【本質】筋トレするときの正しい呼吸法
「トレーニングするときの呼吸ってどうしたらいいの?」
「正しい呼吸方法は?」
様々な情報が出回っており混乱されている方もいると思います。
この記事では最新の知見を引用し、どんな呼吸法がおすすめか書いていきます。
結論から言うと、
ドローインは筋トレ中わざわざ行う必要はない。また、筋トレとしても負荷量は弱い
ウエイトトレーニングをするときはドローインではなくブレーシングをおすすめ。
その理由を詳しく解説していきます。
呼吸の種類と適用場面
胸式呼吸は意識する必要ない
胸式呼吸は文字通り胸で呼吸します。胸は脊柱の骨格の形状が理由で、上部は前後に開き、下部は左右に開くような動きをします。そのため、可動域制限がなければ息を吸って胸を前後左右に膨らませることができます。
高齢者や呼吸器疾患がある方では、原因は様々ですが胸の動きが悪く、前後左右の動きが出ず肩をすくめるような呼吸の仕方をしやすいです。
ただ、筋トレをしているときに胸式呼吸をするメリットはないでしょう。
ウォームアップとして胸郭の動きを取り入れるのは良いと思います。
腹式呼吸(ドローイン)
へそを背骨に近づけるようにお腹を凹ませる動きです。腹直筋や外腹斜筋を抑制し、腹横筋を活性化するのに有効です。
さらにドローイン+骨盤後傾でより腹横筋を促通できます。
ここで腹横筋がどんな働きをするのか解説。
腹横筋の働き
腹横筋は他の筋に先立って収縮を起こし(上肢運動の0.03秒前、下肢運動の0.11秒前)、脊柱の安定性を高める事で、四肢を動かす事を可能にすると言われており、腰痛患者ではこの活動が遅延していることが報告されています¹⁾。
腰痛および仙腸関節痛症例では腰椎や仙腸関節の機能的安定性に関わる筋群のモーターコントロール(運動制御)が低下していることが示唆され,腹横筋や多裂筋の機能不全が腰痛発症および慢性腰痛化,さらに腰痛再発のリスクファクターであると報告されています²⁾
つまり、腰痛予防・軽減のためにはお腹回りの筋肉をつけるというよりも腹部の筋肉がタイミングよく活動できることが大事なのです。
ちなみにモーターコントロールエクササイズはこのようなものです。(1:28あたりから)
では、ドローインの話に戻ります。
ドローインは腰痛がある方へのリハビリとして適応されることもありますが、先ほど述べたように腰痛の方は腹部周囲の筋活動のタイミングがずれています。そのため、ドローインを行うよりモーターコントロール(運動制御)の運動が望ましいでしょう。
ドローイン頑張るぐらいならスポーツしよう
そして「お腹周りを引き締めたい!」という目的でのドローインもさほど効果はないと考えられます。というのも、スポーツ時の筋力発揮には遠く及ばず、筋肥大や脂肪燃焼ができるだけの負荷にはならないと思われます。
ブレーシング
ブレーシングはグッと息を止めて体幹の剛性を高める呼吸法法です。
イメージとしては、お腹にパンチされる前にグッと力を入れる感じです。
ブレーシングは腹腔内圧を高めるのに効果的と報告されています³⁾。
上の図はブレーシングとドローイングの腹腔内圧(IAP)の違いを表したものです。圧倒的にブレーシングのほうが高く、体幹の剛性が高まっているといえます。
そのため、重い負荷を扱うウエイトトレーニングやウエイトリフティングではブレーシングが最適です。
ここで一旦まとめます。
筋トレ時に胸式呼吸を意識する必要はない。
ドローインでお腹鍛えるよりスポーツしたほうが良い。
重い負荷を扱う際にはブレーシング。
ブレーシングの注意点(心血管疾患をお持ちの方)
ブレーシングでは息をぐっと止めるため血圧が急上昇します。
そのため、心血管系の疾患があり、血圧コントロールが不良の方は行ってはいけません。
では、「トレーニング自体も負荷が高いしやらないほうがいいのかな?」と思われるかもしれませんがそんなことはないです。
医師の許可のもと持久性の運動や低強度の運動から始めると効果的です⁴⁾。
必ず医師と相談し、行う場合は様子を見ながら少しずつ行いましょう。
また、息こらえは避けて行なう低~中強度のレジスタンストレーニングでは、血圧の上昇は緩和されるため呼吸を止めないように行うと良いです。
まとめ
様々な呼吸法法について書きました。結論としては、
ドローインは筋トレ中わざわざ行う必要はない。また、筋トレとしても負荷量は弱い
ブレーシングは体幹の剛性を高めるのに良いためウエイトトレーニングで用いると良い。(ただし、心血管疾患をお持ちの方は注意。)
筋トレ中の呼吸方法としては上記の結論ですが、リラックスするために腹式呼吸するとかは良いと思います!
引用文献
1,Hodges PW, and Richardson CA. Inefficient muscular stabilization of the lumbar spine associated with low back pain. A motor control evaluation of transversus abdominis. Spine (Phila Pa 1976). 1996;21(22):2640-50.
2,佐藤 正裕:腰部・体幹障害予防とアスレティックトレーニング.日本アスレティックトレーニング学会誌 第5巻 第1号 19-25(2019).
3,K. Tayashiki, et al:Intra-abdominal Pressure and Trunk Muscular Activities during Abdominal Bracing and Hollowing ,Int J Sports Med 2016; 37(02): 134-143
4,Maren S. Fragala et al:高齢者のためのレジスタンストレーニング: 全米ストレングス&コンディショニング協会のポジションステイトメント.National Strength and Conditioning Association Japan 2020.
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