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中村憲剛さんと対談したらビジネスパーソンとして「意思決定」の重要性を再確認させられた話 後編

先日対談させていただいた中村憲剛さんとの話の中で印象に残った“意思決定”の大切さについての後編は、不調などでパフォーマンスが落ちたアスリートが陥りがちな思考と、そこからどうやって立ち直るか、また、その先に進むのかについてお話ししていきたいと思います。

前編はこちら

不調に陥ったとき「まだ、できていること」に目を向けがちなアスリート的思考

ほとんどの選手、アスリートは、思うようなパフォーマンスができないとき、結果がついてこないときに、「まだ、できていること」に目を向けがちです。

「できていないこと」、「もうできないこと」に目を向けるのではなく、「まだなんとかなっていること」にフォーカスして、すべき意思決定を先送りしてしまうのです。

アスリートのメンタリティとしては、「ポジティブな要素に目を向けること」は正解とされがちです。でも、これがビジネスだったらどうでしょう? 赤字続きで、マーケットの中で通用していない事業をいつまでも続ける企業はありません。どこかのタイミングで現実を受け入れ、適切な分析、評価を元に撤退、もしくはアプローチを変えて再挑戦というのが当たり前です。

試合で活躍できない、結果が出せない、もはや試合にも出られない状況に陥ったとき、多くのアスリートは、それでも「なんとかなるはずだ」と、現状から目を背け、「続けたい」という自分の願望をむやみに信じてしまう傾向にあるように思います。

材料を集め、複数選択肢の中から“意図的”な意思決定を!

できていないことに目を向けることができれば、意思決定の材料が増えます。この材料を元に、「できることを増やす努力をする」人もいるでしょう。このクラブで結果が出なければ移籍するという選択肢もあるし、私のように「サッカー選手としての輝かしい未来」が描けないようなら引退という決断もあるかもしれません。

憲剛さんは、5年単位で自分のキャリアを見つめ直し、まるでピッチ全体が見えているかのようにパスコースを見つけゲームをコントロールするプレーさながらに自身のキャリアを俯瞰し、客観的な評価も加味した上で意思決定を行っていたのです。

引退のプロセスの詳細については対談の記事(対談1対談2)を見ていただくとして、「やはりどの世界でもトップレベルで結果を残す人は違うな」と改めて中村憲剛というサッカー選手をリスペクトしました。

ビジネスでも、人生でも同じだと思いますが、一番怖いのは意思決定の選択肢がないことです。意思決定をするための材料がないと、次に何をするのか、どんな決断をするのか判断する材料がないのです。

先ほどご紹介したアスリート的思考、不調のアスリートが陥りやすい考え方は、現実的な選択肢を自ら排除して、視野を狭めてしまう思考術といっていいでしょう。

人生に何度も訪れる「手放すとき」をどう迎えるのか?

私もそうですが、基本的にみんな自分の都合の悪いことは受け入れたくないですよね。でもどんなことにも終わりがあるし、人生には何かを手放したり、撤退しなければいけないときが何度も訪れます。

瞬間、瞬間で行う意思決定は、どんなに熟慮を重ねたとしても後になってみないとその決断が合っていたのか、それとも間違っていたのかの判断はできません。

憲剛さんの引退への意思決定プロセスをお聞きして、複数の選択肢とそれを得るための材料の重要性を改めて感じるとともに、状況や周囲に流されず、どれだけ意図を持って、意識的、自覚的に意思決定ができているのかを自分に問うチャンスをもらいました。

「これから先のことは“あえて”決めていないところもある」と話し、「今日のようにいろいろな人、いろいろな世界の人の話を聞きたい」と言っていた憲剛さんですが、むしろ私の方がビジネス面でも刺激を与えてもらうことができた貴重な時間でした。

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