小説の定義について①――定義の必要性とその方法
小説について論じるにあたっては、本来、まず「小説」というものが何であるかということについて、定義をすることが必要不可欠である。というのも、「小説」が何であるかということは、小説を論じる上で最も基本的な前提となるからである。もし「小説」というものが何であるかを定義せず、これを曖昧なままにして論述を進めてしまうと、論者とそれ以外の者との間で「小説」についての理解に齟齬が生じ、論者の言わんとするところが他の者に十分に伝わらないおそれがある。こうしたことを防ぐためにも、小説について