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サッカー 欧州スーパーリーグ失敗に学ぶ対話の必要性

先月の4月に、欧州サッカー界を激震させるニュースがあり、ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それは、欧州のメガクラブが参加する「欧州スーパーリーグ」構想が発表され、その2日後に頓挫したという件です。

こちら、ヨーロッパ5大リーグとも言われるうち
・イングランドのプレミアリーグの6チーム
・イタリアのセリエAから3チーム
・スペインリーグから3チーム
が参加を表明しています。

ドイツのブンデスリーガとフランスのリーグアンは参加を見送っているようですが、最終的には15チームを固定にして、前シーズンの成績に応じて5チームが加わる、
20チームで繰り広げげてリーグの開始は、2021年8月を目指していました。

一見すると、最高峰のエンターテイメントともいえますが、そもそもヨーロッパNO1を決めるリーグ戦はすでにチャンピオンズリーグがすでにあります。

ということで、反発も多いのが現状です。
実際に、発表から2日後の水曜日に、プレミアリーグの6チームはファンの反発が強いことから脱退を表明して、わずか2日間で頓挫してしまいました。

今日は、この欧州スーパーリーグは何か、なぜこの時期で発足したのか、そしてどうして頓挫したのか、そこからの教訓などをスポ深目線で考察していきたいと思います。

それでは本編スタートです。

このnoteはVoicyの過去の放送の一部を文字に起こしたものです。

欧州スーパーリーグ構想とは?

まず、欧州スーパーリーグに触れる前に、チャンピオンズリーグについて触れたいと思います。
チャンピオンズリーグは欧州サッカー連盟、通称UEFAが主催する、最も権威のある大会と言われます。
1955年にスタート。色々な改編を経て、現在は毎年32チームが参加します。

各国によって出場チーム数は変動しますが、リーグ戦のレベルを決めるUEFAランキングと言う指標で決めています。
前述のイングランドのプレミアリーグとか、スペインリーグはトップであるので、毎年4チームずつ輩出できます。

そして、この32チームを、8つの予選グループに分けて、ホームアンドアウェイで戦います。グループステージは全6試合で、上位2チームが勝ち残り、16チームで決勝トーナメントをホームアンドアウェイで行います。

決勝戦は一発勝負、シーズンごとに開催するスタジアムは変わります。

この大会に出場することで、出場料の収益をクラブチームは得られる、決勝リーグに進出、勝ち残るに連れて賞金は増えていくというレギュレーションです。
この大会に出場して活躍することもサッカー選手の夢でもあります。メッシやクリスティアーノロナウドは毎年のように活躍やこのリーグ戦でも大活躍をしています。

しかし、リーグ戦に出場できないチームは、収益計画を見直す必要がある、スター選手も放出してしまうといったリスクもあるといった感じです。

例えば、イングランドのプレミアリーグはライバルチームも非常に多い拮抗したリーグなので、名門と呼ばれるアーセナルでさえも、ここ2、3年はチャンピオンズリーグの出場権を逃しています。

あとは、イタリアの名門ACミランなども今季は好調ですが、数年前までは停滞を繰り返して何シーズンも出場できないと言う期間もあります。
そう言うこともあり、黄金期の頃と比べて、収益もままならない、チャンピオンズリーグに出場できないならということで、スター選手も流出、クラブの財政を圧迫するなどの危機もありました。

こんな感じで、名門クラブでも参加できないが、多くのクラブチームにもチャンスがあるともいえます。

さらに、先週、もう少し間口を開くということで、新レギュレーションが発表され、2024年から4チーム増やして36チームに増えるようです。

これに対して、欧州のメガクラブオーナーが手を取り連合で立ち上げたのが、欧州スーパーリーグです。

どんな形で立ち上がったのかについて、GOALなどのサッカーメディアや、色々なYoutubeチャンネルなどを色々調べてみました。

まず、このスーパーリーグは、スペインリーグのメガクラブ、レアル・マドリードが率先して、欧州のビッグクラブで団体を作って始動。

今週頭に参加を表明したチームは
・プレミアリーグからは、マンチェスターユナイテッド、マンチェスターシティ、アーセナル、チェルシー、リバプール、トットナムの6チーム
・スペインリーグからは、レアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコマドリードの3チーム
・イタリアのセリエAからは、ユベントス、ACミラン、インテルの3チーム

の合計12チームでした。

このほかにも、
・ドイツブンデスリーガのバイエルンミュンヘンとドルトムント
・フランスリーグのパリサンジェルマン
などにも声をかけていたようですが、参加を見送られました、

いずれも欧州5大リーグで、常に優勝争いを繰り広げ、欧州ナンバ一1チームを決めるチャンピオンズリーグ出場の常連です。

この15チームに、昨年度のチーム成績を鑑みて5チームが加わるイメージです。で、この15チームは毎年のようにこの大会に参加が確約されている、降格がない、すなわち必ず収益に繋がります。

この参加クラブの収益は、アメリカのJPモルガンを始めとした企業が資金を提供しており、一兆3000億円、Jリーグ55チームの年間の営業収益が1100億円超なので、その10倍。
そして、創設クラブは全員で、約4550億円の収益を手にすることができます。

つまり、いかにビッグクラブとはいえ、成績の浮き沈みもありますし、スター選手の流出に繋がると言うリスクがなくなり、毎年のように必ず収益が確約されていると言うことです。

そして発足時に会長のペレスさんはこう発表しました。

全てのレベルで、フットボールを救済し、世界的に正統な場所に導く

これ、言葉が悪いですが、具体が全くない話ですし、モヤっとして終わります。
ただ、これは詭弁であり、本音は違います。
「収益を確保したい」といってしまうと批判に合うから、もやっとしてしまったんだと思います。

また、最高峰のリーグ戦と謳ってはいますが、参加できない他のクラブはどうするのとか、ジャイアントキリングも起きづらい、それは果たして面白いのかという疑問もあります。

案の定、発表後、有識者や選手などから反対意見が巻き起こりました。
まず、イングランドのサッカーチームを統括する「FA」が動きます。「クローズドの大会はオープンな競争を迫害する。」と声明を出し、承認をしない、必要であれば法的処置を取るという態度を表します。徹底抗戦ですね。

・さらには、イングランドのメディアも動きます。
新聞紙面上では「これは戦争だ」とか「ビッグ6の恥だ」と見出しが踊ります。

・さらには、イギリス首相や王族まで動き、各連盟と連携をして全力阻止、フットボールコミュニティを守る、全てのチームに競争と平等性を守るべき。

そして、欧州スーパーリーグに該当するチームの監督や選手たちも発言をしました。

リバプールのクロップ監督は
「スーパーリーグが立ち上がらないことを望む」

マンチェスターシティのグアルディオラ監督は
「成功が確約され、敗北が存在しないのはスポーツではない」

リバプールのキャプテンは、ジョーダン・ヘンダーソン選手は
「我々は好んでいない、開催を望んでいない。これが我々の統一スタンスだ。このクラブ、そしてサポーターへの決意は断固であり絶対。You’ll Never Walk Alone」

こんな感じで、リーグを成立するには不可欠とも言える”選手、監督、ファンの賛同”を全く得られないということで、プレミアリーグの6チームはこの発表の2日後に、脱退を表明しています。
そこからは、セリエAのインテル、ミラン さらにはスペインリーグのアトレティコも脱退表明をして、事実上消滅に近い状態になってしまいました。

さて、ここまでが、一連の流れでした。

このチャプターでは、ファクトに基づいての話でしたので、次のチャプターでは、なぜこのタイミングだったのか など深堀りや考察をしていきたいと思います。

なぜ欧州スーパーリーグは頓挫してしまったのか?

さて、このチャプターでは、なぜこのタイミングで発生したのかについて考察します。

1)まず、元から火種や対立の構図や予兆はあったようです。
”チャンピオンズリーグを運営するヨーロッパ全域のサッカーの発展を目指すUEFA” 対  "自チームの発展、最終的にはビジネスとして収益を上げることを追い求めるオーナーたちの連合軍"
という構図です。

そんな構図から、特にスペインのレアル・マドリード を筆頭に、UEFAのやり方に前から不満を持っていました。

何に不満があったかというと、
「やはりメガクラブでチームを強化している自分たちがいる、それが集客力になっており、チャンピオンズリーグの収益に寄与しているはずだ」

それなのに、
・この収益は、運営者であるUEFAに一回集まる
・その後に不透明な形で再分配される

・さらにはヨーロッパ全域のサッカーが発展するので、ランキングの低い国のサッカー連盟にも、収益が割り振られる。
・自分たちは、リスクを背負って、スター選手を集めているにも
関わらず不平等である。
また、ここ最近では放映権料収入の高騰などもしており、ビジネスチャンスと言わんばかりに、海外企業、オイルマネーなど注入されてきたという背景がありました。

特にイングランドプレミアリーグでは6チーム中4チームがこれに該当します。
・リバプールとマンチェスターユナイテッドは、アメリカの企業が2000年代にオーナーになりました。
・チェルシーはロシアの石油王アブラモビッチがオーナー
・マンチェスターシティはアラブのアブダビ王族が運営する、シティフットボールがオーナーです。

こんな感じで、ファン、サポーターがあってのサッカークラブ というよりも ビジネスとしてどう収益を上げていくかに偏ります。


2)そして、一昔前であれば、EUが統治機構として機能をしていたが、今は野心の多い大企業で大成功をした一流の経営者がオーナーです。
そうなってくると、参入障壁も下がる、自分たちで機構を作っても良いんじゃね、じゃあ構想練ってみようという形で、賛同者が集まりました。

3)更にはコロナによって収益が下がってしまいます。

4)そんな背景があって、UEFAが先週がチャンピオンズリーグの新レギュレーションを発表しましたが、チーム数が増えるということ試合数も増えてしまい、チームに負担がかかってしまうと、オーナー陣は危機感を覚えました。

これがトリガーになって、オーナー群が結託をして、ヨーロッパスーパーリーグ構想が発表されました。

ただ、前のチャプターでもお伝えした通り、
ファン、著名人、各リーグの連盟、選手などからの反発も激しい、FIFAやUEFAも圧力をかけて、最終的にはプレミアリーグの6チームも離脱、頓挫してしまいました。

こんな感じで、賛同は得られないまま終わりました。
では、UEFA、欧州サッカー連盟に黙って従うべきなのか、戦い方はなかったのか、これには有識者の方々はもっとやりようはあるのではという見解を持っています。

大きく3つあります。
・まず前提として一大のスポーツイベントであるとはいえ、ここ最近はチャンピオンズリーグの視聴率が低下してきていました。
2015年〜2018年までは生中継の視聴率は20億人
しかし2018/2019シーズンでは、13億人と、35%も低下します。

メガクラブとしては、放映権をUEFAに委ねたくない、自分たちならもっと収益が上げられるのでは、この辺りの問題提起をして、じゃあ自分たちはどんなビジョンを描いているか、なので最終的にはサッカーに関わるステークホルダーにも還元させるというストーリーがあったはず。

・2つ目はスーパーリーグ陣営は1枚岩ではなかった、もっと纏まるべきだったという意見もあります。

今回の記者会見ですが、レアル・マドリードのペレス会長が中のいいスペインのメディアを招いての発表でした。
一人ではなく、複数名で参加する、さらには、前段に上げたように問題提起をしてそこからどういった形で改善をして、還元するかこのストーリーが必要でした。

最後に「昇格、降格がないというレギュレーション」は欧州サッカーの本質を、見誤っていたということかなと。
最高のチームが集い、最高のチームがしのぎを削れば最大のエンターテイメントという提案は、ファンには全く刺さらず、それは詭弁であると捉えられます。

つまり、短期的には成功がするかもしれませんが、変化も起きにないということはマンネリも発生する、規模が小さいチームが策を練ってメガクラブを倒すというジャイアントキリングも起きない。

例えば、2004年シーズンにあったポルトガルのポルトが優勝をするとか、2004年のヨーローパ選手権でギリシャが優勝するような番狂わせも起きないということです。

また、浮き沈みがある、過去、現在、未来というストーリーがあるからこそ、ファンも感情移入できるのですが、これも無視してしまったということです。

なので、総括をすると
・まず誰に価値を提供するのか
・どうありたいのかの前提が抜けている、
・であるので、問の立て方やUEFAやサッカー界に対してのアプローチの仕方が誤ってしまい今回の頓挫につながったのかと。

さて、今回は反面教師になりますが、ビジネスでの教訓はあるのではないでしょうか?
次のチャプターで考えていきたいと思います。

UEEAと欧州スーパーリーグから対話の重要性について考える

さて、今回は、アスリートや指導者の行動や考え方というよりも、サッカー界全体の事件をベースにしてるので、ちょっと明日から使えるTipsにはまとまらないと思います。

ただ、まとめてみていろんな気づきがあるなと感じました。大きく2つあります。

・一つ目
統治者の影響が下がっており参入障壁が下がっているということ。

20世紀とか2000年代前半であれば、例えばUEFA ヨーロッパサッカー連盟が全体を統治して、開催するノウハウがあったからメガクラブも追従したんだと思います。

しかし、いろんなテクノロジーも進化する、放映権とかの収益もある、それを武器に使える予算も潤沢にある、なので、今までは開催できなかったけど、団結すれば小さな政府みたいな感じで機動力高く、運営できるということです。


中央が仕切ると言うことの反発、巨大なプラットフォーマーからの離反などはスポーツ以外でも言えますね。
ちょっとだけ脱線しますが、例えばAmazonです。
Amazonは、書籍のECモールからスタートした企業ですが、徐々に規模を拡大して、一大経済圏を築いていますね。
EC以外でも、AWSというクラウドサーバを企業に提供したり、Alexaとか最近では、実店舗のスーパーなども展開しており、プラットフォーマーとして君臨。

ただ、ここ最近はAmazonに出店すると、意図しない形でタイムセールとか掲載をされる、ブランドとしてのメッセージが伝わらないということで、
ナイキ、ルイビトン、ディズニーなどが出店を見送り、Shopifyというサービスを使って、自前でECを構築する動きを取っています。

このように、中央に依存ではなく、自前で始めやすくなってきており、その象徴がスーパーリーグ構想であると関連付けると面白いなと思いました。


2)二つ目は、歴史は繰り返すんだろうなということ
例えば、日本のプロスポーツ界で言うと象徴的な出来事がありますね。
それは、プロ野球とバスケットボールリーグBリーグです。


・まずプロ野球界を例に出すと2004年にあった、リーグ再編問題です。
近鉄 と オリックス の合併に端を発して、当時人気では劣っていたパリーグが、セリーグに救済を求める、巨人オーナーが1リーグ構想をぶち上げたということです。
ファンや選手との対話もないままだったので、選手会はボイコットの意思を表明するなど、いろんな意味で球界に激震が走りました。


・あとは、プロバスケットボールがBリーグに統合される前に、NBLとBjリーグに分裂されていて、対立をしていたと言う点ですね。
最終的には川渕チェアマン体制になって、タスクフォースを立ち上げて、なんとか統合をしてきたという歴史もありますね、

ちょっとまとめてみて思ったのですが、白黒つけるとか、二項対立とか、コントロールしてやろうという、こっちの方が優れているので従えと言うのは必ず衝突が起きます。


ただ、この先行きが見えない、正解の見出しづらいこの時代だから、対話ってものすごい重要なんだろうなと。

ちょっとここまでまとめてみて思ったことがあるし、対話の具体例から、整理するとTips出せそうなので、次のチャプターで整理したいと思います。

対話を通じて正解を導き出す必要性について

さて、このチャプターでは、対話の難しさ、それをどのように解消すべきかについて考えていきたいと思います。

これを考えるにあたって「他者と働く 分かり合えなさから始まる組織論」という書籍がヒントになるなと思いました。

この本ですが、タイトルにある通り、分かり合えないとこからどのように歩み寄るかというアプローチに触れています。

この書籍では、ナラティブという表現を使っており、このナラティブとはざっくり言うと、物事をどのように解釈するかの枠組みのことを指します。

この枠組みは、これまでの育ってきた経験、培ってきた専門性、倫理観によって、人によって異なります。
であるので、自分と相手の間には溝が必ずあります。
それを理解した上で意見を押し付けるのではなく、お互いの違いを認めた上で、橋をかける、この行為が重要と言うことです。

今回の事例は、組織内と言うわけではないですが、お互いの考え方が噛み合わなかったことに端を発します。

ちょっと復習しますと、UEFAとスーパーリーグ陣営側では、手法は違えど、本質に立ち返ると、
「サッカーを通じて価値をファンに届けたい」という目標は同じ
なんだろうなと思います。

ただ、ビジネスにウエイトをおくのか、スポーツにウエイトを置くのか、ヨーロッパのサッカー全体に還元や再配分をするのか、文化を大切にするのか、自分が経営するチームにウエイトを置くのか、これがそれぞれ違っていました。

どうやったらうまく行ったかは、結果論ですが、
例えば、
欧州サッカー全体を通して視聴率が下がっている、如何にファンを増やすか、見てもらうかと言う共通の課題から、
ビジネスサイドの目線でどのように魅力的にするのか、その共通の課題を見出しながら、意見を出しあえば、今回みたいなことは発生しなかったかもしれません。

こういった利害関係者の衝突は、我々ビジネスパーソンでも起きますし反面教師にしたいと思います。

なので、今回のTipsは
「違いは認めるべきである。べき論とか正解は一つではない、対話を通じて導き出すことの方が大事」ということにしたいと思います。

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