーでは、しばらくスタジアムのお客さんが主役になり、軽快な音楽とともに、有名な俳優や歌手に似た人が次々にカメラに抜かれていきます。ビジョンに映し出されるお客さんは満面の笑み! 周囲も盛り上がり、競技とは別のところで一体感が生まれます。

ヨーロッパのサッカースタジアムとはまた違う牧歌的な風景ですが、休日に家族連れで地域の人が訪れるエンタメとしては、とても居心地がいいなと感じました。

スタジアムに足を運ぶ理由は競技だけではない

スタジアムのフードも、いかにもアメリカンな雰囲気ですし、スタジアムも見やすい。試合以外の部分で子どもから大人まで楽しませる瞬間をいかにつくれるかを球団が考え抜いていて、しかもそれが長い歴史の中で文化になっていると感じました。

メタバースやWEB3の時代だからこそ高まる体験の価値。その体験もスポーツ観戦だけでいいでしょ? と扉を閉ざしてしまっては、あらゆる可能性を模索している他のエンタメに太刀打ちできません

MLBもストライキやドーピング問題で人気が落ち込んだ時期があったと聞きましたが、いかに目の前の試合に集中させるかではなく、いかにスタジアムに足を運んでみたいと思わせるか、足を運んだ人が心地よく感じて再び訪れるかに主眼を置く考え方は、重要だなと思いました。

日本でも横浜ベイスターズが「スタジアムの居酒屋化」を打ち出して集客に成功したり、日本ハムファイターズが新たなボールパークを建設中だったり、試合以外での滞在時間、体験にフォーカスする考え方も出てきています。

南葛SCにもそう遠くない将来にかならず必要になる新スタジアムは、サッカーをプレーする、観戦する機能性は当然のこと、それ以外の「体験」に価値を見出せるものにしていかなければ、新たなサポーターの獲得、南葛の掲げる世界への挑戦は叶わないでしょう。世界中からやってくる南葛サポーターを楽しませるエンタメの仕掛け、どのようなことができるか、今から楽しみです。

世界中のセレブリティがオーナーを務めるロサンゼルスFC

アメリカでは、MLSのロサンゼルスFCの試合も観戦しました。

ここでは、MLBとはある意味で真逆のスポーツの本質を伝える重要性を感じる体験がありました。

2018シーズンからMLSに加入した新興クラブであるロサンゼルスFCは、NBAのレジェンド選手であるマジック・ジョンソン、女子サッカー界のかつてのスター選手、ミア・ハムとその夫でありMLBで活躍したノマー・ガルシアパーラ、アメリカの著名な映画プロデューサーのピーター・グーバー、マレーシアの世界的企業ベルジャヤ・グループの総帥にしてカーディフをはじめサッカークラブ経営にも積極的な資産家のヴィンセント・タンなど各界のセレブリティがオーナーを務めることでも有名です。

そのロサンゼルスFCのホームスタジアムであるバンク・オブ・カリフォルニアスタジアムで試合を観戦したのですが、このスタジアムが実によく考えられてつくられていたんです。

最近のスタジアムには、VIPルームというか、1室が高額でセレブリティを招いてそこで接待をしたり、商談をしたりする特別室が当たり前に備わっています。

私もいくつかのスタジアムのこうした特別室での観戦体験がありますが、こうしたVIPルームって、通常は2階とか3階の上から見下ろす位置につくられていることが多いんですね。

しかし、バンク・オブ・カリフォルニア・スタジアムでは、ピッチ間近のスタジアム低層にVIP席が設えてあるんです。

南葛SCスタジアムに絶対取り入れたい! サッカーの「生身の魅力」が伝わるVIP席

今回こちらで観戦させていただいたのですが、これが観客としては初めての体験! ピッチレベルの視線で試合が見れる臨場感が半端なく、しかもすぐ横にはこの日はベンチスタートだったガレス・ベイルが。隣にベイルが座っているように感じられるほどピッチに近い席で、しかもその先にある白いラインを越えればそこはもうピッチの中。集音マイクなしでも選手の息づかい、ボールを蹴る乾いた音、身体がぶつかり合う音が聞こえてくる距離でサッカーを観ることができるのです。

この体験は、現役時代にクラブの一員としてピッチの中でプレーしてたとき以来。もちろんそのときは、自分のプレーに必死でしたから、一流のプレーやその迫力を楽しむ余裕なんてありませんでした。

ピッチレベルで見るプロリーグのサッカーって本当にとんでもない

上からの視点の方が試合の流れや展開、戦術は見やすいかもしれませんが、ピッチレベルで感じる生身のサッカーの激しさ、そのまっただ中にいるかのような体験は、唯一無二! 自分もサッカー選手だった私としては、サッカーの新しい、ある意味では本当の魅力を多くの人に伝えるいい手法だと思いました。これは将来のスタジアム構想のコンテンツの一つとしてぜひ盛り込みたい!

野球とサッカー、MLBとMLS、それぞれアプローチは異なりますが、やはりアメリカはスポーツの国。ここでの体験で、改めてスポーツは最高のエンターテイメントだと確信しました。

日本では社会的な面でも、商業的な面でもスポーツの価値やアスリートの地位が低く見積もられているとしばしば感じます。スポーツ、アスリートがもっと評価される仕組みをつくりたい。いや、南葛SCとバリュエンス インフィニティーズでこうした価値を必ずつくるという決意が一層強くなりました。

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