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施設内研修のコツ

施設で働いていると施設内研修をお願いされたりします。
急に「トラウマのこと、職員に話してほしい」とか管理職に言われたり、無茶振りなオーダーが出てきます。

個人的には、研修を依頼されたとき「めんどくせー」と「ラッキー」が半分半分くらいな気持ちになることが多いです。
それでも、施設内研修がタメになるものになるよう意識していることがいくつかあります。
今回は、それを書いておこうと思います。

主催者の意図を把握する。

この研修の主催者はどんなことを求めているのかを知ることは何よりも大事です。
どうしてそのテーマの研修を施設内でやろうと思ったのかを会話の中から探ります。例えば、どこかでそのテーマの研修を受けてきていいなと思ったとか、施設のケアについてこういう理解が欲しいとか、困っているケースについて考えたいとか。色々です。
これを知ることによって、研修のゴールを作りやすくなります。ゴールとは目的であり、この研修を受けたあと受講者にどうなっていてほしいかをイメージすることです。

主催者によっては、この目的がわからない人もいます。そういう場合は現場の人に「こんな話をもらって、、何をどうすればよいか困っている」と聞いてみるのもいいかもしれません。

現場の空気感を把握する。

その上で研修を受ける職員の感じを把握することです。主催者が施設長の場合、突然思いついたり職員のニーズ置き去りなことが多いです。
そのため、主催者の意見だけで資料を作るとスベることがあります。なので、主催者の意向はベースとして、現場の人たちが学びや気付きとなりそうな所はどこかを普段の支援の困りごとから探っていくといいと思います。

姿勢としては研修に対して現場の職員が「受けさせられた」という感覚が小さくなるような配慮を多くすると良いと思います。
その点に関しては、事前のアナウンスや研修内容の共有、プロセスなどを可能な範囲で伝えるとよいと思います。内容にも話を「聞かされる」場面以外のディスカッション場面を作ったりできると、効果的です。
できる限り受動的な要素をへらすことで、能動的に研修を活かしやすくなります。


裏テーマとしてこちらの意図を考える。

研修に与えられた時間は、心理職が独占できる時間とも考えられます。
悉皆研修であれば、なかなか時間を取れないホームや寮舎にも話を聞いてもらえる時間です。これは貴重な時間です。
なので、もらっているテーマは守りながら、それに近いテーマでこちらが伝えたいものを織り込んでいけると最高です。
例えばトラウマについてオーダーがあったら、関連したトラウマインフォームドケアからチーム連携の大事さやコミュニケーションの重要性を話し、
今後ケースについて心理職が関わっていく頻度が増えるように種を撒いていくことを裏テーマにするとか。

せっかくもらった時間なので労力に見合うだけ、こちらにも利益があるように研修資料を作っていけるといいと思います。

できるかぎり施設の言葉で資料を作る。

おそらく研修資料を作るために色々な調査や論文、本を読んで行くと思います。その中で使われている言葉を施設の用語に変えておく必要があります。
小さなところだと、直接処遇職員のことをなんて呼ぶのかとかです。普段「職員」と呼んでいるのに研修中に「社員」「支援者」と書くだけで違和感アリアリです。

そして研修中に「医療現場では…」と言うだけで施設職員は心が離れていきます。なぜならここは施設だから、医療の話をされても…となりやすいようです。医療での実践を伝える場合には、これは医療だからできることという前提を理解した上でどんなエッセンスが活かせるのかを伝える必要があります。

そして、症状の羅列やICDなどの診断基準も丁寧にやる必要はありません。もちろん説明する必要は絶対にあります。
けれど、それも医療の話で診断をするためのものなので職員からすると心が離れやすいです。
何より説明している私も書いてあることをそのまま読むことが多いので、お互い我慢の時間になりやすいと思います。

新しい用語を共通言語として普及する

先程のところでは、施設の用語で説明をすると書きました。
その上で研修によって新しい用語を施設の共通言語に組み込むことも研修の大きな意義です。
これは新しい用語=新しい視点で理解することでもあります。
日頃の会話の中で研修で伝えたかった用語や考え方が出てくると素晴らしいと思います。ケースの話をしているときに、研修での話を組み込んだりしながら研修での知識を実践と融合できると研修の意義が高まっていくと思います。

研修をできた段階でその研修は成功

以上のような準備によって、成果や効果のレベルは変わっていきます。
ただ、個人としては施設内研修を心理職ができた段階で成功だと思っています。
なぜなら職員をわざわざ集めて、大事な勤務時間の2時間くらいを使う行為をお願いできるだけの信頼が心理職にあるからです。
なかなかやらせてもらえないのが現状です。なので研修の実施は負担しかないのですが、誠実にできるといいかなって思っています。

今日はこのあたりで。
また来週。

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