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#33 重要なのはサンフランシスコが終わったかどうかではない

2020年、スタートアップやテック業界の多くの人々がサンフランシスコを離れました。リモートで仕事がこなせる人たちが多いスタートアップやテック企業が集中している、スタートアップの聖地と呼ばれてきた地域だったが、あっという間に人が減ったのです。

イーロン・マスク(テスラCEO)、ピーター・ティール(パランティアの共同創業者)、マックス・レフチン(アファームの共同創業者)、リード・ホフマン(リンクトインの共同創業者)のようなメンバーとPayPalの初期に一緒に仕事をしていたPayPalマフィアの一人である、キース・ラボイス氏はOpendoorを共同創業し、現在はピーター・ティールなどとともにFounders Fundのジェネラル・パートナーを務めています。つまり、彼はスタートアップのエコシステムにて強い影響力を持っているのです。

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彼は、2020年早々にサンフランシスコを捨てて、州の所得税がないことが定番のひとつであるフロリダ州マイアミに移住した一人です。彼に続いて多くの人が声高な支持者となり、より多くの人が追随することを促しました。彼らはある程度の成功を収めています。特にマイアミまで飛行機で2時間しかかからないニューヨークからは、多くの人が(少なくとも一時的に)マイアミに移住しました。そして多くの人がベイエリアのスタートアップの聖地としての終焉についても語りはじめました。でも、それは本当でしょうか。

答えは「ノー」です。PitchBookとNVCAが共同で発表した「2021 Q1 Venture Monitor」によると、確かに下のグラフのように、他の地域に比べてベイエリアの投資案件数の割合が少しずつ減少してきています。しかし、これは別にこの1年で起こったことではなく、過去10年間の長期的なトレンドです。このようなトレンドがあるにもかかわらず、周知のように、ベイエリアは今までスタートアップエコシステムの聖地としての地位を誇ってきました。

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さらに、下のグラフでは投資額の地域ごとの割合を表していますが、投資金額の観点からもベイエリアが本当に勢いを失っているとはとても言い難いです。まだベンチャーキャピタル投資金額全体の4割近くがベイエリアに流入しており、他の地域が追随できないレベルになっています。この10年間は、ずっと40%台で推移しています。

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しかし、サンフランシスコ・ベイエリア、ニューヨーク、ボストンなど、いわゆるスタートアップの街とは見なされていなかった他の地域に注目が集まりはじめているのは事実です。ノースカロライナ州は、アーリーステージのベンチャーキャピタル投資金額の割合が、2019年0.81%、2020年0.84%、2021年上半期で1.5%と、3年連続で増加しています。フロリダ州も同様に1.68%から1.76%への成長を見せた州です。

したがって、私たちが自問すべき重要な問題は、ベイエリアが終わったかどうかではありません。しばらくは首位のポジションが維持できそうだからです。それよりも、他のどこの地域が成長しているのかを理解し、新興地域のアルファをどのように掴むのかが重要な問題です。フロリダ州やノースカロライナ州に加えて、オハイオ、コロラド、ユタ、ワシントンなどの州でも、近年、ベンチャーキャピタルの資金が集まってきています。リモートワークがより一般化すれば、この傾向はさらに加速するでしょう。これらの州の起業家にアクセスできるベンチャーキャピタルファンドは?その州ではどんな産業が盛んなのか?などなど、気になることはたくさんあります。

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References:
・Venture Monitor Q1 2021 by Pitchbook and NVCA
・Pitchbook Data
・Image credit: Florida Funders - https://blog.floridafunders.com/from-sunshine-state-to-startup-state

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