見出し画像

DH制導入でセリーグは強くなるのか?単純化の危険性

本日のテーマですが、2月からプロ野球のキャンプがスタートすることから、プロ野球界について取り上げたいと思います。

さて、昨年の日本シリーズ
・ソフトバンクが圧倒的な強さで、4連勝。
・セリーグの覇者である巨人が全く歯が立たなかった
ということは記憶に新しいリスナーの方も多いのではないでしょうか。

そして、必ず話題に出るのが、
・パリーグは、DH制(すなわちピッチャーの代わりに、打席に立つ、制度ですが)、これを導入しているから強い。
・ピッチャーはピッチングに専念できる、打線の切れ目がない、采配も色々自由だなので、セリーグもDH制度を導入するべきだ
という意見です。

個人的には、この論争、結構違和感ありました。

そんな中で、Youtubeの里崎チャンネルでパリーグが強くなった理由について面白い見解がありました。
私もこの放送を見てなるほどなと思いました。

今日は里崎チャンネルの放送から、パリーグが強くなった要因、DH制を導入するだけでほんとーに解決なのか、そこから物事の解釈の仕方について考えてきたいと思います。

このnoteはVoicyの過去の放送を文字に起こしたものです。

DH 指名打者制導入をめぐる否定派と推進派の意見

まず、このチャプターでは、DH制とはどういった制度かや有識者の見解について触れていきます。

まず、DH制についてです。
・ピッチャーの代わりに指名打者が立つ
・ピッチャーは打席に立たなくて良い
・ピッチングに専念できるということです。
・セリーグの場合、DH制度は導入されていないので、ピッチャーも打席に立ってしまいます。

例えば、中盤から終盤に至る6回とかでピッチャーに打席が回る、この時に接戦だったら、ピンチヒッターも出したくなります。
また、打席にも専念しないといけない、バントも覚えないといけない

ざっくりこんな感じかと思います。

実際に現役時代、セリーグ、メジャーリーグ、パリーグで活躍し、DH制度のあるリーグとないリーグを経験された、藪恵壹さんもこのように触れています。
ベースボールオンラインの記事の一部を抜粋します。

DH制になった場合、ピッチャーは投げることに専念できるのはメリットでしょう。
また、自分が打席に入ることを考えなくていいので、インコースを攻めやすくなる。やり返されることはないわけですから。
セ・リーグでは八番に打力の高くないキャッチャーがいれば、八、九番で2個のアウトが計算できます。
1試合で各3打席回れば、2イニング分のアウトです。
それがなくなるのはデメリット(と言っていいのか……)。ココをパ・リーグのピッチャーは全力で抑えるので、その積み重ねで強さが生まれるという考えもあると思います。

ただ、セはセの、パはパの良さがあって、野球が異なります。それが面白いのであって、一律にDH制にすることに関しては、私は反対です。

このように、メリットを認めつつも、薮さんは、セリーグにDH制度を導入することには懐疑的なようです。

では、導入賛成派の意見です
こちらは、ジャイアンツの現監督、原監督に代表されます。
おそらく、これは、2010年代に入って、特にパリーグが日本シリーズを制するケースが多い、、交流戦でもパリーグ優位、そしてここ2年は巨人対ソフトバンクのシリーズでしたが、2年連続で巨人が1勝もできなかった危機感があると推測されます。

こちらは、Wedge(ウェッジ)の記事の抜粋です。

過去にも何度か持ち上がっては立ち消えになったこの問題、今回の言い出しっぺは巨人・原辰徳監督である。
ソフトバンクに4連敗した日本シリーズの翌日 2019年10月24日、早くもこういう提言を行った。

「(パ・リーグと違って)セ・リーグにはDH制がないからね。DH制は使うべきだろうね。(DH制がないからパ・リーグに)相当、差をつけられている感じがある。
(DH導入のメリットは)少なからずあると思う。投手は(打撃を気にしないで)投手に専念できる。それは、パ・リーグ全体(の6チーム)に言えることだから」
つまり、投手が投球だけに集中すれば、パ・リーグのパワーピッチャーのように、より速く、球威があり、精度の高い投球ができるようになる。オーダーにDHが入ったら1番から9番まで気が抜けなくなるため、必然的にメンタルが鍛えられ、テクニックもコントロールも向上する。

一方、そうやってパワーを身につけた投手と対戦する打者もまた、よりレベルアップできる。そういう相乗効果がより一層、試合を面白くする、というわけだ。

「(逆にセ・パ両リーグで)ルールの違いにどういうメリットがあるのか。レギュラーは増えたほうが、ファンだって少年たちだっていい。レギュラーが9人から10人になる。(セ・リーグはDH制度を導入せず)何を持って立ち止まっているのか、あるいは(旧態依然としたルールを)守っているのか」

以上です。
この主張からパリーグが優位だと感じている点は
・全力勝負
・レギュラーが増える、チャンスにつながる、それが選手の強化につながる
・ゆくゆくは野球を志す子供も増える

ということです。
ただ、この主張はセリーグの他の球団の賛同は得られてはいません。

このように、交流戦や日本シリーズ前後では、パリーグの方が良い成績を残しているので、DH制の議論がここ数年は巻き起こっています。

ただ、本当に、セリーグがDH制を導入すれば、パリーグに追いつけるのでしょうか?
冒頭の薮さんの話にあったように、セリーグにはセリーグの良さがある、他のところに要因はあるのではないでしょうか?

そして、現に調べてみると1990年代、2000年代では、セリーグ優位の年代もあったので、今更感があるのかなと私も思っていました。

この疑問に対して、元ロッテのキャッチャー里崎さんがYoutubeチャンネルで、面白い切り口で、考察をしていました。
次のチャプターでは里崎さんのYoutubeチャンネルで、パリーグが強くなった要因をどのように考えているのかについて掘り下げていきます。

パ・リーグが強くなった本当の要因とは?

まず、里崎さんの経歴についてです。
現役時代は、1999年〜2014年の約15年間、ロッテのキャッチャーで活躍、日本代表でも活躍、ロッテの日本一やワールドベースボールクラシックの優勝メンバーでもあります。

・2015年からは主に解説者として活躍をします。
・2019年からYoutubeチャンネルを開設。

野球をわかりやすく解説したり、観戦の楽しみ方、プロ野球選手の裏側など取り上げれており、私もフォローしているYoutubeチャンネルの一つです。

さて、このチャプターで紹介したいのは、昨年の11月末に放送された、
「セ・リーグが勝つにはこれしかない!過去の日本シリーズから読み解くパ・リーグが強くなってきた背景とは...」
という回でした。

この回では、過去の対戦成績、パリーグが優位になってきた前後、その時にどういった背景があったのかについて注目、そこから強くなった要因はいろんな施策の結果であると里崎さんは解釈していました。

この視点が面白いので紹介します。

まず、過去の50年ぐらいの、日本シリーズをセパのどちらが制していたのかの変遷に注目していました。
・1965年〜1973年はセリーグの巨人がV9で圧倒
・1974年〜1981年はセリーグ、パリーグの両方が満遍なく制覇するような拮抗した時代
・1982年〜1992年はパリーグの西武が黄金時代を迎えて、パリーグが圧倒
・1993年〜2002年は逆にセリーグのヤクルトのID野球や巨人の補強戦略などが要因でセリーグが圧倒
・2003年ぐらいから潮流が変わっていき、徐々にパリーグ優勢に傾きます
・そして2013年〜2020年のシリーズはパリーグが全て制覇、特にソフトバンクは4連覇
と強さをはっきしています。

さて、このように、少なくとも、セ・パ両方が拮抗している時代もありましたし、2000年前半まではセリーグが優勢だった過去もあります。

里崎さんはここから2003年以降、何がパリーグに起きたか、ここに注目していました。
具体的に言いますとこの前後のパリーグは、球団の身売りやチームの再編、移転などが行われました。

移転で言うと6球団のうち、3つあります。
・ソフトバンクホークスは、1989年の南海ホークスから、ダイエーホークスに代わり、九州に移転します。
そして、2005年からソフトバンクがオーナーになり、福岡ソフトバンクにチーム名も変更。そして、チームも強化していきます。
過去の放送回でも取り上げましたが、通常2軍までのところを三軍制を設けて、一芸に秀でた選手を獲得できるようになったなどですね。

・続いて、北海道日本ハムファイターズ。
こちらは、2004年に東京から北海道に移転しています。そして、毎年のドラフト戦略でも、その年の人気や実力ともにナンバー1で注目される選手を獲得するなど独自戦略でたびたび注目されますね。

・そして、3球団目が、楽天。
関西圏のオリックスと近鉄の合併問題に端を発し、2005年に東北の仙台で楽天イーグルスが創設されます。
楽天といえば、球団設立当初は、どちらかといえば、近鉄やオリックスでのレギュラーとして活躍できなかった選手が中心でしたが、野村監督や星野監督の招聘などで、1から着実に力をつけて行っていますよね。
ここ最近は石井GMが監督に就任して、積極的にチームを強化しているので注目ですね。

そして、昨日のニュースで、メジャーリーグヤンキースからフリーエージェントしていた、田中将大選手が、8年ぶりに楽天に復帰したということで、今シーズンの楽しみが一つ増えましたね。

あと、Youtubeチャンネルでは取り上げられなかったのですが、
千葉ロッテも、移転前は川崎を本拠地にしていたりと本拠地を転々としていました。1991年に拠点を千葉に移して、ようやく定着してきたイメージですね。

結果としてですが、移転、再編をへて日本全国にパリーグのチームは分散しました。
・北海道地方は日本ハム
・東北地方は楽天
・関東地方はロッテと西武
・関西圏はオリックス
・九州、西日本はソフトバンク
といった感じです。

このように
・再編によって移転した球団は、ファンの開拓から地域密着マーケティングを行い新規ファンの獲得するための経営をして収益を伸ばす
・そして、その地域全域で、有能な人材を幅広く取り込むスカウティングそして、補強につなげる

この変わらざるを得ない状況をチャンスと捉えて、視野を広げることができた、だからそれがパリーグ全体の強化につながったと里崎さんは分析していました。


それと比較する形でセリーグについて。
もちろん横浜DeNAベイスターズはオーナーがTBSからDeNAに代わってファンの開拓や独自戦略で経営改善してきていますし、カープもファンの開拓にも成功して、育成システムやきめ細い野球で2016年〜2018年はリーグ三連覇などいろんな変化はあります。

ただ、パリーグと比べると、ダイナミックな変化は起きていないので、一つの事象に囚われて、「DH制がない」とないものねだりをするよりも、実施できる施策はあるのかもしれませんね。

さて、専門家ではないので、明確な策の提案まではできないのですが、
この里崎さんの、一つの事象に囚われない、時系列から全体像をみて、変化が起きた要因は何なんだろうという姿勢は面白いですし、仕事や日常生活の参考になるかなと思いました。

次のチャプターでは、Tipsについて考えていきたいと思います。

Tips 1つの事象に囚われず時系列で見ることの大切さ

さて、今回のTipsについてです。
ちょっと多いのですが、大きく3つあります。
・物事を単純化し過ぎていませんか?
・一つの事象に囚われず全体感で物事を捉えよう
・そして安易に結論を導き出すべきではない

と言うことかなと。

すこしTipsについて解説すると、
もちろん、複雑な問題をシンプルに捉えて、そこから何をすべきかを発信するのは大事だと思います。

しかし、これは色んな意見や、
・時系列を見る、過去、現在、未来の観察
・自分たちの持っている資産は何か
・周りの状況はどうなっているのかとか
・どんな条件下で成果や効果があるのかとか

その辺りの色んな条件を踏まえて、自分なりに咀嚼することが条件です。

この工程をすっぽかしてしまうと、今回のテーマにあったように
・無い物ねだりでDH制はいいなーとか
・うちもDH制度を入れたい
そしてその理由も「チャンスが生まれるとか、思い切り勝負できる」と言うこじつけになってしまいます。

ひょっとすると、DH制なしでの戦い方で有利な点も見いだせるかもです。
ピッチャーは打席に立つことで、バッター心理をより解像度の高い状態で想像もできるといえます。
ちょっと脱線しますが、元ジャイアンツの桑田投手や元カープで現在はメジャーリーガーの前田投手も投球も一流でしたが、バッティング能力も非常に高い選手でした。

これは、バッティングを通じての学びが投球に生きていると言えるのではないかと思いました。

そういったこともあるので
・文脈を理解しないで、安易に結論を出したりするのではなく、
・与えられた条件で勝負をして
・その環境下で起きている変化をきちんと時系列で見極める
・そこからの策を打ってみる
それが、組織やチームを変えることにつながると思います。

パ・リーグが、移転や再編をチャンスとして、強くなったようにです。

さて、今回は、DH制度を例に出しましたが、これはビジネス、チーム運営にも言えるのではないでしょうか。
私たちは余裕がないと、ついつい視野が狭くなり、犯人探しをして、早急に結論を出したがります。

ただ、今は
・VUCAと呼ばれるように不透明で変動制も大きく正解のない時代
・コロナ禍の中で変わらないといけない時代にあります。
また、1月13日の放送にあったように土の時代から風の時代に移り、変わっていくことが求められますので、この里崎さんのような視点が必要なんだろうなと今回まとめてみて思いました。

このnoteはVoicyの過去の放送を文字に起こしたものです。
是非音声でもお聴きいただき、フォローボタン、Twitterへのシェアもよろしくおねがいします。
フォローをしていただけると、このチャンネルの最新の放送を受け取れたり、あなたに合ったチャンネルがおすすめされます。

また、「Voicyとはなにか?」「フォローの仕方」などはこちらにまとめておりますので、合わせてご確認ください。


この記事が参加している募集

#スポーツ観戦記

13,637件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?