論文『メードヌイ・アレウト語』私訳
B1期に↓を訳していたので公開してみます。
例文の《》はロシア語、[ ]はメードヌイ・アレウト語です。英訳、和訳はしていないためロシア語がある程度理解できることが前提となっています。ご了承ください。
どう訳せばいいのかわからないところはそのままです。どなたかご教授ください。
本文
МЕДНОВСКИХ АЛЕУТОВ ЯЗЫК
Е. В. Головко
1.0
ロシア語による言語学の論文に「メードヌイ・アレウト語」(以下М.а.я.)「メードヌイ島のアレウト語」、「メードヌイ語」、「アレウト語メードヌイ方言」がある。
英語で書かれたものには“Mednij Aleut”と“Cooper Islnd Aleut”がある。М.а.я.の母語話者は自身の話す言語を「アレウト語」と認識している。しかし、その名称はМ.а.я.としての性質を考慮し、一般的な言語学の論文には用いられておらず、特に本稿ではアレウト語の方言と根本的に異なるМ.а.я.との混同を避けるためにも分けることにする。
2.0
1960年代後半まで、М.а.я.の母語話者はメードヌイ島のПреображенное村に住んでいたが、強制的にベーリング島に移住させられ、現在はНикольское村に、5-7人のアレウト語ベーリング方言話者とともに暮らしている。
Никольское村の大多数の住民の母語は、アレウト人(1980年代後半までのデータによると300人)を含めロシア語である。現在、М.а.я.は消滅の危機に瀕している。1980年代後半には、母語話者は10-12人ほどしかいなかった。
3.0
М.а.я.は「混合言語」に該当する。これはいくつかの特徴によりピジン、クレオールとは区別される。混合言語はピジン、クレオールと同様に限られた状況下での言語接触により発生する言語であるが、語彙が意味の多くの置き換えを伴いつつ共通語から抜き取られ、文法は影響を受けた側のものかどうかという点に根本的な違いがある。混合言語は、普通2つの既存言語から成り立つ。
混合言語の形成パターンを大雑把に言うと、語彙は言語Aから、文法は言語Bから抽出される。文法に関係ない形態素は両方から。そして構文は基本的に言語Aと同じものになる。
М.а.я.はおそらく19世紀の末までには、アレウト語の方言群とロシア語の接触によって発生した。移民集団は3つに分けることが出来る。
最も小規模の集団はロシア人実業家で構成されていた。2番目の移民集団は最大規模であり、露米会社によってアリューシャン列島から連れてこられたアレウト族を含んでいた。3番目の移民集団は、アレウト族より少数の、ロシア人実業家とアレウト族女性の子孫で構成されていた。彼等の社会的地位は露米会社での役割を背景に、アレウト族より優位にあったが、純粋なロシア人実業家よりは低いものであった。
19世紀末までには、程度の差こそあれ、アレウト族のほぼ全員がロシア語を話していた。19世紀-20世紀初頭に記された資料には、かなり漠然としたものではあるが、大多数の子孫やアレウト族の母語はアレウト語であったということが示されている。
1884年にмичманのБеклемишевによって記された資料で「メードヌイ島のアレウト族はごちゃまぜの言語を話している」と言及されている。ただし、この言葉はМ.а.я.の存在そのものではなく、頻繁に行われるコードスイッチングのことを指しているにすぎないだろう。
バイリンガリズムが生まれた背景は、アラスカのインノケンティによる布教の結果、アレウト語とロシア語両方での読み書きが可能になったということにある。
М.а.я.の発生には主に二つの仮説がある。一つは19世紀末のメードヌイ島で発生したとする説。もう一つはアッツ島で発生した後、母語話者がメードヌイ島に入植したという説。後者は、アレウト族のМ.а.я.話者の母語はアッツ方言(すでに消滅)であることに裏付けられている。
発生にはアレウト語アッツ方言とロシア語に加え、ベーリング方言が関与していることは間違いないが、ごくわずかな影響にとどまっており、時期的にはかなり後のことと考えられる。
М.а.я.が発生した一番の要因は、おそらく子孫たちが、自分たちの民族的、社会的集団としてのアイデンティティを確立したいという願望にあったことは明らかである。
現在のメードヌイ島の元住民も含む、М.а.я.の母語話者は自身のことをアレウト族と認識しており、自身の言語はアレウト語であると考えている一方で、М.а.я.とアレウト語ベーリング方言の相互理解可能性を否定する。これは、単に自分たちは独立した別個の民族であるという強い思いが現れたものだろう。
ベーリング島のアレウト族はМ.а.я.の母語話者によって、独自の言語を持ち、異なる文化を持つ、別個のアレウト族集団となった。
М.а.я.母語話者はМ.а.я.とロシア語との類似性を認識していない。出現には高頻度のコードスイッチングと併用が必須な状況が必要であった。
自然なコードスイッチングと同様に重要な役割を担ったのが、意図的なコードスイッチングであったと思われる。(ベーリング島のアレウト族の民族伝承の言葉遊びに見ることが出来る)
М.а.я.は1963年、Г. А. Меновщиковによって発見された。
4.0
М.а.я.には公式正書法が存在しない。非公式であるが、現代ロシア語アルファベットに基づくものはНикольское村の住民、母語話者の一人であるГ. М. Яковлевにより開発された。
5.0.0 言語学的特徴
М.а.я.の構造は、ほぼ例外なく、起源を特定することが出来るが、独立した言語構造を持っており、どちらの言語にも還元されることができない。
アレウト語とロシア語のどちらに似ているかと言われれば、アレウト語の方に近いといえる。音韻体系は大部分がアレウト語からのものであるものの、ロシア語とアレウト語の中間のようなものである。
形態については、膠着語の原理に基づいて構成されており、アレウト語の特徴が最も顕著な部分である。
構文は、アレウト語とロシア語が混ざり合っており、ロシア語の割合がやや多いものの、アレウト語の根本的な要素も保持されている。しかし、ロシア語からアレウト語への類型学的移行の最も重要な点は、音韻体系を除くアレウト語の全構成要素が、そのままМ.а.я.で現れているということと、ほぼすべてのロシア語由来の構成要素はある程度単純化されているということである。
このことから、М.а.я.の「作成者」は母語がアレウト語であり、第二言語がロシア語である人と仮定することが出来る。しかし、М.а.я.の構造に見られるアレウト語への偏りが、後のアレウト語の再拡張の理由であるという可能性も認識しなければならない。
М.а.я.は非常に高い変異性を持つことが特徴であり、基礎言語のどちらかに基づいて形成された、数ある同義語から任意で語を選ぶことが出来る。とはいえМ.а.я.には何の影響も受けない核のような部分も持ちあわせている。
5.1.0 音韻論
母音
注: 二字の母音は長母音を表す。
子音
殆どの音はアレウト語とロシア語どちらにも似た音素で構成されている。
いくつかは無声音と呼ばれているもの(現在では最高齢の母語話者のみが持つ)、そしてアレウト語特有の口蓋垂音である。ロシア語の影響により、アレウト語が語源の単語で両唇破裂音[п]と[б]、両唇摩擦音[ф]と[в]が現れた。
加えて、アレウト語の単語での[п]と[б]音はアッツ方言の両唇音[w]が異分析された結果現れたものでもある。
一部の母語話者は口蓋垂音と軟口蓋音の対応が任意で変化する。
М.а.я.の形成期後期に借用されたロシア語由来の単語には、アレウト語特有の方言によるものではない口蓋化が起きている。
この時期に借用されたロシア語の単語はアレウト語の音に対応していない。ゆえに音素表には元々のアレウト語と、ロシア語の両方のものが記されている。ロシア語から中央母音が、アレウト語からは長母音が残っている。アレウト語で長母音を持っていた形態素はМ.а.я.でも同様に形態素を持つ。これはロシア語からアレウト語への初期の借用語にも当てはまる。ロシア語のアクセントが長母音と解釈されたためである。
簡単に言うと、М.а.я.の音声空間はロシア語とアレウト語の音韻体系が共存しているということ。これが独自の音韻体系を発展させた数多くのクレオールと異なる点である。加えて上記の表の多くは暫定的なものであるということと、М.а.я.のすべての構造に基本的な可変性と2つの音韻体系の共存を図っているということに注意しなければならない。
アレウト語とロシア語の接触初期に借用され、アレウト語の全方言で使われるようになり、完全な音声適合を経た単語を除く、次のロシア語の単語および形態素は標準ロシア語正書法に基づく。
[ниже его, а не иво
они, а не ани 等,]
ロシア語のアクセントは初期に借用された語とは異なり、長母音として認識されなくなった。現代語《проволока》は[проволока]のままである。対して初期に影響を及ぼした《моя мать》は[маамкан]となる。
5.1.1
音節構造は特に研究されていない。
アレウト語アッツ方言をМ.а.я.と比較すると語根と接尾辞の構造に多数の差異があることは明らかである。母方言との比較によって、非常に多くの音移転換が確認された。しかしМ.а.я.の音節構造はロシア語のそれとも異なる。
5.1.2
М.а.я.はアレウト語から膠着語的な語形構成の原則と最小限の形態変化を残している。
母音の連結防止のため、ロシア語由来の動詞変化語尾には分離子音である[й]が挿入される(5.2.2を参照)。
しかし単語によってはそのままの形の単語もある。
5.2.0 形態論
5.2.1
М.а.я.はアレウト語と同じく膠着語であり、接頭辞もない。
接頭辞についての唯一の例外は、動詞に否定の意味をつけるロシア語由来の《не-》が使われる事である。
5.2.2
品詞は名詞、代名詞、動詞、数詞、後置詞、副詞、接続詞、助詞、間投詞に分けることが出来る。
М.а.я.の全ての名詞はアレウト語アッツ方言からの物である。名詞は3つの数詞カテゴリーに対応して変化する。
[《девочка》 単数. ахсину-х, 双数 ахсину-х; 複数 ахсину-н.]
М.а.я.はアレウト語の全方言と同様に、2つの格を持つ。アレウト語と比較して、относительный падеж(単数 -м, 双数 -х, 複数 -н)の機能は一つ減った。所有の関係にある所有格の機能のみをもつ。
(М.а.я.はアレウト語と同じように、形容詞は存在せず、2つの所有格名詞の組み合わせにより従属関係が表される。名詞と後置詞の関係もこれと同様である。)
[собака-м 'итхии 《хвост собаки》
анг,аг,ина-н улан,и 《дома людей》
ах,сааг,а-м амайакнаа 《заразная болезнь》 (直訳すると《плохая болезнь》)
ула-м айа 《к дому》]
относительный падежにはもう一つの機能があり、所有を表す名詞である場合、3人称所有を表す組合せで所有を表す。
[уухозам 'узу-ган илин,и 《на всех ухожах (охотничье-промысловых участках)》.]
絶対格(単数 -х,; 双数 -х; 複数 -н)は主語と直接目的語の役割を持つ。
М.а.я.はアレウト語と同じく、所有格を表すマーカーがある。
[ ахсину-н, 《моя дочь》
ахсину-ун 《твоя дочь》
ахсину-у 《его дочь》]等
所有格の変化形はアレウト語由来のものである。
動詞述語文において主語と目的語の位置における人称代名詞は全てロシア語由来のものである。
主語代名詞は現在、過去、未来の時制の述語をもつ文中で使用できるが、現在、未来形では動詞の語形により人称を特定できるため省略される傾向にある。
人称による語形変化が存在しない過去形では、文脈によって人称が特定されていない場合、常に人称代名詞が使用される。
М.а.я.はアレウト語由来の三人称再帰代名詞を持つ。次の文の 《тин》 がそれである。
[айагаа тин ах,сачал 《его жена заболела》.]
アレウト語では再帰代名詞としても使われる1人称、2人称の目的語代名詞はМ.а.я.でも使われている。3人称のものはロシア語の再帰代名詞と替えられることもある。
[маамкан, укук,ун,и себя ак,аачаали 《к моей матери вернулось зрение》.]
人称代名詞と再帰代名詞
間接目的語では次の文中の[н,ун 《мне》]と≪ему≫のようにアレウト語、ロシア語両方からの単語が使われている。
[проволоках, н,ун к,ан,ий 《проволоку мне согни》
я ему еще ибйаал 《я ему еще положил [еды]》]
所有代名詞では、意味が重複するものはロシア語由来のものも使用される。
[ иглун, у меня 'агал мин годах
《внук-мой у меня вырос в этом году》
у него кабии ангийгааит 《у него голова-его умная》.]
所有代名詞は名詞の所有格形と重複しないこともある。
[ у тебя ни бут чугаать к,ичитин 《у тебя не хватит денег》.]
疑問詞の大部分はアレウト語からのものである。
[ киин 《кто》
ак,ух, 《что》
ак,утал 《как》
к,анан 《сколько》
к,анан, 《когда》
ак,ули 《почему》
ак,умаа 《для чего》
к,анану 《где》.]
文章中にはロシア語由来の疑問詞も見られる [когда / куда / который 等]
同じ意味の疑問詞は両言語のものが任意で使われる。
指示代名詞はアレウト語とロシア語由来のものが見られる。
[ 'ин,а тайаг,ух, сисах,таал 《этот человек заблудился》
это мой аксинун, 《это моя дочь》. ]
しかし多くの場合アレウト語のものが使われる傾向にあり、 加えて上下、遠近、可視不可視といったことに関連する空間描写の厳密な体系が保持されている。
[ман к,уганах, чук,уйааит, акан ан, унааит
《этот камень маленький, а тот большой》]
アレウト語と同じく、動詞は空間的な意味を持つ語幹の派生を利用して形成される。
[укаа-г,а- 《приходить/приезжать сюда》
укаглаа-г,а- 《приходить/приезжать сюда》
маа-г,а- 《приходить/приезжать сюда》.]
指示語は人称によって変化し、所有の意味が付随する。
動詞には人称と数、時制と法といったロシア語の形態と一致する文法カテゴリーがある。現在形は2つのカテゴリーが同調して表される。
過去形は接尾辞《-л》で表される。複数形は更に《-и》をつける。人称は主語の位置をとるか、定型動詞に付随する人称代名詞によって表される。文法カテゴリーとしての性はない。しかし、動詞に話者が女性ということを示すためにロシア語由来の接尾辞《-а》をつけることが出来る。
[аамгих, йуу-ит 《кровь течет》 (наст вр.)
укинах, к,ичигаа-ит 《нож острый》 (наст, вр.)
к,игнах, уг,аа-л 《костер погас》 (прош. вр.)
я 'усуг,лии-л-(а) 《я чихнула》 (прош. вр.)
чиг,анам ила мы ибаг,аа-л-и 《в речке мы рыбу-удили》 (прош. вр.).]
人称別の動詞接尾辞
未来形は対応するロシア語に基づいた語の組合せによって表される。
人称代名詞によって変化する動詞《буд- (бу-)》に不定詞の《-ть》をつけて形成される。
[ сунах, буд-им 《усии-ть 'пароход будем нагружать》
ты бу-ш тин уг,аачаа-ть 《ты порежешься》.]
ロシア語のような完了体と不完了体のような関係は存在しない。しかし、アレウト語の動詞と対応するアスペクトの特徴を持つ。すべての動詞語根は限定、非限定に分けられる。
定型動詞の否定形は、動詞の前に設置され、実質的な接頭辞であるロシア語由来の助詞 《ни》 で表される。(アレウト語に接頭辞は存在しない。)
[ихний тааткан,и мачах ни ак,атаа-л 《их отец ничего не знал》
велосипедах, я тебе ни буду акиить 《велосипе я тебе не куплю》]
アレウト語由来の他動詞では、「気象」動詞においてもアレウト語由来の否定接尾辞[-г,ула-]が用いられる。 [саалу-г,ула-х, 《стоит ненастная погода》]
これは名詞にも用いられる。 [ах,сачхиза-г,ула-х, 《нехорошая болезнь》.]
単数二人称命令法を表す接尾辞《-й》の語源はアレウト語とロシア語両方にあると推測できる。
複数形《-ти》は命令法を表す語の後につく。
[ни иг,атуу-й 《не бойся》
ни имах,чии-й-ти 《не кричите》]
三人称命令法にはロシア語の言葉をそのまま使用する。
[Давайти талигаать! 《Давайте танцевать!》
Пускай они хлиибах, акииют! 《Пусть они хлеба купят》]
「禁止」を表すときも同様である。
[Смотри таан,ах, ни кумаай! 《Смотри воду не разлей!》]
(М.а.я.において、アレウト語動詞 [укух,таай《смотри》]の 語幹は禁止を表すときは使用できない。ロシア語での慣用句《смотри не...》は禁止の文法的表現とみなされており、動詞の語彙的意味とは関係なく用いられる。)
一人称複数形には共存する接尾辞[-чим]が存在する。起源は明らかではないが、対応するロシア語の[-м 《в пойде-м!》]の影響を受けたものと考えられる。 [ан,аачаг,ии-чим 《давайте споем》.]
М.а.я.では幾つかのロシア語由来のmodal verbと述語否定が用いられる。
[я ни мог тин саг,аниить 《я не мог заснуть》
мне надо амун чхууг,аать 《мне надо белье стирать》
браатам луйаг,ии тин айагаг,лиил а кин,ууг,их, еще нету
《старший брат женился, а младший еще нет》.]
基数詞は10までの数字はアレウト語とロシア語のものが共存している。[атак,ан と один / алах と два / к,анкун と три ]
それ以上は全てロシア語のものが使われる。序数詞は全てロシア語の単語が使われる。
後置詞はアレウト語のものが使われる。名詞と組み合わせた場合は、относительном падежеで名詞の後につく。
[Мииднам ила 《на о. Медном》
айх,аасим нага 《на лодке》
танам куга 《на берегу》.]
副詞はロシア語のものが使われる。《вчера, сегодня, даже, каждый раз, потом, очень, немножко等》アレウト語に副詞は存在しない。
状況的意味はアレウト語と同じく、他動詞によって表される。 [ахтихталака 《все время, безостановочно》
игатал 《быстро》.]
接続詞はロシア語のものが使われる。 アレウト語には、二つの名詞をつなげる機能を持つ[ама 《и》]以外の接続詞は存在しない。
助詞は全てロシア語のものが使われる。《же, ведь, ну-ка 等》
確認できる資料では、間投詞は全てロシア語のものが使われている。
5.2.3
アレウト語と同様の名詞語形成の接尾辞が用いられる。
[ахсину-куча-н, 《моя маленькая дочь》
анг,аг,ина-чхиза-х, 《хороший человек》
ига-аси-х, 《крыло》
ун,учи-илуг,и-х, 《сиденье, стул》.]
動詞の語形成法はアレウト語由来のものである。 (名詞、動詞両方の語幹から形成される。)
形態素のレパートリーは元のアレウト語に比べやや減少した。構文に関連する形態素と、構文に影響を与えない語形成法をそのまま保持した。
[ мешооких, таху-г,и-ит
《мешок завязан》 (-г,и- - пассив)
я собаках, к,а-х,чии-ю
《я собаку кормлю》 (-х,чи- - показатель пермиссивного каузатива)
боочких, чугух, чхаа-саа-ит
《бочка песка полна》 (-Дса- -транзитиватор; Д обозначает обязательную долготу любого гласного, предшествующего данной морфеме)
иглун, ни тута-к,аг,ии-й-ит
《внук-мой не слушается》 (-к,аг,и- - детранзитиватор)
я раньше быстро аба-заа-л-а
《я раньше быстро работала》 (-за- - итератив)
я кайуг,и-к,айаа-л
《я устал》 (直訳《сильным перестал быть》
-к,айа- 《перестать》)
сак,уйах ига-х,таа-ит
《птица летает》 (-х,та- - показатель результатива)
он таанах, аг,лу-лаа-ит
《он воду вычерпывает》
(-ла- - показатель дистрибутива)
к,ах, чапчин тих,-михтаа-ит
《рыба леску дергает》
(-михта- - показатель мультипликативного действия)
он аба-к,алии-л
《он работать начал》 (-к,али- 《начинать》)
к,агладах, аки-ту-ит сейчас
《еда дорого стоит сейчас》 (直訳《цену имеет большую》
-ту- 《иметь много》)
я Ольга аса-х,таа-ю
《меня зовут Ольга》 (直訳《я Ольга имя-имею》
-х,та- 《иметь в качестве N》).]
5.3.0 統語論
5.3.1
М.а.я.はアレウト語と異なり、語順は自由である。しかし、直接目的語が代名詞であった場合、語順はアレウト語と同じくSOVとなる。
М.а.я.はアレウト語の統語論の原則を受け継いでおり、三人称では主語が述語動詞の形を決定するが、話者による。
[чветки-нин, 'ула-л-а 《цветы-мои расцвели》]
この文では、ロシア語で要求される複数形過去を表す動詞の接尾辞《-л-и》ではなく、過去形接尾辞《-л-》が女性形接尾辞《-а》と組み合わせられている。(この文は女性が話している。)しかし、正しくロシア語に基づいた[ чветки-нин, 'ула-л-и ]という文も正しいとされており、構文のバリエーションは非常に多い。
5.3.2
以下の複文はロシア語の例文に基づいて記されたものである。
[ я вчера абаал пока ни к,ахчакчаал
《я вчера работал, пока не стемнело》
хоть ты и ан,ушаиш но ты дикааиш
《хоть ты и большой, но дурак》
'лах, его анаг,ал и он к,ийак,алиил
《мальчик его ударил, и он заплакал》
если бы ты пораньше укааг,аал ты бы его 'ак,аасаал укаануу
《если бы ты пораньше пришел, ты бы его застал здесь》
сколько ты ни 'айай велосипедах, я тебе ни буду акиить
《сколько ты ни проси велосипед, я тебе не куплю [его]》
они имах,чил тунух,таали поэтому я ни мог тин саг,аниить
《они кричали, поэтому я не мог заснуть》]
アレウト語由来のいくつかの従属節も使用されている。次の文の部分の接続詞に現れている。
[имах,чи-л тунухтаали букв. 《крича разговаривали.》
《-гу-》を使用した条件節
[убла-гу-ун пускай 'айимис 'уйааит
《как только проснется, пусть зайдет к нам.》]
特に構文においてМ.а.я.の法則は非常に変わりやすいということに注意するべきである。
[как буит ублаать, пускай 'аймис 'уйааит.]
5.4.0
М.а.я.の語彙構成の分析により、多くのピジン・クレオールとの根本的な差異と混合言語というグループの妥当性が改めて確認できる。
一般に、アレウト語由来の殆どの語彙はアッツ方言のものであるが、多くの音移転換を伴っている。そして、品詞ごとの語彙は不均一に分布している。
動詞はアレウト語由来のものが多数を占める。いくつかのロシア語由来の動詞語根は、アレウト語の方言群が18-19世紀に借用した単語のものと一致する。
ロシア語からの名詞の割合は、半分以下とはいえ、かなり多い。また、名詞語根の殆どもアレウト語の方言群に借用されていたロシア語のものと一致する。
名詞以外の品詞は、平均してロシア語由来のものが半分以上を占めている。加えて、アレウト語に存在しない品詞体系はロシア語由来の語彙のみで表される。
過去15-20年の間で、社会におけるロシア語の影響力とМ.а.я.のほぼ完全な消滅を背景に、М.а.я.のロシア語由来の語彙が増加していると考えられる。
6.0
М.а.я.に方言は存在しない。
あとがき
Относительный падеж をなんて訳せばいいのかわかりません。
見出し画像はКиноのЗвезды останутся здесьの歌詞写経です。何も関係ありません。しっくりくるものがなかったのでビャーと書きました。
2021年、この言語最後の話者は亡くなられました。記事はこちらです。(英語版)
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