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解剖!霞が関 「調整力」はビジネスでも使える?(後編)

(官⇆民の越境キャリアを支援するVOLVEのnoteです。前編はこちら


先が読めない状態に耐え、できると信じ、ブレずに働きかけを行うマインドセット

ここまで、求められるスキルを、あたかも一本の道をまっすぐ進むかのように時系列で説明しました。しかしながら、実際の調整のプロセスは、予期せぬ反応や、ちょっとしたミス、他の案件からの影響などもあり、着地点の構想、道のりの抽出、着地点への誘導は同時並行で、行ったり来たりしながら進みます。ですので、不確実性に満ちています。そのような先の読めない状況でも、不安で思考停止に陥らず、冷静に問題解決に臨むマインドセットがなければ、途中で心が折れてしまうでしょう(不確実性への耐性)。
また、繰り返し触れている通り、全ての調整相手が喜んで受け入れるような着地点は普通はありません。その中で、ダイナミックに着地点を動かし、潜在的に許容可能な範囲を探りながら、相手に歩み寄ってもらうことは簡単ではありません。そのような困難に接してもなお、「できる」と信じて考え続けるマインドセットが必要です(できる志向)。
調整相手に痛みのある着地点にいざなう過程では、当然ながら、様々な反対意見も出ます。その反対意見の多くは、相手の立場に立てば当然だと思うものばかりで、個人的に共感できるものも含まれるでしょう。もちろん、こちらが見落としていた重要な事実を指摘されたら、それを踏まえて着地点を構想し直す必要がありますが、他方で、少し反対されてすぐに考えを変えていたら、まとまるものもまとまらなくなります。様々な意見の中でブレずに働きかけを続けるマインドセットが重要になります(胆力)。

スキルの言語化は国家公務員の育成を加速する

国家公務員の方々は、日々このように様々なナレッジやスキル、マインドセットを駆使して、重要な政策の調整を行なっています。普通は完璧な人などいませんので、ナレッジやスキルには凸凹がありますし、得意・不得意な芸風(スタイル)もあるでしょう。個々のナレッジやスキルにおける自分の現状と次のチャレンジもあると思います。

こうして分解して考えると、どんな年齢・役職にある人であれ、「成長していない」ということはほとんどないはずですが、言語化されていなければ成長は実感しづらいものです。まして行政は、民間に比べるとステークホルダーが多いために、とかく物事の意思決定のスピードが遅くなりがちですので、成果を出すためには時間もかかります。そのため、ビジネスの世界で働く友人の話を聞くと、「成長していない」と感じてしまうこともよく理解できます。だからこそ、霞が関は必要なナレッジ・スキル・マインドセットの要素分解と言語化をするべきだと思います。

それは決して、成長実感を得るためだけではなく、国家公務員が成長するスピードを高めるものでもあると思います。霞が関ではOJTで実務を通じた成長が重視されています。それ自体は、悪いことだとは思いません。ただ、必要なナレッジ・スキル・マインドセットが要素分解され言語化されていないまま、ひたすら実戦だけを繰り返すということは、たとえて言えば、100メートル走の記録を速くするために、ひたすら100メートル走を繰り返しているようなものです。
私は短距離走の素人ですが、プロのアスリートは100メートル走の記録を速くするために、スタートダッシュの姿勢、足の上げ方、腕の振り方、呼吸の仕方など、様々な要素に応じた練習をしていることでしょう。場合によっては特定の筋肉のトレーニングをすることもあるでしょう。本来なら、本稿で取り上げている調整力も、個別のスキルなどに特化してトレーニングをすることが可能ですし、そうしたポイント指導があることで、実戦によるスキルアップも加速します

スキルの言語化は中途採用にも好影響を与える

この話には、中途採用に対する意味合いもあります。国家公務員のスキルを言語化することで、中途採用も行いやすくなります。そもそも中途採用は、白地で人を育てるニュアンスの強い新卒採用とは異なり、個人の資質を評価するだけではなく、職業経験を通じて得られたナレッジやスキルも評価をすることが一般的です。
ビジネスであれば、例えば、マーケティングの部署で人を採用する場合にはマーケティングの経験がどの程度あるのか、どんなナレッジやスキルがあるのか、そこでどのような成果を出したのかを問うでしょう。他方で、行政では必要なナレッジ・スキル・マインドセットにまで要素分解しなければ、やっている業務は法令の解釈・作成や、政策の企画立案、国会議員・各種団体との調整など、民間にはほぼ存在しない機能ばかりです。

ですから、その粒度で人を評価する限りは、普通のビジネスマンは霞が関の人から見て「経験不足」としか見えないでしょう。いくらビジネスマンの経験を面接で聞いたところで、恐らく、面接官の方々は「この人はうちの役所できちんと外部と調整できそうだ」と自信を持てることは少ないと思います。
しかしながら、先ほどのようにスキル・マインドセットに分解するとどうでしょうか。そもそも生え抜きだろうと中途だろうと、完璧な人などほとんどいません。分解してみると、ビジネスの営業職の方が育ちやすいスキル、ビジネスで何十人という組織をマネジメントする仕事の方が育ちやすいスキルもあるかもしれません。

そう考えると、特定の人材を中途採用する場合に、どんな相対的な強みをその人に期待して採用して、どんなナレッジ・スキルを入省後に支援・指導・補完する必要があるのかも、明確になるのではないでしょうか。

霞が関って何が得られる場所なの?霞が関の人事は、この問いに一丁目一番地で答える必要がある

本稿では調整力を例にとりながら、霞が関で求められるナレッジ・スキル・マインドセットを分解することを試みました。私自身は霞が関で仕事をしたのはたった2年半ですので、何十年もそこで働いている方々の経験やそこから得られたものと比べると、ごく薄っぺらいものです。ですので、誤解や過不足もあることと思います。その一方で、このように求められるナレッジ・スキル・マインドセットを要素分解して言語化することの意義を、感じてもらえたのではないでしょうか。

まず、自分が何をできるようになってきたのかが分かり、成長実感が得られると思います。次に、「なんとなく良い/ダメ」ではなく、「あなたが〇〇の仕事でとった、〇〇の行動について、私は〇〇だと思いました。それは、〇〇という点でレベルが高い/改善の余地があると感じました」とフィードバックすることができますので、国家公務員を育てるスピードが速まります。最後に、中途採用の選考でビジネスマンを適正に評価できるようになりますし、さらには、こうして評価基準が明確になることで、ビジネスマンがより自信をもって応募することができるようになります。

求められるナレッジ・スキル・マインドセットの要素分解と言語化は、霞が関の人事にとって一丁目一番地で行う必要があるものです。それは、生え抜き職員のためにも、質の高い中途採用のためにも、必須であると思います。

【著:吉井弘和】


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